黒鷲の旅団
20日目(16)雨天防衛
『パパさん、まだ〜? ご飯だよ〜?』
『ごはんっ、ごはんっ』
フェドラとカリマから通信。
夕食の支度が出来た様だが……ちょっと待って。
もう少ししたら行くから、先に食べていて。
子供達の各隊は順次、自宅へ帰還させた。
代わりに骸骨騎士団や吸血鬼達が出て来てくれている。
配置や装備の点検をし、見張りを引き継いでいく。
『おーい、こっちの準備なんだけど』
ジュス姉さんから通信。
ハミルトンの店の在庫が判明した。
バリスタ2門とデミカルバリン砲が2門。
投石機、トレビュシェット型のカタパルトが2台。
民間人の在庫にしては上々だろう。
バリスタが1門50万。デミカルバリン砲80万。
カタパルトが1台60万でのご提供。
相場より少しオマケしてくれているだろうか。
それぞれ2つずつ、全部で380万。
公主からの入金を待てない。
俺のポケットマネーで買い上げる。
赤地も赤字だが、易々と村を襲われても癪だ。
ちなみに……ゴールドのインゴット。
まだ換金出来ていません。
高価過ぎて、ドリスやブシュラでは買い取れない。
個人商店では全財産レベルの出費になってしまう。
後で公主とかに売りつけよう。
ジュス姉さんはそのまま店に居残る様子。
宿題になっている騎兵剣の量産に取り掛かるらしい。
必要なら通信で呼んでくれという。
姉さん引っ張り出すなら、余程の強敵だな。
そこまでの事態にならないと良いんだが。
兵装の移動はヘリヤ、シャンタルと協力。
重いので、一度浮遊魔法で浮かせて貰って。
然る後、転移魔法で村へ転送する。
設置場所は……
「バリスタはこちらへ」
「カタパルト、搬送引き継ぎ致す」
骸骨騎士団が場所を選定してくれていた。
北への街道を挟んで、左右、東西に1つずつ。
陣容は北を向いて左、西側にクラウスさんの隊。
同僚はヘルマン、ハーゲン、ボリス、ロドリグ、オレーグ。
反対、東側にはルドルフ氏の小隊。
ヴィクトル、キリル、オルランド、ピエトロ、ボニート。
街道から村への道を阻む中央陣地。
ここにはロンネフェルト伯爵と配下の吸血鬼達。
クラウディオ、ゼルマル、ペトラ……
と、もう少し増えている?
態度保留にしていた保守派の吸血鬼達か。
以前会ったゲルダ、リヒャルダ。
それともう1人はゲルダの妹、ツィーリア。
まだこちらを完全に信じたワケではないのだが。
しかし、伯爵の顔を立てるの体で、少しずつ参戦を開始。
監視半分だろうけど、人手が増えるのは助かる。
骸骨騎士団は精強。バラつきはあるがレベル50〜60。
吸血鬼達も強者揃い。低い者でもレベル80超。
個人差では無頼の半馬人などに遅れを取らないだろう。
ただ、夜目の利くラミア達は、雨の寒さで撤退中。
索敵能力として少し物寂しい……が、仕方ない。
アラクネやリザードマンも寒さは苦手。
ハーピーズは鳥目で夜間がダメ。
仕方ない。待機だ、待機。
魔物隊も大事な従者であり、得手不得手がある。
またの機会に活躍して貰おう。
「ごめんね、ご主人ちゃん」
「手厚いお気遣い、かたじけない」
「ホントは、もっとお役に立ちたいですー」
ネーラ、ライナス、セレスタ。あまり気にしないで。
花人隊、アンゼ達の方は大丈夫なのか。
頭の花が、ちょっと萎れて見える。
まだ頑張ると言っているが、無理しない様に。
「無理は貴公もだ。身体を冷やすぞ。
方針は、まず降伏勧告。然る後、迎撃で良いのだろう。
子供達も待っている。行ってやりたまえ」
指揮を引き継いでくれるロンネフェルト伯爵。
お気持ちはありがたいが、もう少し。
大砲や火薬周りに防水魔法を掛けて行かないと。
防水処理。陣地確認。
あとは、もう一度探知を……
不意に西側、骸骨騎士のHPゲージが2つ消えた。
反応自体はある。アンデッドだし死ぬ事もあるまいが。
通信。クラウス隊長、何か気付いていないか?
隊員2名、ボリスとロドリグの姿が見えない様だ。
通信にも返答が無い。何かあったかな。
探知、空間、解析……看破。
一瞬だけ赤反応が出て消えた?
少数だが、何かに入り込まれている。
クラウスさんに警戒を促す。
総指揮は伯爵に任せる。
俺はクラウディオと現地に向かう。
向かう途中、突然何かが視界を覆った。
僅かに認識できたのは刃。大型の刃物?
反射的に抜刀、打ち払う。
辛うじて弾いたのだが、重い。刀を折られた。
襲って来たのは小柄な人影。
背格好はゴブリンぐらいだが。
長い髪。老人めいたシワのある顔。
得物は斧。赤い目。赤い帽子。
こいつは……レッドキャップだ。
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