黒鷲の旅団
2日目(4)少女従者隊〜影の4人目〜

「よーう、無事かー?」

 味方の陣営に戻るとランカーの姿。
 捕虜を何人か取ったか。
 身代金、特別報酬を得るのだという。

 暴れるのでロープで縛りたい?
 輜重隊に聞くと、天幕にあるハズだと。
 ちょっと見て来ようか。

「あっ、ヤベ」

 輜重隊の天幕の中。
 何故かイェンナが居た。
 見ないと思ったらお前、火事場泥棒か。

「み、み、見逃して。
 なあ、頼むよ。何でもするから。
 お、お願い……お願いします。
 ホント棒打ちは勘弁して」

 涙目で訴えるぐらいなら、何故盗みなど。
 えー……お前、ちょっとそこ隠れてろ。

 外に出ると兵士達が走り回っている。
 不審な人影?
 見つけたら念入りに取り調べを……云々。

「侵入者が女だったら色々楽しめんのにな」
「ははっ、それだ!」
「女だと良いなー」

 兵士達が不穏。
 ストレスやら性欲やら溜まっている。
 あれらにイェンナを引き渡したくない。
 棒打ちどころじゃなくなるぞ。

 輜重隊に物資の申請をする。
 終わった後で悪いんだが……

 用途? ちょっと土産にな。
 来れなかった子が居て。
 輜重隊の隊長、ライヒマン。
 金払うなら良いと言ってくれた。

「イェンナちゃん!?」
「どこ行ってたのよ、もー」

 イェンナにメットを被せ少女兵に偽装。
 待っていたユッタ達と合流。
 給金を貰いに城門前に戻って……
 増えているな、と騎士団長。

 あー……この子はまぁ、良いんだ。
 始まる前に、怖くなって隠れてしまって。
 給料は仕方ないのだが。
 せめてもの土産にメットをやった。

 他の子達は給金を貰い、ほくほく顔。
 ほくほく顔……なのだが。
 ユッタはすぐに、金をマリナに差し出した。

 フェドラも続いて差し出そうと。
 事情を知らないイェンナが聞く。

「え、何でそれ、くれちゃうのさ」

「借金返さないと、だって。
 あの子、売られちゃうんだって」

「え、そ、そう……大変だな……」

 複雑そうな顔のイェンナ。
 彼女にも話を聞いてみる。
 盗賊の集団に所属。
 どうやら上納金が要るらしい。
 こっちも払わないとどうなるか。

「あっ、じゃ、じゃあ。
 半分イェンナちゃんに」

「だ、ダメだろ!
 フェドラだって金要んじゃん」

「でも……私はすぐじゃなくても……」

 どっちも助けたい所だ。
 俺からマリナとイェンナに5万ずつ出す。

「え、そ、そんな、貰えねーよ。
 さっきだって助けてくれてんのに」

 タダとは言わん。お給料だ。
 また廃品拾い手伝ってくれ。

 午後は約束がある。
 今日は手短に死体剥ぎをする。
 輜重隊から荷車を借りて来よう。

 俺の収穫。曲刀シャムシール。
 細剣レイピア。両手剣ツヴァイハンダー。
 片手斧ハンドアックス。
 槍のフラメアも貰っておく。

「おっちゃん、見て! 変な剣があった!」

 イェンナが頑張って見つけたのは刀。
 いや、短いから小太刀か。
『小刀』カテゴリらしい。

 くれるというなら貰うが……どうする?
 刀の類は少々値が張る。
 つまり、売ると高い。

「え、う……い、いーいよ。
 恩返しだよ、恩返し」

 悪いな。大事に使わせて貰う。

 弓とボウガンを出し入れして気付いた。
 神人の装備は種別毎にキープ出来る。
 キープすると瞬時に出し入れ可能。

 種類の違う武器を同時ストックする。
 取り替えながら戦いやすい。
 勿論、熟練するには絞った方が良いのだが。

 ちなみに短剣二刀流、ダガーは短剣。
 スティレットは刺突短剣カテゴリになる。
 折れやすい刺突短剣は扱いが難しい。
 小刀の方が使い易いだろうか。

「あっ、じゃあ、私も恩返しする!」
「私も、私もー!」

 マリナやフェドラも張り切ってしまった。
 ユッタは……と、既に黙々。
 折角だから何か受け取ってやらないと。
 何かあるかな?

「うんしょ、うんしょー……
 これ、どうかなー?」

 フェドラが引き摺って持って来た長物。
 何これ……ピッケル? 解析魔法。
 ルツェルンハンマーなる戦槌だと。

「あっ……ああーん、被ったぁー」

「被ってない!
 マリナちゃん被ってないよ!」

 鍛冶屋の孫ユッタ、解説。
 マリナの持って来たのは槍斧ハルバード。
 これは戦槌と違う。

 ちなみにユッタが持ってるのは長刀。
 グレイブではなくクト・ド・ブレシェ?

 イェンナも丸盾を抱えて来た。
 ありがたく頂戴する。
 あとはお前達の取り分にしよう。
 俺が貰う分以外は自由に売ってよし。

 ぴょいぴょい跳ねて喜ぶ子供達。
 取り分が出来て嬉しいのか。
 俺が満足したのが嬉しいのだろうか。



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