黒鷲の旅団
12日目(15)神人の誘拐犯
「動くな! ガキの命がどどどど……
れ、れれろ? うぇあ?」
騎馬の1人、ユッタを抱えた覆面男。
まずはこいつを標的にした。
神経魔法で麻痺。まともに喋れなくなる。
レベル50台にしては耐性が低い。
耐性系スキルが無いのか。
追撃する。デバフ。
陶酔、幻覚、減退、軟化魔法。
抵抗の落ちて来た所に追撃。
昏倒、束縛、洗脳魔法。
覆面男が泡を吹いて引っ繰り返る。
その腕からユッタが滑り落ちる。
防御魔法を速射して保護。
男の馬が暴れる。
束縛。いや、邪魔だ。重力魔法。
馬と男を吹っ飛ばす。
ユッタに駆け寄り解析と診断。
軽症。恐怖、緊張状態。
ユッタ……ユッタ、俺だ。
少し待ってろ。
呼び掛けたのは聞こえたか。
緊張は残るが恐怖が消えた。
次はマリナを。
そっちの子を返して貰おうか。
「魔術師か。
レベルは高くない様だが。
妙に発動が速い」
「構う事ぁ無ぇ。
さっさとぶっ殺して」
「いや、待て。
未知のスキルだ。興味がある」
残る騎兵2人。
その一方が馬を降りる。
連中は奴隷商と護衛だという。
騎兵3人は神人。
戦士2人と術士の様だ。
術士の男が提案。交渉か。
スキル提供をマリナと交換にすると。
仕方ない。提供に応じよう。
スキル伝授。魔法の速射発動式。
男はマリナを放って寄越しながら、
「ありがとう。では死にたまえ」
早速使って来る。爆炎魔法の速射。
マリナごと焼く気だろうが。
こちらも読めている。
右手の投擲、拾った氷片。
転移魔法付与。
爆炎より早く氷片がマリナに当たる。
転移発動。強制避難。
マリナがユッタの脇に転がった。
それを横目に、左手。
速射の反射魔法で爆炎を処理。
右手から連続発動、創傷付与。
すぐに左手の抜き撃ち。
自動拳銃に添えて馬を連続射殺。
足を潰して逃走を防ぐ。
「あっ、くそ!
俺の馬、高かったのに!」
次は俺がやる!」
「ま、ま、待て待て待て!
魔術師で、銃使い……氷。
そうか、お前!
霧霜のハインリヒか!」
こちらも相手を解析。
名前はダイダロスさん、かな。
俺を知っている。
魔法機関の広報を読んだ?
どこぞの魔法系ギルド所属。
犯罪に加担する。
術者の風上にも置けん奴。
いや、俺も言う程、術者でないか。
ダイダロス、防御態勢。
石柱魔法で銃撃を防いで来る。
地裂魔法付与、粉砕。排除。
奴は反撃。
溶けて赤熱したマグマが槍状に飛び出す。
解析。溶鉱魔法ラーヴァランスだと。
マグマ。溶けた鉄。
火属性と地属性辺りの複合属性魔法か。
俺は縮地を反対方向に発動。
緊急後退で回避。
奴は好機と見て追撃して来る。
その溶鉱魔法、逆用させて貰う。
再現魔法マジックコピー、溶鉱。
連続並列、分解・風。
速射並列、加速、焦熱。
火砕魔法パイロバンカー発動。
高温のガスジェットの塊を撃ち放つ。
ダイダロスは反射魔法で防御。
しかし戦闘ログ。HP表示。
熱の物理ダメージを受けている。
「あっち! 即興で新魔法とか!
気をつけろ!
こいつ、イケメンだが頭が良いぞ!」
顔と知能は関係無いだろ。
あと、褒める程の顔じゃない。
「ええい、先生方を援護しろ!」
商人の指示。
筋肉男が飛び掛かって来る。
が、巨大な鉄の太矢が飛来。
男は肩口に食らって吹っ飛んだ。
「な、な、何だぁ!?」
「おじさまーっ!」
馬に乗ったレーネ。
マグダレーナと相乗りしているのか。
続いてホウキに乗った魔女達。
変身したマルカやフェドラ。
イェルマグ隊の騎兵達も集まって来る。
「は、はは……
こりゃ相手が悪過ぎましたかな」
商人の男が不敵に笑う。
スタングレネード?
魔法の閃光弾みたいな物を投げた。
こちらの目を眩ませて逃走を図る。
「に、逃がすかっ!」
「ばばばバカやろ!
マリナ達に当たるだろ!」
銃声が複数と、マルカが制止する声。
俺は姿勢を落とし、障壁魔法。
ユッタとマリナを守る。
視力が戻った所で……取り逃がした。
神人2人が居ない。
奴隷商人と思しき男の姿も無い。
しかも、矢弾が当たって倒れている人影。
盾にされた奴隷兵達か。
撃ってしまったテオドールとデュオニス。
蒼い顔をしている。
……後味は悪いが、目的は達した。
動けない神人1人を捕縛する。
あとは生き残った奴だけでも助けよう。
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