黒鷲の旅団
13日目(1)無血戦争〜宣戦布告〜

「おーい、出来たぞー」

 酒場で朝食を取っていると。
 ハミルトン爺さん来訪。
 後から村出身のデトレフ。
 鍛冶仲間のアンガスも一緒。

 頼んだ調理器具を持って来てくれた。
 結構な数。間に合って良かった。

「まあな。
 優秀な新人が来てくれてなー」

 ハミルトンが後ろを指差す。
 酒場の外に……え、ジュス?

「やあ、ボクは鍛冶師見習いの。
 えーと、ジュスティンさんだよ。
 キミと会うのは3回目かな。
 よっろしくー」

 ああ、うん……うん?

 魔人ジュスティアーヌ。
 人間に化けている様だ。
 アンヌ同様、害は無い……かな。
 とりあえず様子を見る事にする。

 調理器具を荷車に詰め込んで。
 まずは一度魔女協会へ。
 ガイゼル隊はまだ朝食の途中か。
 後で合流しよう。

 魔女協会に着く。
 手揉みのヘリヤ・シャンタルが出迎え。
 察しも付くけど早速かよ。
 まずは申請結果。
 特許売り上げを受け取ろう。

 昨日の特許申請結果。
 溶解魔法、圧殺魔法、窒息魔法。
 それぞれ攻撃魔法Bクラスに認定。

 ヤバめの魔法だ。
 一般向けの伝承と売り上げは見送り。
 魔法機関からも何か言われた?
 取扱注意とのお言葉があったとか。

 次、売り上げ。

 Aクラス魔法伝承、実に67件。
 一番人気は縫合魔法。
 治癒魔法の上位として。
 氷花魔法、熱閃魔法も数を売れている。

 意外と人気が無かったのは燃料魔法。
 聞けば購入者はダンジョン挑戦者が多数。
 確かに閉鎖空間で使う魔法じゃないな。

 Bクラスは42件。水蒸気や霧霜魔法が人気。
 爆薬魔法なんかも幾らか売れているという。
 広まる分、対策についても考えて行きたい。

 Cクラスは14件。
 解熱だの燻製魔法だの。
 神人よりも唯人が細々と買っている様子。
 派手さは無いがロングセラー。
 それはそれで良い。

 以上、123件。
 スキルポイントが123入りまして。
 現在ポイントが143ポイント。
 ここから30ずつ振って申請可能にする。
 今回の特許申請は、火砕、形成外科魔法。

 さて、商売の話はこの辺で。
 子供達が、魔女達が練習場に集まって来る。

「ねえ、何したらいい?
 私は何したらいい?」

「力仕事でも何でもやるぜー?」

 子供達、やる気満々、意気揚々。
 レーネ、フェドラに始まって。
 マイナさん尋問に至るまで。
 何かと遺恨も少なからずの神聖教会。
 何かしら仕返しをしたい様だ。

「霧霜卿、号令を! 早く早く!」

 凄く楽しそう。
 若き筆頭大魔女ジズデリア。
 目をキラキラさせている。

 その後ろでは一糸乱れず。
 自由奔放な魔女達がキチンと整列。
 誰しもソワソワ。
 口元がムフムフ笑っている。
 みんな揃ってイベント好きかね。

 では、僭越ながら。
 集合してくれた諸君に、まずは感謝を。

 これより神聖教会にケンカを売る……
 みたいな事にはなるのだが。
 誓って神様にケンカを売るワケじゃない。
 バチを当てられる謂れは無い。
 誇りを持って、堂々とやってくれ。

 市民を貧窮から助ける。
 名声を、信頼を勝ち取ろう。
 魔女や亜人、子供達の地位を上げる。
 石が飛んで来る時代を終わりにする。

 それでは総員、持ち場に付くぞ。

 鍋いっぱいのシチューで市民の腹を満たせ。
 開いたベッドを傷病兵で埋め尽くせ。
 炊き出しだ。診療所の開設だ。
 調理場と医療現場が俺達の戦場だ。

 これより、宣戦布告。

 擲弾銃ダネルMGL。
 弾頭は色とりどりの煙幕弾。
 どふん、どふん。天高く撃ち放つ。
 音と色彩で市民達の目を引く。

 拡声、音響魔法展開。
 首都の皆さん、聞こえますかー。

 こちら魔女協会より。
 黒鷲団団長ハインリヒ。
 東区エノーラの酒場前の広場にて。
 これより炊き出しを開催します。

 メインメニューは、魔女の手料理。
 花人が作った野菜です。
 抵抗の無い人は勿論。
 あるけど背に腹は代えられない人。
 むしろ美人魔女さん大歓迎の人。
 正教徒でも異教徒でも。
 人間さんでも亜人さんでも。
 腹ペコさんは来るなら来やがれ。以上!



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