黒鷲の旅団 >13日目(8)無血戦争〜夕方・これで終了とも行かないが〜


黒鷲の旅団
13日目(8)無血戦争〜夕方・これで終了とも行かないが〜

「えーとー……瀉血?」
「いえ、でも、失血も気になります」

 ここはレーネちゃんが正解。

 医療補助、レーネとフェドラ。
 銃士隊からも誰か呼ぶか。
 治療がてら、応急処置なんかも教えておきたい。

 瀉血。悪い血を抜く、といった治療法。
 中世では、むやみやたらと使われたと聞くが。
 医学的な根拠には欠ける、とも伝わっている。
 加えて今の患者は出血しており、失血死の方が怖い。

 失血は、それこそ体力を失う。
 うっ血も悪化すると部分切除に発展し得るのだが。
 それでも命には代えられない。
 他に手が無い時、命か足1本か、なら命を取りたい。

 ただ確かに……患者に、うっ血がある。
 担ぎ込まれるまでの間、止血措置の影響だ。
 血をどうこう、という措置も必要だろう。

 並列、浄化・整脈。
 連続並列、活力・解毒。
 速射並列、治癒・抗血清。
 浄血魔法クリアブラッドを生成。
 少し顔色が良くなった様だ。

 次の患者を。治癒、縫合、鎮静、鎮痛、解毒。
 造血魔法ブラッドメイク、止血魔法ブラッドキープ。
 脈が速い。整脈魔法キュアパルス。
 発熱。解熱魔法アンチパラティック。

 通信。整列担当は弩兵隊、アイリスから。
 もうベッドが必要そうな患者は見当たらない?
 どうにかベッド、足りたかな……

 意識不明の患者だと、ベッドが要る。
 処置が済んだからって放り出すワケにも行かない。

「おっ、お待たせ!」

 パタパタと駆け込んで来たのはユッタ。
 通信を受け取って、参加志願。応急処置研修に参加。

「大丈夫でした?」
「イェンナちゃんに代わって貰った」

 出迎えるレーネ。支度の為、銃を渡すユッタ。
 受け取ったレーネが銃を眺め、ユッタ得意げ。

「良いでしょ」
「ですね。前のより強そう」

 ユッタの新しい狙撃銃。
 PGWティンバーウルフ。闇商人の店で買った。
 ユッタ、なかなか気に入ってくれた様だ。

 銃なんて聞かれても、よく分からんのだろうけど。
 それでも得意げなユッタ。
 褒めてあげるレーネは、お姉さんだな。
 ニコニコ見守るフェドラはもうお母さんみたいな顔。
 いや、そんな年ではないハズなんだが。

 どうあれ、ユッタが元気になって良かった。

 次の方。難民の少女ベルナデット。
 付き添いは同じく難民の青年フリオ。
 炊き出しの方で吐いてしまったらしい。
 栄養失調でもあるが、飢餓が続いて胃が弱ってるのか。

 2人して求職中。城で兵隊に志願してみるのだとか。
 だったら尚更、健康にしておいた方が良い。

 ……どっかで作りたいぞ、整腸魔法。
 材料になりそうな魔法は思いついた。
 しかし、失敗するとお腹がゴロゴロになりそうで。
 トイレが不足しがちな現状、試すのは難しいなぁ……

 ひとまず治癒、解毒、浄化、抵抗、活力、中和魔法。
 それと、それぞれに支度金として10万渡す。
 東区の鍛冶屋で装備を整えて行け。

 巡礼者の姉弟、オフェリエとドニ。
 姉の方が足を痛めてしまった。
 目指すはバチカンの大聖堂だという。

 遠いな……各地の教会で助けて貰えるとは言うが。
 装備が粗末で、何より靴が良くない。
 サンダルみたいなのでルーマニアからイタリアって。

 カーラの仕立屋を紹介する。
 確か革靴とかも置いていたハズだ。
 金は俺が出す。返さなくて良い。
 大聖堂、俺の分までお祈りして来てくれ。

 患者が一通り去って。
 少し物足りなさげなのはユッタ。
 折角、研修に来たのに、後の患者が少なかったか。

 少し座学。後始末についてだ。
 血の付いた医療器具や何かは、必ず洗浄する。
 清潔にしないと、そこから疫病が広がるからな。

 人を助ける為、汚くなるのを厭わないのと。
 汚いままの治療を避けるのは、また別の話だ。

 それと……各隊にもう1人、衛生管理役を決めたい。
 隊長や副長が積極的で助かるが、もう1人。
 もっと治療要員も増やさないと。

 となると、銃士隊は必然的にノイエ。
 弓兵隊はエメリナだろうか。
 魔法治療になると、魔力が多いに越した事はない。

 さて、各隊に通信。
 状況は……調味料が無くなったと言うので、いよいよ潮時だ。
 ヤンワリと閉店宣言に移ろう。

 拡声、音響魔法。ご来場の皆さんにお知らせです。
 間も無く調理は終了しますが、食料の配布は継続します。
 市民から上がる声が「ええーっ」からの「おおー」。
 反応が露骨過ぎて笑ってしまう。

 それじゃあ、最小規模を残して片付け。
 集合して、戦果の確認に移ろうか。



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