黒鷲の旅団 >20日目(3)並み居る鎧も踏み越えて


黒鷲の旅団
20日目(3)並み居る鎧も踏み越えて

「やったね!」
「マルカ達と冒険だって!」

 東区の教会にて。マルカ達の村出身の子供達。
 弓兵隊が立ち寄って、既にそういう風に伝わっていた。

 まあ、武器は持たせたままだし、狩りぐらいは手伝って貰うが。
 自衛といっても、あまりヤバい魔物は……
 いや、手伝わせてレベル上げた方が将来的には良いのか?
 戦力差の見極めや、引き際も教えてやらないと。

 一度は故郷の村を捨てた子供達だ。
 命の方が大事なのは分かっていると思うけれども。
 それでも、無茶はしない様にフォローしたい。

 他の村人達も、仕事はあったが下働き。
 とても自分の店や畑を持つ状態ではなかった様だ。
 移住には快く応じてくれた。
 馬車に非戦闘員を詰め込み、出発する。

 ゼールバッハ村長代理、暫定村長へ。
 農夫のグレゴールとタイタス。
 タイタスの娘リュシールも含め、農業経験者。
 この農業経験者というのが強みだ。

 作物は農耕魔法でも生産出来るのだが。
 しかし、農耕魔法は地力を消耗するらしい。
 同じ作物を作り続けると、消費魔力が増す。
 これは連作障害だろうかな。
 不足する栄養物質を魔力で補う形になる。

 膨大な魔力を注ぎ込めば、それでも不可能ではないが。
 しかして大勢の難民を養うには限度がある。
 農耕魔法も万能ではない、という事だ。

 村人達も、初回の収穫ぐらいまでは面倒を見るとして。
 後は、なるべく自分達でやって貰おう。

 収穫したとして、余剰は首都に運ぶ。
 あるいはまだ軌道に乗っていない新興開発地へ運ぶ。
 村出身は、道具屋のブシュラさんが居た。
 流通関係の指導役として期待したい。

 工作関係は鍛冶屋のデトレフが中心となる。
 あとは、元盗賊のツィアとリーチェ。
 まだ居たとは少々意外だが。
 2人してデトレフに懐いているらしい。
 何でもやると言うので、まあ期待しよう。

 戦闘が出来るのは、狩人のレイニさんと子供達。
 銃士、ジルケの姉アウドラ。弩兵はグレンとユーリ。
 弓兵、イヴェッタ、ポーラ、ロジーナ、テレサ。
 軍隊相手では心配だが、狩りをする程度なら問題無い。
 野生動物から食料を確保出来るだろう。

 加えて、グレンは木こりの息子。林業の心得がある。
 ユーリは地主の息子。読み書きや金勘定ぐらいは出来る。
 ロジーナとテレサは機織りの娘。家業の教育を受けていた。
 お嬢様イヴェッタ、木こりの娘のポーラはともかくだが。
 将来的に、選べる仕事に幅があるのは良い。

 そんな彼らを見ていて、うちの子達はどうだろう。
 ちょっと戦闘に特化し過ぎている様な気がする。
 勿論『強いだけの阿呆』を追い払う戦力は必要だとして。
 しかし、非戦時にも食って行けるスキルが必要だ。

 各自、将来やってみたい事なんてあるだろうか。
 領地経営の中で、何か興味を持たせられると良いが。

 まあ、うちの子達の将来はまた考えるとして。
 まず取り掛からなきゃならんのは集落。
 農村チームの方は、人材が充実している。
 手を入れて、少し人が増えれば何とかなるだろう。

 となると、心配なのは港町と鉱山町か。

 元奴隷兵達は一足先に、港町開発の計画地へ出発。
 護衛はガイゼル隊が請け負ってくれた。
 人手は農村チームより多いのだが。
 しかし、生活スキルが……どうだろう。
 漁業経験者は居ると思いたいが、詳しくは聞いていない。

 鉱山町に至っては、ゼロからの募集だ。
 食料ではない資源採集基地としての集落。
 急ぎではないが、人が来ていたら面倒を見てやらんと。

 当面の食料は用意があるので、取り掛かるべきは住居。
 農村の方が一段落したら、それぞれ様子を見に行こう。

 農村計画地へ向かいつつ、獣の狩猟。魔物の掃討。
 オオカミを、ボアを、ゴブリンとかを狩る。

 それと、魔王軍の置き土産というか、忘れ物というか。
 明らかに自然物でない魔物が、野生化している。

 リビングアーマー……の類だろうが、何だこれは。

 リビング・スケイルアーマー。
 ジャラジャラやかましくてウザい。

 リビング・フリューテッドアーマー。
 軽量化されており、妙に機敏。ウザい。

 リビング・ロリカゼグメンテータ。
 ローマ兵らしくファランクス陣形で防御。地味にウザい。

 リビング・耐爆スーツ……神人が持ち込んだ代物か?
 性能もウザいが、デザインも何かウザい。

 まあ、所詮は物質系モンスター。
 分解魔法でイチコロではあるのだが。
 こいつらの飼い主?はマニアか何かだろうか。
 方々から集めた、ご当地リビングアーマーみたいな。

 大将気取りの派手なリビング・パレードアーマーを粉砕。
 残りの奴が逃げ出すのは、追わないでおこう。
 ご主人様が回収に来るかも知れん。
 下手に全滅させて、変なフラグが立っても困る。

 また戻って来たら村人達が不安?
 後で分解魔法でも伝授するとしようか。

「ご主人、あっちー」
「板とか何かあったよー」

 上空より監視のハーピー隊。
 目的地らしい資材の山を見つけた様だ。
 まずは行ってみるとしよう。



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