黒鷲の旅団
13日目(2)無血戦争〜午前の部・盛況〜

「水だ! 水が足りねーよ!」
「鍛冶屋ちゃん、バケツ作ってー」
「はいはーい! 任せといて!」

 魔女達とジュスティンが打ち解けている。
 正体はバレていないかと思いきや。

「可愛い魔人さんだねぇ……ケヒヒ」

 レイヴンヒルトさん、ニヤニヤ。
 この人、読心魔法の使い手だったか。

「あちち! あっちち!
 水、水!」

「マルカちゃ〜ん?
 摘まみ食いはダメよー?」

 広場に即席のカマドを作って、調理。
 弓兵隊が料理を担当する。

 母親ベラさんの仕込みが良い。
 家庭料理はマリナの得意分野。
 追従するのはフェドラやエメリナ。
 器用なジェマも覚えが早い。
 肉を捌くのはマルカ、フレヤが上手い。

「順番に、順番に並んでくださ〜い。
 沢山ありますから〜」

「こんなに来るなんて。
 ホントどうなっちゃってんのさ」

「果物とか配っちゃおうか。
 これ大分待つよ……」

 弩兵隊は誘導を担当中。

 一度は料理も任せてみたのだが。
 レーネが『大』のつく料理音痴だった。
 あー……落ち込むな。
 お前のは俺が食べるから。

「すいません、通してくださーい!」

「あー、ここから取るなぁ〜!
 ちゃんと配るからー!」

 銃士隊は、魔女協会からの搬送を護衛。
 腹ペコに押し掛けられて四苦八苦してる。
 弩兵隊の果物配りを急がせよう。
 農業・収穫担当は、魔女と花人達だが。

『あーう、ご主人〜』
『ご主人のお水が飲みたい〜』

 花人達から通信魔法。
 何人か魔力切れでフラフラ。
 農産を休憩している様だ。
 ローテーションで頑張っている。

 えー……バケツに水魔法、転移。

『んまいー。ご主人のお水が好きー』
『ご主人も好きー。また頑張るー』

 慕ってくれるのは良いんだが。
 そんな甘えられても大変だよ……

「あっちにもテント建てるよ。
 あと何か要るー?」

「エプロン持って来たよ!」

「鉱石は余ってねえか?
 鍋足りないって」

 道具屋ドリス、仕立屋カーラ。
 鍛冶屋のハミルトン。
 娼婦のベラさん達。
 運搬に料理にと、それぞれ協力。
 やはりマンパワーは重要だ。

 鉱石。錬成魔法。
 クリエイト・メタルマテリアル。

 あとドリスさん。
 テント終わったら魔力薬が欲しい。
 通信に疲労回復にと魔法が必要。
 早めに確保したい。

「あ、あの……」

 顔を出したのはフィリッパ。
 両親探し、まだ成果は上がらないか。

 両親の人相について。
 読心・記録・転写魔法。
 フィリッパの記憶から人相書きを創出した。
 俺達も見掛けたら声を掛けておく。
 焦らず探そう。休憩も取ってくれよ?

「あ、うー、お願いします……」
「大丈夫。お姉ちゃんが見つけてやるからね」
「ああー、自分だけ良い子ぶっちゃって」

 フィリッパの同行者は2名。
 魔女チェチーリアとジニー。
 誘拐犯も出る様な治安だ。
 子供の単独行動は危険だろう。
 魔女複数人で、交代で見て貰っている。

「宣伝行って来たぜ!」

 冒険者ガイゼル達が来訪。
 反響は……ぼちぼちか。

 神聖教会でなく、魔女協会の炊き出し。
 怪しむ声があるのも仕方あるまい。
 その評価を引っ繰り返す為に。
 今こそ実行しないと。

 少なくとも現状、少なくはない客足。
 口コミでも広がってくれると良いんだが。

 宣伝は俺からも改めて行おう。
 他に気付いた事は?

「ここ気になってるけど。
 怪我して来れない人もいるみたい」

「何人かは診といたんだよ。
 ラーナが治癒術を掛けて」

 ベデリアとサスキア。
 振り返り気味に言う。
 炊き出しに並ぶ中にも怪我人がチラホラ。

 調理現場は安定しつつある。
 そろそろ診療所も併設して迎え入れようか。

 巡回しての問診も必要になるだろう。
 治癒魔法に長けたフレスヴェーナ派。
 巡回派遣を依頼したい。

 フレスさんはどこだ。探知魔法。
 来客を示す光点で脳内レーダーが眩しい。
 盛況、か。まだまだ先も長い。
 気を引き締めないと。



前へトップへ次へ