黒鷲の旅団
12日目(8)恋と尻尾と反面教師

「オークとかって食えねーんすかね?」

 フレヤの問い。
 指差した先にオークの一団が見える。
 食べら……れたとして。
 あまり食べたくないかなあ。

 あいつらも亜人種みたいなものだ。
 そこで亜人食いを推進した場合。
 うちの子達まで危なくなる。
 例えばティルアやノイエ。
 羽があるからって手羽先とかって。

 差別的な市民が飢えている現状。
 余計な着想を与えたくない。

 しかし、亜人系モンスター。
 奴らも肉とか食べる。
 退治しておいた方が将来の為か。
 見つけた奴は残さず始末して行こう。

 魚鱗陣形で川辺に到着。
 案の定、陣形について聞かれた。

「お魚陣形だねー」
「お魚さんっ! お魚っ!」

 フェドラがカリマ相手にお姉さん顔。
 他方、ユッタとレーネがバテていて。
 どうした。大丈夫か。

「うう、凄い揺れた……げぷっ」

「ユッタさん、意外と重。
 あーと、大きくて」

 ユッタ、レーネ酔いした様子。
 コウモリ状の翼は滑空に向かない。
 激しく羽ばたいたのだろう。

 ユッタとレーネは木陰で休ませる。
 それと、カーチャ。
 少し言っておきたいが……
 ノイエと魚取りに夢中か。
 お小言は後でも良いや。
 探知に引っ掛かる敵も少ない。

「戻りました、お姉様!」
「お姉様! 報告です!」

 斥候に出ていた騎兵お姉さん隊が合流。
 ……お姉様? マグダレーナが咳払い。

「だから、人前でお姉様は止めなさいと!
 お兄様も何とか言ってください!」

「はは……旦那、お察しくだせえ。
 あっしのハーレム計画は夢と消えたんでさ」

 イェルマイン、遠い目。
 マグちゃんの方が同性にモテたのか。

 それで……報告。

 食べられそうな魔物として。
 グリフィンの群れが居た。
 北東の丘陵部に十数頭が滞在していると。
 しかし統率役らしき魔人も見えたという。
 騎獣の魔人ベルナディエンヌか。
 あるいは同系統の別の魔人か。

 イェルマインがレベル68。
 マグダレーナが71だ。
 レベル3ケタの魔人を相手出来ない。

 幸い向こうから仕掛けてくる様子は無い。
 どうするか思案していると、通信が来た。

『そこに居るの、あんた達ねー?』

 通信元はデルフィアンヌ。
 魔人の視力は丘の向こうも見えるんだった。

 状況。敵地に物資や兵が取り残されて。
 そいつの輸送準備中。
 魔獣使い、騎獣のベルナディエンヌ。
 魔獣空挺部隊を指揮。
 周辺の飛行系魔獣を集めている。
 これがグリフィンやヒポグリフ。

 輸送手段を失うと面倒。
 撃たないで欲しいと。
 こちらとしても強行突破は困るな。
 かえって被害が大きくなる。
 素直に通してしまおう。

 何か礼をと言われるが、思いつかない。
 こちらとしても借りがある。
 落ち着いたらまた話でもしよう。

 さて、食べられるグリフィン類が居ない。
 依頼状況、ギルドへの報告もある。
 一度、街へ戻ろう。

 敵影も少なく、手持無沙汰。
 子供達はお喋りを続けている様だ。
 聴覚スキルが諸々拾って来る。

「お、おっ、俺、ずっとフェドラの事が」

「ごめんね〜。
 私、パパさんの事が好きなの〜」

 食い気味に瞬殺?
 デュオニスがフェドラに告白した。
 しかし速攻で振られた?

 いつの間にか青春してるのは結構だが。
 パパさんって誰だ。俺か。
 その好きは、恋愛の好きか微妙でないか。

「ああー! マルカがぶったあああ!」
「おっ、お前が触るからだろ!」

 今度は何だ……セクハラ?

 聞けばアレン。
 触ったのはマルカの竜尻尾?
 興味を抑えられなくて。
 こそっと触った途端、ビックリした。
 マルカ、振り向きパンチ。
 これが顔面に直撃してしまった様だ。

 アレンに治癒。と、小言。
 女の子の身体を触ったらダメだろう。
 マルカも手加減だ。
 強いからって我慢しろとは言わないが。
 グーパンよりビンタにしとこうな。

「うう……ご、ごめん……」
「え、あ、あたしもゴメン……」

 両成敗はボチボチ上手く行った感。
 イェルマインも、よく言い聞かせて……

「お触りはロマンっすからなあ。
 なははは」

 なはは、じゃねーよ。
 イェルマインじゃなくてエロマインだよ。

 みんな、ああいうのは悪い見本だ。
 ああいうのになっちゃいけないぞー。



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