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15日目(9)ぺちこ・リンカネーション

「神人よ。神の子にして人の子よ。
 ……起きなさい。あなた、何やってんですか」

 何やら不満げな声がして。
 気が付くと、ここは……キャラメイク空間?
 真っ暗な空間の中に居て、目の前にナビのお姉さん。

「守護天使リリアノーラです。覚えていますか?
 あなた、無茶な魔法を使って死んじゃったんですよ」

 守護天使さんの言葉に、警告文を思い出す。
 生命力を代償に魔法発動。死亡時の代償、レベルダウン。
 今、レベルは……36。7つ下がった、のかな。

「違います。魔力不足の代償でレベル126減少して−83。
 そこから相打ち撃破のレベルアップで+119、今36です。
 相殺しなければ、危うく消滅する所だったんですよ?」

 死ぬとペナルティでレベルダウン、は知っていたが。
 レベルが0以下になると消滅、再スタートらしい?
 これは覚えておかないといけない。

「覚えておくって、ギリギリまで使う気ですか?
 まったく……あまり無茶をしない様に。
 生き返ると言っても限度があります。
 もっと、ご自愛なさい……えいっ!」

 ぺちこ、と額を叩かれて、気を失って……あれ?

「居たぞー!」「見つかった!?」
「えー、何でそんなトコに?」
「吹っ飛んだんじゃない?」「凄かったモンな」

 次に気が付くと、俺は木々の合間に倒れていた。
 バラバラに居る子供達が、次々に駆け寄って来る。
 俺を探して散開していたのだろうかな。
 子供達の嬉しそうな顔が並ぶ。
 消滅し掛かっていたとか、ちょっと言い難い。

 えー……状況。損害とかリザルト。
 ヤバげな魔法が出たと思うんだが、どうなった。

 周辺の木々が倒れ、着弾点付近の地面が抉れている。
 機動兵器はバラバラに爆散した。らしい。
 ジュス姉さん達が集めて回っている。
 強力な魔法ではあったが、幸い巻き添えは無し。
 長時間維持できなかった為、と思われる。

 収入。マネーカードに振り込まれた撃破報酬、2千万。
 子供達にも、それぞれ半額で1千万ずつ。
 何もしてないのに、とユッタやマリナだが。
 俺がみんなに元気を貰ってるから良いんだよ。
 くれるって言うんだから貰っときなさい。

 それと、スキルポイントがキッカリ50になっていた。
 元のポイントは、死亡時の不足分を補って消費されたのか。
 その後、撃破で50増えた……という所だろう。
 1つ消費、縮退魔法を取りあえず習得しておく。

「お、居た居た。キミ、一瞬居なくなってなかった?」

 ジュス姉さん達が戻って来た。
 居なくなったの話は置いといて、収穫は?

 集められて来た機動兵器の残骸。
 バラバラに爆散して、集められたのはごく一部。
 鑑定。材質は確かにアダマンタイトらしい。

 錬成魔法で纏め直して、インゴットが4本程度。
 魔人?傭兵姉妹に1本、イェルマグ兄妹に1本。
 俺達で2本貰っちゃって良いだろうか。

 何も出来なかった、とても貰えないとエンヌ。
 そもそもは打ち合わせ不足だったのがマズかった。
 それでも、それぞれの役目は果たしたんだ。
 あげるって言うんだから貰っときなさい。

 さて、強力な素材。伝説の金属アダマンタイト。
 問題は、どう加工するか。

 ハミルトン爺さん曰く、並大抵の火力では打ち直せない。
 素材が頑丈過ぎて鍛造には不向き、か。
 複製魔法に転用、鋳造してしまった方が良いという。

 でも……打ってみたいだろう?
 爺さんの目元には未練の色が浮かんで見える。
 インゴット2つあるから、1つ預ける。
 加工の方法は気長に探すとしよう。

 もう1つのインゴットは形にする。
 槍盾騎兵のオルタンシアからランスを借りた。
 複製魔法。素材をアダマンタイト。
 アダマンタイト製の鋳造ランスを作成する。

 俺は別にランスなんて使わないんだが。
 これは公主様に献上して、何か便宜でも貰おうか。
 俺が使う剣は、どうせなら爺さんに打って欲しい。

 ランスの銘はどうするか、と。
 白い銀色。シロサギにするかな。
 イーグレット、いや、ズィルバーライヤー。
 神銀槍ズィルバーライヤーと銘を打つ。

 アダマンタイトの加工は魔人でもシンドイらしく。
 イェルマグ隊も、加工出来る工房・職人が見つかるかどうか。
 仕方ないな。鋳造で良ければ俺が作ろう。

 魔人姉妹はエンヌに片手剣を1本。
 銘を銀の雲雀、ズィルバーレルヒェ。
 イェルマグ隊は、マグダレーナに弓。
 銀のカモメ、ズィルバーメーヴェとでも。

 レア度の表示がおかしい、とマグちゃん。
 その辺、俺は詳しくないけれども。
 攻撃力は上がるみたいだから、良いんじゃないか?

「はい! 毎晩抱いて寝ます!」
「え、えっ!?」

 マグちゃん、別に抱かなくて良い。
 エンヌも同じにしなくて良いから……

 さて、ひとまず危機は去った。
 出張って来ているハズの公主達に顔見せして。
 後は一旦、首都へ帰るとしよう。



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