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黒鷲の旅団
19日目(19)道を導かれ
「ああーい!」
「おうっ! ラケルたん、天才っ!」
首都ポータルから自宅へ。
ロビーに入るやナンダコレ。
ラケルがロンネフェルト伯爵と遊んでいた。
2人が興じているのは盤上遊戯。
タイトルは『ワールシュタット』だと。
チェスをより複雑化したみたいな代物らしい。
その複雑を複雑にしたみたいなゲームで。
ラケルは思わぬ才能を発揮した。
大人顔負けの戦法を披露して見せたという。
伯爵や執事クラウディオらも感心顔。
詰まる所、ラケル。
幼児退行しているが、知能は低くない。
ただ可哀想な、弱ってるばかりじゃない。
ラケルにはラケルの才能がある。
幸せにしてやれるだけの光明が見えた気がした。
ラケル、遊んで貰って良かったな。
「やーう」
ん、違う? 伯爵様を接待していた?
はは、そうかー……
お前ちゃんは大した奴だよ。
さて、公主軍と魔王軍の停戦協定。
後の食事会には俺も呼ばれているのだが。
今回は辞退したい。
魔力薬の飲み過ぎだ。
胃の具合がおかしい。
魔力残量ギリギリまで魔法を放出して。
魔力薬で回復して、また魔法を使う極限運用。
ゲームだと数字作業なんだがな。
腹に入れる現実が伴うと辛い。
「ハラグアイが危険地帯ね。
休んでたら良いわ。
私が代わりに行っといてあげる」
アンヌが代理を名乗り出てくれた。すまん。
さながら黒鷲団の外交窓口だな。
「ふふ。何それ。ちょっと良いわね。
そうだ。私の代わりにジュス姉構ってあげて。
私もやり過ぎちゃってて。
今、ちょっとイジけてるの」
何だって? 姉さんどこ行った。
腹痛を中和魔法で緩和しつつ。
俺はジュス姉さんを探す。
と、先に子供達が慰めている?
「元気出しなよー」
「あ、ほら、おっちゃん来たぞ」
「んー? ううー……ほっといて」
ジュス姉さん、いじいじメソメソ。
どうしたんだ。
マリナやフェドラが通訳してくれる。
魔人ジェニフェレーヌに虐められた件。
『怪力で作っては壊して忙しい奴』だとか。
『乳ばかりデカくて気が小さい』等。
更に『創造の魔人が子供だけは出来ない』と。
本人が気にしている所を狙ってグサグサと。
ジェニフェさんは口が悪いな。
加えて、戦闘はアンヌが活躍。
その張り切り過ぎで姉さんの出番が少なく。
他で気を回そうにも、誰かしら挟まって来る。
自分、居なくても良いじゃん、と。
段々寂しい気分になってしまった様だ。
居てくれて助かってるんだけどなあ……
だよね、とユッタ。
他の子達も頷くのだが。
姉さん、アンヌみたいになりたい?
「アンヌがキミの代わりをテキパキやってさ。
孫ちゃん達も、隊長さんとかって役目があって。
それに引き換え、ボクなんて強いだけじゃん。
強いって、そんなの獣でも出来るじゃん」
ジュス姉さん。
創造の魔人ジュスティアーヌの悩み。
強いだけなら獣か。
そう思えるのは文明人こそだな。
文明、で思い出したが、鍛冶の方は。
預けた神銀アダマンタイトはどうなった。
ジュス姉さんのパワー。何か進展とか……
と、ジュスが差し出したのは、針?
違う。細かい金属片。
これはアダマンタイトの欠片か?
フルパワーでこれっぽっち、と姉さん。
打っても曲がらない。
切り出そうにも削れない。
インゴットを叩きまくって。
やっと一片剥離したと。
姉さん、力不足を感じた。
しょげてしまった。
爺さんが外回りを頼んだのも、これかな。
気回しの気分転換か。
しかし……これ、面白いかも知れない。
トゥーリカ、ちょっとおいで。
俺のレイテルパラッシュを見本にする。
複製魔法。材料は神銀アダマンタイト片。
縫い針サイズの騎兵剣が出来上がる。
妖精さんに丁度良いサイズじゃなかろうか。
「え、え、くれるの?
やった! 私の武器だ!
アダマンタイトだって!
あははは!」
剣を持って俺の周りを跳び回るトゥーリカ。
何だか流れ星めいた物を連想した。
銘は小流星。タイニーミーティアとでも。
「トゥーリカの剣だって」
「キラキラしてる」
「いいなー」
みんな揃って物欲しげ。
そこでジュス姉さんに依頼したい。
銃士・弓弩兵隊と、アンヌ、サンドラまで。
騎兵剣を人数分。32本揃えて欲しい。
時間は掛かっても良い。
なるべく鍛造で頼む。
今は見習いでも良い。
黒鷲団の御用鍛冶師という事でどうか。
「わ、分かった。やってみるよ。
そうだね。創造の本分を全うしないと。
キミとゴニョゴニョ……も。
ちょっと興味あったりするんだけど」
それは……時間をくれ。
ちょっと考えさせてクダサイ。
遊びで関係を持つには親しくなり過ぎた。
俺自身、そんな遊び慣れた人間でもない。
神人と唯人という関係。
もっと距離を保つべきかも分からん。
気が変わるかも分からんけれども、今は。
それはそれとして。
ジュス姉さんに武器制作依頼。
レイテルパラッシュ。
爺さんの店の値段で7万5千。
32本で240万。ちょっとした特需だな。
しかし、まだ金はある。
大量の魔軍を巻き込んだ撃破報酬。
所持金が3千万超……
そこから2千万使って、別館をもう1件。
元奴隷兵達を泊めてやらないと。
部屋の不足は本館の空き部屋も活用しよう。
みんな、今日は戦闘ばかりで疲れただろう。
よく休んで、また明日、だ。
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