黒鷲の旅団
14日目(16)意外な遺骸
「あいつ、次はどうとか言ってたわよ。
また戻って来るかも」
アンヌより、敵将ライザネルザとのやり取りの説明。
何か手を打とう。防備を固めるか援軍を呼ぶか。
撤退したライザネルザ達、探知座標は黒海沿岸まで後退。
既にイェルマインから公主に連絡を取っている。
増援を寄越すらしいので……あー、待った。
俺からも公主に話をしないと。
不死者ソルヴェーグとの休戦協定。
墓地を踏み荒らされない限り、敵対しないでいてくれる。
魔王軍と挟撃されたくも無いだろう。
変にチョッカイ出さない様に言っておきたい。
『あんた、今度は何、ネクロマンサーでも始めたの?』
イーディス公主から。そうじゃない。成り行きだ。
しかし、今後も骸骨兵士と共闘する機会があるとしたら。
そういった称号や、不死者の統率系スキルとかも取るべきか。
『ますます神聖教会とゴタゴタすんじゃない?
ま、面白そうだし、あたしは応援しとくけど。
魔王バティスタン軍の尖兵だかは、こっちで片付けるわ。
明日の昼には着く様にするから。
ああー、ゴメン。ママが何か話があるって』
通信映像、入れ替わりにカシューさん。
カシューさんがニコニコ出て来て、急にぎょっとした。
通信途絶。え、何だ何だ? 再接続を試みる。
『あっ、や、あの、えーと……
ま、ままままた今度、ゆっくり話しましょう!』
音声のみの通信で返答。何だろう。
見たらマズい格好でもしていただろうか。
「ん、何? 通信終わった?」
後方からアンヌ。ああ、まあ……その様だ。
立ち位置だけ見ればカシューさん。
アンヌを避けた様にも思える。
魔王軍に因縁でもあるのだろうか。
また今度とやらに、詳しく聞いてみよう。
野営準備。子供達を丘の上から、少し地下墓地側に移動。
丘の上にも斥候は立てるが、奴らが戻って来るのを想定する。
丘の向こうから全容が見えない高さまで下がろう。
陣地設営は花人第1小隊と銃士隊2つ、弓兵、弩兵隊に任せる。
花人第2小隊とサンドラは俺と来てくれ。
陣地から丘を挟んで範囲側には罠を張りたい。
障害物として、石柱魔法で石柱を立てては倒す。
植物魔法の茨バリケード、地裂魔法の落とし穴も複数。
バレバレで良い。突撃さえ阻害出来れば。
と、ティルアとマルカ、フレヤ、ジェマがチョロチョロ。
肉か。撃ち落としたガルーダの回収に来た様だ。
「おっ肉ぅ、おっ肉ぅ、鳥の肉ぅ〜♪」
「カラアゲぱーちーするにゃあ〜」
逞しいなぁ……ガルーダを運搬する子供達。
転移、いや、浮遊魔法で浮かせている。
覚えたのはティルアなのか?
そう言えば戦闘中は、誰か燃料魔法も使っていた。
バリエーション豊かなのは良いが、把握出来ていない。
それぞれ持ち技の確認もしないとな……
罠の設置を終えて陣地に戻る。
出迎える子供達、花人達。
ジュス姉さん作のデカいフライパンが幾つか。
もう油にガルーダ肉が浮かんでいた。手際が良い。
「よし、じゃあ、アンヌの勝利を祝って!」
「アンヌちゃん、頑張ったねー」
「えーっ? へへへ、照れ臭いわね」
唐揚げ祝勝パーティ。主役はアンヌ。
一番の功労者だ。俺からも感謝と賛辞を贈ろう。
勿論、陰の立役者にも感謝したい。
魔人、高レベルなのも明かせないジュス姉さんだが。
バレない様にでも、感謝は伝えておきたい。
「うひひひ、分かってる男は良いねえ〜」
俺の肩に腕を回し、頬を寄せて来るジュス。
酒臭い。酒を持ち込んだのは誰だ。爺さんか。
違った。イェルマイン達だ。
いつの間にか混ざって唐揚げをつついている。
イェルマグ配下の騎兵隊もお疲れさん。
子供達の周りで、警戒に当たってくれていた。
新人ジェイムやジェイナ、ラウルにチキータ。
調子はどう? なんとかついて行けている。
以前からの少年チーム、エリック達も元気そう。
従騎士ノインテリア以下、お姉さんチームも無事な様子。
あとは……ソルヴェーグと配下数人が来訪。
生前から魔法研究者だというソルヴェーグ。
新魔法について情報を交換したいらしい。
「そ、そこに居るのは……マリナ・エーベルト?」
不意に、骸骨騎士の1人から声。
ん、誰だ。マリナに骸骨の知り合いなんて居た?
骸骨騎士は歩み出て、指輪を外してマリナに見せる。
「え……あっ……お、お父さん!?」
マリナの父、ベラさんの旦那、帰らずの冒険者。
クラウス・エーベルト……が、アンデッドになっていた?
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