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黒鷲の旅団
14日目(3)みんな足りてない
「あっ、良いトコ来たじゃない」
「やあ〜、先輩。お手本見して〜」
ハミルトンの店に、アンヌとジュス?
見習いジュスティンさん。
鍛造にチャレンジ中。
剣を打っている様なのだが。
お師匠からなかなかOKが出ない。
で、俺にもやって見せろと?
俺もそんなに熟練者じゃないんだがな。
スキルに寄る補正の差だろうか。
試しにロングソードを1本打って……どうかな。
「ま、面白みも無ぇが、店に置けるレベルだな」
「おっかし〜なー。ボクと何が違うんだろ」
ジュスと俺、爺さんが打った剣を並べてみよう。
空間、解析魔法。記録、転写。
羊皮紙に写して検証する。
なるほど、製品の密度が違う……のかな?
ジュスの作品はムラがある様だ。
俺のはほぼ均一。これじゃ鋳造と大差無い。
爺さんは部位によって打ち方を変えている様だ。
「んー、でも手加減って難しいんだよ。
ボクってほら、魔じ……マジ怪力だし」
ポロっと出しそうで危ないな、偽装魔人姉さん。
人間に溶け込もうと返信魔法。
角や尻尾を隠している状態。
他方、デルフィアンヌはノー変装。
ハミルトン爺さんは気にしていないが。
一体どんな説明を?
「嬢ちゃんも、友達なんだって?
ユッタを助けるのに一役買ったってな。
ユッタに何かあったらと思うと、わしは……
ああ、すまねえ。
ここんとこ、年のせいか涙もろくてな」
子煩悩ならぬ孫煩悩。
ユッタの味方は自分の味方の様だ。
よしんば世界の敵だとしても。
俺も他人の事を言えない。
ユッタに何かあったら、なあ……
それはそれとして、鍛冶。
一朝一夕とは行かないだろう。
俺も爺さんに追いつくには経験が足りん。
数をこなさないと、だ。
ちなみに複製魔法。
これは鋳造ベースだった。
鍛造品も複製できるのだが。
調整難度と魔力消費量で頭痛がする。
俺は俺で鍛冶技術を伸ばすべきだろう。
「練習かぁ〜。
でも、鉱石が足んないって」
「おう、それよ。
1つ頼まれちゃあくれねぇか」
首都に不足している物資。
これは食料だけではない様子。
鉱山町との流通が途絶えていた。
鉱石が入って来ない。
既に冒険者ギルドにも依頼を出したと。
流通経路再構築の依頼が複数。
それとは別に。
ハミルトン爺さんに1つ当てがある。
閉鎖になった鉱山。
まだ掘れる所があるのでは、だ。
爺さんも見に行きたいといって。
護衛してくれという。
距離は、馬で片道半日……馬で?
馬か。買いたいけど、置き場がな。
全員分の馬を用意するのも難しい。
今回、馬は断念。
往復2日掛けて、徒歩で行く。
食料と違って鉱石。
需要も危急ではない。
子供達と旅情を楽しむのも良いだろう。
「ああ、それも悪くねぇな。
ユッタと旅なんて何年ぶりだ。
初めてだったかな」
爺さんも乗り気の様子。
急がず、しっかり支度して出よう。
まずは当初の目的を。
新人用に小銃、ウィンチェスターを3丁。
マイナさん用にはバレットクロスボウ。
これは矢の他に石弾や何かも飛ばせる代物だ。
元聖職者、殺傷に抵抗がある。慣らしに。
石玉のセットも3袋購入したい。
「あっ、先生だ!」
「こ、こんにちは……」
来店は難民のフリオとベルナデット。
募兵に応じるので装備を整えるんだったか。
ついでだから診察しておく。
ベルナデットの『栄養失調』は解消。
しかし、まだ『栄養不足』だと。
パラメータも2割減。
朝食は? 食べてない。
リンゴとオレンジを持たせる。
兵隊は肉体労働だ。
食べられる時に食べておけよ?
それから爺さんは旅支度。
荷馬車を借りに行く様子。
後で合流しよう。
ジュスは爺さんについて行った。
アンヌは俺について来る。
俺はドリスの店で狙撃スコープを5つ買う。
5つだ。ローダとテクラの銃にも付いていない。
それと魔力薬は……在庫切れか。
道中で調合するしかないかな。
商工会から、各種採取依頼を出しているという。
なるべく請けて欲しいとドリス。
市民の、何が足りない、が依頼になっている。
分かった。出る前にギルドを覗いてみよう。
冒険者ギルド……子供達を連れて行きたくない。
先に俺だけで寄っておくべきか。
……ん? アンヌも来るのか?
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