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黒鷲の旅団
20日目(7)海へ行こうよ

「あっ、どうも。お邪魔してます」

 農村の中央、広場の様なスペース。
 皆の食事を用意している場に、フレスさんの姿があった。

「あっ、先生だ!」
「先生! 海は? 海、行ける?」

 誘ったのは子供達、授業を受けた新人チーム。
 早速懐いているのは良いとして。
 昼食だけでなく海まで誘っていたのか。

「だ、大丈夫です。行きますよー」

 にこにこと手を振るフレス先生。
 子供達に気を使ってくれている感。
 キャッキャと喜ぶ子供達。
 先生も忙しいだろうに、すいません。

「ホント大丈夫ですよ。
 本部の仕事はシャンタル達が引き受けてくれて。
 半日お休みを頂いて来ましたので」

 そういう事なら、折角だ。羽を伸ばして貰おう。
 普段から授業でお世話になっているフレスさん。
 子供達にも甘え過ぎない様に言っておかないと。

 まあ、まずは昼食の支度から。

 畑の外なら地力を消費しても大丈夫だろう。
 農耕魔法でコショウを生やして、製粉魔法で処理。
 錬成魔法からのソルトと併せて味付けに使おう。

「新魔法でしたよね、製粉魔法。
 お時間ありましたら」

 あ、そうだ。魔法特許。
 フレスさんに言われて思い出した。

 下ごしらえが済んだ所で、一息。
 メインのシチュー、続きの監督はマリナに任せる。
 ビシ!と敬礼するマリナ。
 臨時料理長、やる気満々だ。

 俺はフレスさんと魔法特許について。
 まずは特許申請していた断熱魔法と温熱魔法。
 生活魔法Cクラスに認定、と。

 次いで伝承料。売り上げ。
 Sクラスは温泉魔法が15件。
 Aクラスは氷花魔法を中心に58件。
 Bクラスは刻印とか窒息魔法で71件。
 Cクラスは耐電魔法とか22件。

 2日分だから結構な件数だ。金額にして2430万。
 魔法のマネーカードを渡して、入金をお願いする。
 販売件数からスキルポイントも166入る。
 これを割り振って、また新規の申請に掛かる。

 製粉魔法、重陽子爆発魔法、空間侵食魔法。
 指向性爆薬魔法、氷河魔法、火災魔法。
 あとアレか。解呪魔法。

 深淵魔法は既に存在しているらしい。
 ただ、文献上にしか存在しない古代魔法?
 何の気無しに編み出してしまったのだが。
 先人に無かった着想なんてあったかな。

 フレスさんに魔法レシピを説明してみる。
 暗黒、暗黒、暗黒、濃縮、強化、暗黒魔法。

 これかな、と挙げられたのは濃縮魔法。
 そうか。神人って、あまり生活魔法を使わないから。
 攻撃魔法と生活魔法の組み合わせ。
 他にも既出で未解明の領域があるとすれば、その辺かな。

 ……これ、一応要ります?
 繰り返し頷くフレスさん。

 深淵魔法、溶鉱・溶断魔法と併せて伝授しておく。
 錬金術師協会の秘術、というか神人ダイダロスさん作。
 収入にならずとも、対策の考案には役立つだろう。

「ごっはん、ごはんっ♪」
「ごはん〜、ごはんっ♪」

 鍋の蓋とお玉を鳴らして踊るティルア。
 後に続いているのはカリマとリリヤか。
 昼食が出来上がったのだろうかな。

 何やら得意げな顔のマリナが見える。
 味付けには自信ありと見た。

 昼食。メインは野菜たっぷりシチュー。
 オオカミ肉とボア肉の燻製ベーコン入り。

 おやつにはマイナさん作の窯焼きプリン。
 材料のタマゴはラケル養鶏団からの提供です。
 お世話の伯爵達も含め、あとでお土産を考えたい。

 昼食。昼食を取りながらスケジュールを説明する。
 午後は鉱山町の様子を見ながら通過。
 誰か来ている様なら、ひとまず食料だけ置いて行く。

 それから、午後は港町へ。
 村の防柵が早く仕上がったので、村の子達も連れて行きます。
 やったー!と歓声が上がる。反応が良いな。
 引率役のレイニさんも、ご一緒に。
 道を覚えたい道具屋ブシュラさんも同行する。

 そう言えば、先に行ったガイゼル達はどうしたか。
 通信してみる。通信魔法持ちはー……っと。
 魔女のベデリアかサスキアに繋がるか。
 通信は繋がって、しかし、いきなり謝られる。

『ああっ、ごめん旦那! 逃げられた!』

 逃げ……え、誰に?



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