黒鷲の旅団
15日目(14)悲しみのドラゴンスレイ

「あ、あっ、倒れる!」

 カーチャが声を上げた。
 火竜の巨体、遠くからでもまだ見えるな。

 公主達の猛攻を受けたのだろう。
 子細は分からんかったが。
 幾度も爆ぜる閃光と爆音。
 火竜はついに力尽きた。
 咆哮を上げて崩れ落ちる。

「うわああああん!
 わあああああああ!」

 大泣きを始めたのはフィリッパ。
 自身も両親に再会出来ていないのだ。
 タマゴを、家族を思う火竜。
 その気持ちが分かってしまう。

「ドラゴンさん、頑張ったのに」
「タマゴ返してやりたかった……」
「ああー、くそ。面白くないな」

 マリナとアイリス、悲しげ。
 憤慨しているのはジュス姉さん。
 仕方ない。スッキリしないけど。

 火竜に肩入れしたかったのも山々だが。
 貴族や冒険者に睨まれる。
 後が遣り難くなる。

 子供達を最優先して、安全策を採った。
 間違ってはいないと思う一方。
 つい謝罪の言葉が出てしまう。
 すまんな、火竜。
 街を焼かれても困るんだ。

 タマゴを買収出来たら良かったんだが。
 金で釣って連中の信念を揺るがす。

 それも最善とは言えまい。

 後で思い直して遺恨になるかも知れない。
 遺恨の矛先が子供達に向く。

 それはどうあっても避けたい。

 しかし……もう少し。
 何か上手く立ち回れたら良かったな。
 子供達を悲しませてしまった。
 お姉さん役のフェドラでも鼻をすする。
 面倒見役はマイナさんやアンヌ、花人達。
 リザードマン達も慰めてくれている。

 貴族の後ろ盾のある依頼、か。
 貴族を黙らせるには、こちらに権力が要る。
 公主の威を借り続ける訳にも行かない。
 もっと出世とかも意識するべきだろうか。

 少しして、公主から通信。
 火竜撃破のお知らせ。

 ロードメイアがラストアタック。
 イーディスは最大ダメージでMVP。
 ランスロットは部位破壊。
 それぞれ報奨を得たらしい。

 祝賀会? 俺は何もしてないからな。
 祝いの言葉程度に留めておく。
 とてもそんなテンションじゃない。

『えー、ドラゴン肉とか食わない?
 結構んまいよ?』

 勘弁してくれ……というか。
 毒沼の中を通って行った奴だが。
 食べて大丈夫なのか。

『んー? 大丈夫。解毒してるし。
 それより、あんたに貰った槍だけど。
 ナニコレ。すんげー攻撃力。
 あとレア度Gって何?
 SSRとかURじゃないの?』

 装備品のレア度。
 俺も詳しくないんだが。
 イェルマインが説明してくれる。

 レア度1:N:ノーマル
 レア度2:C:コモン
 レア度3:R:レア
 レア度4:SR:スーパーレア
 レア度5:SSR:ダブルスーパーレア
 レア度6:UR:ウルトラレア

「という順になってるんですがね。
 確かに、Gってのは聞いた事がありませんや」

 うーん……ありませんか。

 公主。イーディスさん。
 周りに鑑定や解析スキル持ちは居ないのか。
 ウインドウのGの部分に鑑定した?
 説明文に解析を掛けて。
 更に説明を得られたと思ったんだが。

『あー、その手があった。おーい!』

 誰か心当たりがあるらしい。
 じゃあ、レア度の調査は任せよう。
 献上品の謝礼について?
 それはまた後日話したい。

 おっけーい、と軽い返事。
 公主は通信を終了。

 こちらは野営準備に掛かろう。
 焼き出された連中にもメシを用意しないと。

 ラミアやリザードマン、ハーピー。
 基本的に肉食らしく。
 保存してあったガルーダ肉の残りを差し出す。
 コロボックル連中には木の実。農耕魔法。
 トレントさんは水撒いとけばいいのか?

「黒鷲殿、と申したか。手厚い支援に感謝を。
 無論、人族に思う所はあるのだが。
 その相手に、こうまでされてはな。
 我ら森の民も恩知らずとは行くまいて。
 必要な物があらば、何なりと申し付けてくれ」

 厳かに喋るトレントさん。
 大きいし年長者だろうかな。
 樹齢何百年といった趣。

 まあ、次に会った時は敵同士か分からん。
 探知情報、友軍マーク。
 こちらも積極的に攻撃する気は無いが。
 討伐の依頼があれば、殺さずとも退去は迫るか。

 ただ、話し合いの余地は残したいな。
 今日みたいに悲しい戦い。
 出来るなら避けたいものだ。



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