黒鷲の旅団
19日目(4)コロ鷲団が征く?
「あっ、お兄さん!」
「全軍、応射しつつ後退! 合流急げ!」
魔王様と別れて子供達の元へ。
ユッタとレーネを見つけたのだが、既に交戦中だった。
接敵、交戦前の通信は?
俺が聞き逃しただろうか。
「通信したんだよ。でも、繋がらなくて」
「私達の間では繋がります。でも、離れ過ぎるとダメみたいで」
通信阻害……結界か何かだろうか。
ジュス姉さん、そんな魔法ってあるのか?
「聞いた事は、無……あ、ああー、あれかな!
ほら、あの……昨日の! 地下の!」
地下……地下歓楽街の、通信阻害領域?
あれはスキルというより空間が……
いや、そういう空間を生み出す設備、か何かがあるのか。
その設備の元を、敵方が持ち出した可能性が出て来た。
距離があり過ぎる為か、完全には無効化出来ない様だが。
通信で連携を取る敵、を厄介と見ての準備。
戦闘が終了していたら、自分達にも邪魔になる。
それを機能させているのだ。
恐らくだが、首都はまだ陥落していない。
少し希望が見えた所で、状況確認。
敵は武装ゴブリンの群れ。
統率者はゴブリン。魔人は居ない。
魔王軍の招集に応じた、現地部族か何か。
こちらの陣容は、アンヌと骸骨騎士団が遊撃、攪乱。
花人隊が前衛、1列横隊で本陣前を防御。
子供達が下馬、分散しているのは釣り野伏か。
前に出ていたチームが、レーネの号令で戻って来る。
ハーピー隊は上空からアンヌを支援している様だ。
敵反応はジワジワ減っており、今の所は優勢。
優勢……は、良いとして。何だか人数が多いな。
野伏から戻って来た弓兵隊、新人の顔が混ざっている。
「あっ、あの……何か、来ちゃったから」
「守らなきゃと思ったんだよ。
追い返しても危ないかなって」
マリナとエメリナ。保護した判断は正しいけれども。
畑の世話を頼んだはずだが、どうした。
近場に居たダーシャ曰く、ウワサのコロ鷲団だから。
俺の事をまだ少し不審に思っていた新人達。
しかしマイナさんに諭されて、俺達がコロ鷲団だと知って。
半亜人や孤児、似た境遇の仲間が戦っている。
自分達も何かしなきゃと、後発の馬車に潜り込んだのか。
コロ鷲じゃなくて、黒鷲なー。
吟遊詩人、他国でまで適当に言い触らしてんじゃねーよ。
そして世話役のマイナさんは出し抜かれてしまったワケだ。
もっと探知とか監視とか、あれこれ教えなきゃいかんか。
ともあれ、来てしまったものは仕方がない。
追い返した所で、途中で敵の別動隊と当たる危険もある。
隊に組み込んでレベル上げだ。
体力や技量、応戦する力を身に付けさせよう。
隊列は、指導するマリナとフェドラが挟む様に新人隊。
フリーダ、リリヤ、ダーシャ、ルジェナ、マリッタ、アルメル。
武装はひとまず弓。花人達が作ってくれた。
合わないなら後で考えるとして、仮に第2弓兵隊。
後で隊長、牽引役を選定してやらないと。
後方からサンドラちゃんの魔法付与。
斉射行くよと索敵班エメリナの呼び掛け。
マリナ、フェドラの構えがお手本になる。
討ち漏らしにはマルカ、フレヤが追撃態勢。
ジェマは次の矢を用意して回っている。
構え……放て、の号令が出ない。
射線上に混戦。敵ゴブリン重戦士隊と味方の骸骨騎士団。
アンデッド、大丈夫だと分かっていても撃ち難い。
俺も手を貸そう。長弓複数射を用意。
付与。転移魔法第5位、リターン。
対象は自軍、骸骨騎士団だ。
当たっても死なない骸骨騎士団に俺の矢が飛ぶ。
転移魔法発動。自分の周囲に呼び寄せる。
ん、ちょっとゴブリンも混ざってた。
すかさず骸骨達が排除してくれる。
アンヌは。通信。アンヌ、左翼に向かって跳べ。
「開いた!」「今だ、一斉射!」
弓兵2個小隊の斉射。
付与魔法は燃料、爆薬、炎。
順次着火して爆炎が上がる。
討ち漏らしは弩兵隊、第2銃士隊が排除。
逃げ散る者は第1銃士隊が狙撃。
ゴブリン大将をイェンナのアルパインが撃ち抜いて。
残敵無し。まずは片付いたか。
「か、勝ったの? 勝った?」
「ふーっ、ふーっ……」
緊張から疲労の見える新人達。
気を抜くなよ、と言いたい所ではあるが。
気でも抜かせないと後が続かないか。
一息ついたら進軍を再開しよう。
方位は南。まだ首都には直行しない。
首都の籠城は続いていると思われる。
包囲網を突破するべく、外部戦力を集めたい。
まずはイェルマグ隊と合流してみよう。
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