黒鷲の旅団
2日目(3)少女従者隊
〜何か捕まえちゃった〜

「こ、これ、勝ってるのかな」

 ウィンチェスターを構えたユッタの問い。
 勝ってる……と思う。多分。

 空間魔法と探知魔法の併用。
 3Dマップ表示と位置情報だ。
 敵を示す赤い光点が徐々に後退している。
 そうだな。押している。
 勝っている……らしいという状態だ。

 不意に、ユッタの身体が淡い光に包まれた。
 解析。ユッタ、レベル3。
 電脳内のログに表記がある。
 ユッタのレベルが上がりました、だ。
 戦闘に参加すれば、レベルは上がる?
 与ダメージで経験値配分がある……かも。

 サンドラちゃんの育成にも役立てたい。
 詳しく見れるかどうか。
 魔女の指南書から解析魔法を試す。
 義眼の簡易解析よりも精度が良い様だ。
 各種パラメータが数値化。
 経験値の量を示すバーも表示された。

 じっくり見ながら撃たせてみたい、が。
 敵側にも動き。
 弓兵が応射準備をしている。
 集結される前に数を減らしたい。

 狙撃、狙撃……ん?
 狙った敵が撃つ前に倒れた。
 フェドラが気付いた様だ。
 気遣い上手だったな。
 ユッタ、マリナも、狙えたら弓兵を狙おう。

 弾薬が減って来たが、矢束はまだある。
 俺も弓とか使ってみよう。
 ボウガン、ショートボウ。物足りない。
 当たるには当たるが、一撃では倒せんか。

「よう、やってんな」

 駆け込んで来た、さっきの男。ランカー。
 子供を使い捨てる傭兵……何の用か。

「そ、そう邪険にすんなよ。
 俺だって死なせたいワケじゃ。
 それよか、悪い。
 ちょっと預かっといてくれや」

 一稼ぎして来ると言うランカー。
 連れの少女兵を置いて行く。
 2人。名前はローダとテクラ。
 弓とボウガンを貸そう。
 使い方は分かるか?
 俺は拳銃での狙撃を試みる。

 狙撃、狙撃。子供達もまずまず当てている。
 ユッタ、レベル4へ。
 フェドラも4、マリナは3になる。
 ローダとテクラもレベルが2に上がった。

 と、撃ち過ぎたのか、気付かれた。
 敵の騎兵が数人向かって来た。

 子供達を林の奥に逃がす。俺は囮だ。
 閃光魔法……ん?
 揃って落馬した。簡単過ぎないか。
 スリットの狭い兜のせいかな。
 逆に凝視してしまったか。

 下っ端らしいのを射殺。
 偉そうなのは神経魔法で麻痺。
 更に精神魔法で眠らせる。

 お偉いさんだったら、例えば人質交渉。
 停戦や何かに使えるかも知れない。
 縄の代わりに死体のベルトを抜く。
 手足を縛るのに使う。

 やがて、敵が退いて行った。
 決着がついたのか。

「な、何をする! 放せ、無礼者っ!」
「公女様に触れるな! ケダモノめ!」

 気が付いたのか暴れる騎士達。
 兜を剥がすと3人とも女子だった。

 お付きと思しき2人がやかましい。
 精神魔法で眠らせる。

「ヒッ! ここここ殺したのですか!」

 取り乱す公女様。
 いや、殺してないから。
 振り返ると、子供達がソロソロと離れ……
 おい、どうした。

「な、なんかイケナイコトするんだよね」
「私達、見ない様にしてるから」

 ……ちょっと待って。

「まっまままま混ざれって言われても!」
「え、ええー? 上手く出来るかなぁ?」
「とうとうこんな日が……は、はうう」

 違う。そうじゃない。誤解だ。
 何もしやしないから。
 気を取り直し、公女様に素性を聞く。
 公国軍第11公女シャルロッテ。
 継承権はあるものの、席次は低いらしい。

 席次が低いとなると、交渉に使い難いし。
 連れて戻っても大した武勲にはならないか。

 ううーん……

 金目の物を貰うにしても、騎士の装備だ。
 転売すれば足が付くかも知れない。

 勝手に捕虜を逃がす。
 咎められるかも知れん。

 しかし殺した事にして。
 これも、今度は敵から睨まれかねない。
 仇討ちなんかが来ても、なぁ……

 結局の所、捕虜3人。
 何も取らずに解放した。

「ありがとうございます!
 このご恩は忘れません!」

 感激した様子の公女シャルロッテ。
 俺は熱烈に握手された。
 ああ、うん……忘れてくれて良いから。

「はっ、公女様!」
「誰が一体、このケダモノの犠牲に!」
「みんな綺麗な身体のままです」
「……え、ええー……?」

 目を覚ました騎士達と、公女様は帰途へ。
 軍に気付かれない様、林の中を行く様子。

 しかし、騎士2人……
 ちょっと残念そうなのは何でだ?



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