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黒鷲の旅団
17日目(7)進路を北へ

「それでは、留守の事はお任せください」

 自宅にはフレスさん、ヘリヤ、シャンタルが来てくれる。
 ポータル機能、来訪者指定。3人を出入り自由に設定する。
 フレスさん、リータとラケルをお願いします。
 ヘリヤ、シャンタル、イタズラは程々にお願いします。

「えー、信用無ぁ〜い」
「ウィヒヒヒ、バレてらあ〜」

 疑って悪いが、でも何かするだろ?
 顔を見合わせてヒヒヒと笑う2人。
 何もするなとは言わないから、損害が出ない範囲で頼むよ。

 リータは畑の収穫へ。無理の無い範囲で。
 ラケルはニワトリに食事と運動をさせよう。

 俺達はトランシルヴァニア境界線を目指す。
 距離からして、野営ないし、集落で泊りになるだろう。
 戻れそうなら通信するが……と、そうだ。
 朝晩の2人の食費も預けて行かないと。

 魔女協会を出て、ハミルトン爺さんの店へ。
 と、ウェルベックも来ていて、何やら試作品を渡される。

 試作品は2種類。
 1つはハーピー用、足に装着するクロスボウ。
 ゴーツフットレバーに横木。蹴りで操作する仕様。
 腕が翼のハーピーでも扱える様に、との事だが。

 ハーピーズ、試射……の前に、重い?重いかー。
 重量が課題だな。飛行能力を妨げてしまう。
 ひとまず脚用レバーだけ採用。小型のボウガンに変更だ。
 火力は落ちるが、まずは射撃に慣れて貰おう。

 ウェルベックには、軽量素材ないし仕込み矢の開発を提案。
 前者は難しいが、後者はすぐ掛かってみると。

 それと、セミオート式クロスボウ。
 装填、弦引き、発射までをレバーで操作する。
 連射性が高くなり、しかし弦の強度は落ちるのか。
 構えたまま装填できるので、狙い易いのは利点。

 これは……ティルアとツェンタが挙手。
 じゃあ、試しに使ってみて貰う。
 ウェルベック、不具合があれば改善したいという。
 気が付いた事があったら遠慮なく言ってくれ。

 コロボックルさんをハミルトンの鍛冶屋に預けて。
 代わりにジュス姉さんが参入して。
 あれ、姉さんは鍛冶修業の方は良いのか?

「お使いだよ。素材探し。
 あと、ハインや孫ちゃん達の事もよろしくって」

 敵軍側に足を運ぶので、配慮してくれたらしい。
 レベルは内緒でも、腕が立つのは伝わっている。
 爺さんも過保護だな。いや、俺が言えた口でもないか。

 北の敵。シュテルンフェルト公国。
 魔王軍との連携が滞ってか、不気味な停滞を続けている。

 先の襲撃から6日目だったか。
 既に休戦期限は切れている。
 北部の街道、物資の流通は止まっていない。
 準備中か、他の方面で戦闘中だろうか。

 シュテルン公国の領土は、西はフランスに侵攻。
 オーストリア、ハンガリー、ウクライナの半分ほど。
 ルーマニアの一部、トランシルヴァニア地方一帯。
 北はバルト海沿岸、東はベラルーシ大半を接収。

 結構な国土、国力を有している様だが。
 同時に、敵も少なくないだろう。
 確かスイスで揉めていたな。
 フランス側、ロシア側にも神人の国があり、対立中とか。
 今、情勢はどうなっているのか。

 何しろ、テレビも無線も無い文化レベル。
 魔法で通信するにも、自軍の術士を送り込まきゃならん。
 幸い、流通は止まっていないんだ。
 旅商人でも見かけたら話を聞きたい。

 欲を言えば、リュドミラ公女辺りと接触できれば。
 いや、こいつは欲張り過ぎか。
 出会った所で、内情をペラペラしゃべるとも限らん。

 北門を出る。訓練中の兵士達を見掛けた。
 騎士団長らもシュテルンの動向は気になっているらしい。
 訓練や陣地構築といった備えを進めつつ。
 一方では、北に向かう冒険者に声を掛けている。

「いよう、結構騎兵が揃ったな。
 途中まで一緒に行こうぜ」

 サナトスの隊と再会。北へ向かうのか。
 俺達は北西へ折れるが、途中まで街道は一本だ。
 イェルマイン、マグダレーナの隊も来て隊列を組む。

 イェルマインとエリックら少年兵達。11名。
 マグダレーナとお姉さん騎兵隊。9名。

 サナトス、ロッシィと、お嬢様従者騎兵隊。7名。
 ルキュア、ステラ、アクア、ルーナ……
 ん、1人増えてる。新人はディミトラさん。
 やっぱりどこぞのお嬢様。縁が偏ってるな。

 次いで、俺達が続く。
 俺とサンドラ、アンヌ、マイナさんの司令部4人。
 少女&花人従者騎兵隊が36人。

 ジュス姉やリザードマンら馬車チームは除外して。
 それでも騎兵の数は、実に67名に上る。
 簡単に襲われそうもないのは良いんだが。
 代わりに警戒されそうだ。
 軍隊と当たると、かえって戦闘になるだろうか。

 まあ、途中までな。
 今はこの頼もしさに乗っかって行こう。



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