黒鷲の旅団
17日目(8)少女騎兵隊の邁進
「前方に敵、トロールとキマイラ!」
「総員、進めぇーっ!」
どうやら接敵した。キマイラ2体を含むモンスターの群れ。
マグダレーナ率いるお姉さん騎兵隊が先行する。
剣も使える弓騎兵、弓騎士マグダレーナ。
守護騎士ノインテリアが脇を固める。
他の人員は揃って前衛騎兵隊。
戦槌騎兵ヘートヴィヒ、槍斧騎兵フレンツヒェン。
剣盾騎兵ユディト、斧盾騎兵マルギット。
重装剣騎兵ベアトリーセは重甲冑に両手剣。
槍盾騎兵オルタンシアと、鉾盾騎兵エウジェニア。
楔型陣形の騎馬突撃で、勇ましく突っ込んで行く。
「討ち漏らしをやるぞ。怪我すんなよー?」
続くイェルマインと少年兵チーム。
こちらは前衛・後衛の混成部隊だ。
剣騎兵エリック、クロエ、バジレアが先行。
槍騎兵アレン、ジェイナが続く。
後衛は竜騎兵テオドール、ラウル、チキータ。
弓騎兵デュオニス、弩騎兵ジェイム。
最後に行く竜騎兵イェルマインは見守り役。
狙撃でフォロー。魔法でバフと治癒。
へらへらしている様で抜かりのない奴だ。
イェルマイン達の旗はキツネのマーク。
彼の異名が銀狐だという。
知恵者、参謀気質な彼らしい。
「負けてられません!」
「いい。負けとけ。それより右!来てんぞ!」
前に行こうとするルキュアを宥めつつ。
サナトス隊、雁行陣で右翼展開。
弩騎兵ステラ、弓騎兵アクア。
竜騎兵はルーナと新人ディミトラ。
「あー、上手くなってる」
「へへ、まあー褒めといてやるよー」
ゴブリンとトロールの隊、20体ばかりを撃滅。
振り返り、手を振るアクア。
マリナとイェンナが手を振り返している。
が……ちょっと油断大敵。
サナトスに通信。前。前を見ろ。森の奥。
あれはオーガと言ったか。デカいサルみたいな。
10体ばかり迫って来ている。
『おおう、ちょいヤベェ。どうする』
グレッグの言っていた奴をやろう。
前方、草原へ誘いつつ、1発くれてやって敵の左へ。
「援護! 援護しよう!」
「オヤジ! いつでも行けるぜ!」
子供達の間にも助けなきゃの声。
分かってる。各小隊、2列横隊。
まず第1銃士隊、前へ。順次射撃。
撃ったら左へ。サナトス達に続いて行け。
次、弓兵隊……よし行け。
弩兵隊用意。まだだ……よし。続いて。
「ふうん。装填する合間に次が行くんだ。
車掛り、いえ、包囲斜線陣かしら」
俺の傍ら、分析しているアンヌ。
この場合は両方かな。
騎馬が入って作戦の幅が広がった。
足を止めない包囲射撃。
オーガの群れがみるみる崩れて行く。
『大物! 抜けてんぞ!』
一回り大きいオーガが突進。
子供達を無視してこちらへ来る。
通信を察知して司令部を潰しに来た?
知能。あと魔力を察知する能力か何か。
1ランク上、群れのボス格だろうか。
避けている暇は無いな。
下馬。大太刀を鞘ごと肩に担ぐ。
アンヌは俺の後方で結界魔法を展開。
馬車を守る態勢だが、俺は障壁の外。
見せ場は譲るってかい。
リーチに入った出会い頭を叩く。
抜刀、居合い兜割り縦一閃。
音速剣で高速納刀。
左に降ろして返し刃、横一文字。
派生技。朧十文字だと。
新技、俺なんかでも出来るモンだな。
魔法と同じく、重要なのはイメージだろうか。
血しぶきを上げて仰け反って。
しかしオーガ、顔が左右に割れながらも反撃態勢。
浅いのは下がったのか、硬さで防いだか。
振り下ろして来る両手。俺は後退して避ける。
いいから死んどけ。もう一撃。
溶鉱、熱閃、創傷、焦熱、加速……裁断!
溶断魔法サーマルスラスト。
赤熱した金属ジェットを刃状に放つ。
熱と圧力の斬撃で、今度こそ真っ二つ。
肩から斜めに斬られ、上下がズレて崩れるオーガ。
伝承者、大魔道士マスターメイガス。
俺にはもう、嫌じゃー!の温泉爺さんといった印象だが。
裁断魔法。有難く使わせて貰った。
攻撃魔法に転用されるとは思ってなかっただろうけど。
見渡せば、戦況は一段落。
集合。隊列を組み直すぞ。
前方に集落が1つ見えて来た。
あれは……開拓村、って奴かな?
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