黒鷲の旅団
16日目(6)魔法は何の為に

『なるほど。事態は理解した。
 隠さずに報告してくれた事に感謝を』

 フレスさんの連絡を受け。
 大陸魔法機関長ディミティウス。
 直々に、俺に幾つか質問をしたいという。

 縮退魔法、使用したかと聞かれ……
 確かに使った。
 相手?無機物の機械。
 高度な鉄ゴーレムみたいな奴。

 強力かつ危険な魔法だと。
 それは理解している。
 使いたいか。使わずに済む方がいい。
 代償も多い。味方を巻き込むのも怖い。

 スキルポイントから配分の指示を受ける。
 縮退魔法のレベルを30以上まで上げる。
 それで。撃たずとも引き渡しが出来るのか。

 機関長は何かの魔法を使った様だ。
 相手のスキルを習得する魔法、か。
 あるいはそれに類するスキルだろうか。

『協力に感謝する。
 縮退魔法、確かに預かった。
 恐らく禁呪か準禁呪級魔法になる。
 詳しい説明は追って文書で伝えるが。
 簡単に言うと、使用に多くの制限が掛かる。
 世界を、魔法秩序を守る為。
 理解と協力を切に願う』

 そんな事を言って。
 機関長は通信を切った。

 禁呪。世に出せない危険な魔法。
 伝承の特許料を得られないのは残念だが。
 しかし、やたら広めて使われても怖い。
 収入源としては諦めるしかないかな。

 やむなく使う場合に備えて。
 文書とやらだけは確認しよう。

 やたら攻撃魔法ばかり持てはやされる。
 そんな戦乱魔法世界だが。
 本来、魔法とは人々の生活を豊かにする為に。

 ……そうだ。使わないと。

 魔物従者達はサンドラ達に引率して貰う。
 ひとまず魔女協会へ向かってくれ。

 俺は給仕のクリスドゥラを探す。
 住所はどこだ。
 北区?シャンタルが記録していた。
 近くまで行けば、探知魔法で探せるだろう。
 詳しくは現地で探すとして。
 まずは足を運んでみる。

「あっ、こいつ知ってる!
 子供使いだ!」

「えー、違うよ。
 子守のおじさんだよ」

 現地の子供達に指差し確認される。
 子供達……の中に、知っている顔がある。
 少年兵グンターとリュシアン、メリカ。
 縫合魔法を使ったのがメリカだったな。

 クリスドゥラの住居を聞く。
 孤児院の近所だと。
 案内を頼む。
 ユベール少年から駄賃を要求された。

 ユベール、イェスタ、アダリナ。
 彼らも孤児らしい。
 グンター達と一緒に住んでいる。
 支援金が要るか。
 頭数と掛けて60万持たせる。

 あくまで支援金を含めてだからな?
 他でこんなに吹っ掛けるなよ?
 俺だけだよ?

 道中、少し話を聞く。

 首都の食糧事情は少し改善された様だ。
 神聖教会からの支援も少し入ったと。
 役人が負けてられないとか言っていた?
 魔女の炊き出しに張り合ったのだろうか。

 それから、子供使いと呼ばれる神人。
 俺の他にも何人か居るらしい。
 貧しい孤児院の子供達。
 しばしば戦場にも潜り込む。
 酷いのもマシなのも見て来たという。

「旗を見て区別するんだよ。
 鷲か狐だったら大丈夫」

「狼の奴は金払いが微妙だよな。
 借金がどうとかって」

「ライオンと蛇の奴はダメ。
 囮にされるから」

 子供達の情報ネットワーク、だな。
 恵まれない環境下だが。
 それでも生き抜く工夫をしている。

 本当なら、戦わせずに済むのが一番だが。
 子供達も奴隷より少年兵がマシだと言う。

 仮に、単に奴隷制だけ禁止した場合。
 今度は、ただ路頭に迷う子供が出るか。
 一朝一夕には解決しないな……

 ともあれ、クリスドゥラの家へ。
 誰か門の所で中の様子を窺っている。
 声を掛けようとしたら逃げてしまった。

 怪しいが……まずは患者か。

 玄関口で呼ぶ。返答が無い。
 探知。玄関の中に居る?
 ドアを開くと、どこか痛むのか。
 動けなくなっていた。

「あ、あっ、先生!
 良かった、あの、足が。
 足が動かなくて」

 火傷を顔と入れ替えた所か。
 移植外科魔法の。

 培養魔法を試す前に化膿の処置が要る。
 鎮痛、浄化、解毒、抗血清、免疫魔法。

 培養魔法。範囲指定、正常な皮膚。
 正常な皮膚が培養されて。
 火傷になっていた部分が押し出される。
 剥がれる。べろり。
 絵的にキモイんだが。
 とにかく患部は治ったか。

 表で見た男について。
 人相を伝えると、知り合いか。
 幼馴染のラングレイだと。

 咄嗟に放った解析魔法。
 そんな名前を出していた。

 誰だか守ると言って宮廷魔道士になって。
 その守りたい。どうもクリスらしい。

「あたしに気があるみたいなんですよ。
 もう、バレバレ。
 まあ可愛い子分みたいな奴だけど。
 昔っから意気地が無くて。
 こっちから告白してやろうかしら」

 どうやら両想いらしい。
 放っておいても害は無いか。
 それじゃあ、お大事に。
 クリスドゥラの家を離れる。

 ……宮廷魔道士、なー。

 まさに踏み込む所だったかも知れん。
 深くは追及はするまいが。
 いざという時に使わないでどうする。
 それでは何の為の魔法やら、だ。

 城で会う事があったなら。
 何か指南してやった方が良いだろうか。



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