黒鷲の旅団
12日目(13)消えた足取り

「ふうん、お土産?」

 お疲れの公主を労い、帰途。
 しかし真っ直ぐは帰らない。
 少し寄り道をする。
 足をブラックマーケットへ向けた。

 今日は踏んだり蹴ったりだったユッタ。
 何か励ましになる物を買ってやりたい。
 例えば……近代銃。
 ウルティマ・ラティオに並ぶ物は無いか。

 闇商人バルタザールの店を探す。
 と、以前と同じ場所に店を構えていた。

 まずはユッタに1丁選ぶ。
 俺も少し買い足すか。

 自動小銃カテゴリ。
 ラインラントアームズAR57。
 金額が57万なのは型番と引っ掛けている?
 以前のセトメ・モデロ58は予備へ。

 同じく突撃銃。
 シグ SG550。55万。
 自動小銃と突撃銃で二丁撃ちをやる。
 AR57と合わせる形で長物を選んだ。
 前のハーネル StG44を予備に回す。

 新カテゴリ、軽機関銃。
 CISウルティマックス100をチョイス。
 軽反動。比較的、取り回し易い。
 こいつも二丁撃ち出来るかな。
 最後は強化魔法も使うが。

 散弾銃を新調。
 セミオートのフランキ・スパス15。
 こいつが64万。
 元のサーブ・スーパーショーティ。
 これはこれで取り回しが良い。
 予備に残しておく。

 新規、擲弾銃ダネルMGL。84万。
 対物火器USSR RPG-29ヴァンピール。
 お値段は120万。

 短機関銃のアーセナル・シプカ。
 狙撃銃のウルティマ・ラティオ。
 対物小銃のツァスタバM93。
 この辺は、そのままで良しとする

 あと擲弾銃で使える煙幕弾は無いか。
 出来れば色付きの派手な奴が良い。

 店に多少は置いていた。が、数が微妙。
 赤1つ、青3つ、桃色2つ。
 まあ、この際だ。拘らなくて良いが。

 ふと、アンヌ。
 興味深そうに店内を見ている。

 興味はあるが、銃器。
 魔人の力では壊してしまう事も多いとか。
 しかし手加減上手のデルフィアンヌ。
 単純な機構なら多少は持つだろう。

 リボルバーを贈ろう。
 子供らが世話になっている。
 俺と同じ型はどうかな。
 スーパー・ブラックホーク。
 お値段。12万。
 初期装備で買った時より値が張った。
 まあ、手に入るだけ良いだろう。

 試しに弾薬無しのまま、使ってみて貰う。
 撃鉄を起こし、トリガーを引く。がちん。
 どこか壊れた様子は無いか。
 鑑定。耐久値の減り。
 俺が使うより早い様だが。
 マメに手入れすれば使用に耐えるだろう。

「ふうん。お揃いで。
 お礼のお礼で、プレゼント。
 ふ、ふふ、むふっふふふ!」

 嬉しそうなアンヌ。
 気に入って貰えた様だ。

「あざっす! あざーっす!」

 上機嫌の店主と別れ。
 上機嫌のアンヌと外へ。

 魔女協会に足を向けるや、異音。
 頭上にバサバサとした羽音。
 見上げると……何だ?
 竜人化したマルカ。
 ヘルヴィを抱えて飛んでいた。

 2人で何かを探している。
 日も落ちて暗い中、目視でか?

 通信魔法で呼ぶと気付いた。
 ヘルヴィがズバッと飛び降りて来る。

「あああああの!
 ユッタって子、見てない!?」

「あいつ隠密魔法持ってんだよ。
 本気で隠れられると見つからなくて」

 続いて降りてきたマルカ。
 ユッタはどうしたんだ。
 練習に行くと言って魔女協会を出たと。

 こんな時間、この時世に。
 マルカ達も治安が悪いと聞いていた。
 心配で探しに出て来た。
 しかし足取りが追えないのだと。
 ユッタ、どうして一人で出てしまった。

 あの真面目な娘の事だ。
 1人になって、思い悩んだだろう。
 俺の口から謝らせた。
 治癒の手間を取らせた責任を。
 あるいは不甲斐無さを感じた?
 もう少し気を配るべきだったか。

 俺も捜索に加わろう。
 探知、空間魔法。看破魔法を乗せる。
 青反応が北に幾つか。
 解析、ユッタと……

『ボス! 父上! 御大将!
 大変です! へ、返事をっ!』

 混乱した通信。
 この声は人狼のフレヤ。
 呼び方が安定しないが。
 それより何があった。

 ……ユッタとマリナが攫われた!?



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