黒鷲の旅団
16日目(4)火竜の加護と共に
「あはっ、すげーな!」
「まだ温かいんだ……」
火竜の頭骨にタッチするマルカとユッタ。
毒とか火傷とか大丈夫か。
勇敢なのは良いが、慎重に頼むぞ。
俺も頭骨に触れてみる。
なるほど熱があるが、まさか生きてはいないだろうな。
探知。生体反応無し。解析。HP残量無し。
空間魔法から空間把握。何か隠れている様子もない。
……大丈夫、かな。
子供達を整列させる。
火竜さん、お疲れさまでした。
黙祷……って分からないか。何人かガヤガヤ。
お祈りだ、お祈り。無事に天国へ行けますように。
俺も作法とか全然分からないけれど。
自分なりに祈りを捧げる。
目を閉じ、頭を下げ……
不意に、生暖かい風。
目を開けると、これは炎だろうか。
青白い炎が竜の形になって、頭骨の前に浮かんでいた。
探知に反応あり。緑。
解析。名称はドラゴンレイス。火竜の幽霊だと。
しかし、緑だ。敵じゃない。大丈夫……と思う。
こちらを見回す火竜の幽霊。
緊張状態。固唾を飲んで見守る子供達。
やがて火竜は咆哮を上げると、天に昇って行った。
「よ、よかったぁああ……」
「何だよ、ビビらせやがって」
「成仏したのかな?」
「うん、多分……」
イェンナとカーチャが尻餅をついて。
マリナとペトリナが顔を見合わせる。
うん、まあ、悪い事にはなってないだろう。
……うん?
子供達に気を取られて、何か見落とした。
一瞬、脳内表示ウインドウが見えた様な。
ログ。ログ表示。
ドラゴンレイスの鎮魂に成功した、とある。
身体強化とか、バフも幾つか発生しているな。
今……鎮魂しなかったなら、ヤバかった?
この辺で、夜な夜なドラゴンレイスが暴れ回ったりだとか。
子供達の情にほだされて、の火竜弔問だったのだが。
魔法世界。霊魂の取り扱いも馬鹿に出来ないな。
まあ、結果オーライだ。隊列を組み替えて首都に帰ろう。
バフ発生中。火竜さんも応援してくれているらしい。
今度は弓兵、弩兵隊を前へ。
銃士隊2つは側面の警戒へ。
花人さん達はまた今度見よう。
進軍再開。首都周辺、まだ闇の気配は残るだろうか。
数こそ減ったが、ゴブリンよりもトロールが多い。
「よし! ほら、あたしだっ……うわお!?」
「ほらほら、どんどん行くよぉー」
弓兵隊。フレヤからマルカの連携。
矢で矢を貫く継矢を披露。
すると、フェドラ、マリナ、エメリナで更に継矢。
5段継矢ってマジか。精度の伸びが凄いな。
後のジェマ、フレヤの再攻撃も頑張る。
継矢にはならんが掠っている。
みんな、測量魔法無しでこれだ。
技量に至っては、もう俺なんかより上じゃないか。
「キマイラ2! 斉射、左!」
「右はレーネちゃん! みんな左撃つよ!」
弩兵隊。キマイラ2頭、右1頭をレーネの重弩が撃破。
みんな何も言わず判断に従う、強固な信頼関係。
技巧と直感の弓兵隊に対し、規律と連携の弩兵隊だな。
レーネの凛とした声は、いかにも隊長っぽい。
あと、副長ペトリナも統率スキルが芽生えつつあるのか。
最初の頃のオドオドはどこへやら。頼もしくなった。
ティルアとテルーザの再装填が忙しい。
ゴーツフットレバーも好調と見える。
アイリスも眼鏡越しの狙いに不調は無い様子。
ツェンタは……ん? 念話?
声出しを邪魔しない様に、隊長副長に索敵情報を送る。
ペトリナに負けじと気遣い上手だな。
「次、斉射を! ……ブラックランス!」
「ダークジャベリンズ!」
レーネとフェドラは射撃の合間、魔法攻撃。
得意の暗黒魔法で、正面にも援護射撃を放って寄越す。
頑張らんと、俺もやる事が無くなってしまう。
うん……ホント、頑張ろう。
ヤバいヤバいといった顔のアラクネ、ラミア達に並ぶ。
負けじと弓弩を撃ち放つ。
猛攻と進軍を続け、昼前には城門が見えて来た。
城門前で設営。魔女協会に連絡を取ろう。
新しい従者達に、使い魔の証を用意して貰わないと。
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