黒鷲の旅団
2日目(6)森デートの散々な結末

「上げよう!
 も、 も、もと、レベル上げよう!」

 すっかり上機嫌だな。
 やる気満々サンドラちゃん。
 育て甲斐のある生徒で俺も嬉しい。
 この調子で修業を続ける。

 ゴブリンにタール掛けて着火。
 水を掛けて雷、感電死狙い。
 サンドラ、レベル3に至る。

 ゴブリンに雷撃。撃破。ナイスヒット。
 褒めると頬を赤らめ、むふっと笑う。
 可愛い可愛い。

 オオカミの群れに……これは無理か。
 俺が二丁拳銃で排除する。

「ふ、ふひひ、2人なら、む、無敵……!」

 無敵は言い過ぎだが、良い調子だ。
 阻害を掛ければサンドラが片付ける。
 俺も多少はレベルが上がった。
 ゴブリン戦士と渡り合える様に。

 意気揚々と、しかし慎重に行こう。
 と、サンドラちゃん。
 小声でムリムリ言いながら戻って来る。

 ……どうした。前方に。
 水場にリザードマンの群れか。
 ゴブリンよりデカくて強そうだが。
 閃光魔法で怯ませるから、雷を。
 リザードマン、感電して全滅。
 魚まで浮いて来た。

「ふぉおおおお! しゅ、しゅげぃ!」

 水で繋がっていた所に、雷が通った。
 タールに火をつけたのだって、そう。
 使い方を組み立てて効果を上げる。

 自然現象、化学反応。
 魔法に応用出来る知識は少なくない。
 魔法使いだから科学なんて、と言わず。
 何でも自分の足しにして行くと良い。

「べべ、勉強になりましゅ」

 開けた草原。敵がいればすぐ分かる。
 目の届く範囲を片っ端から射殺。
 安全を確保して……
 さて、次は薬草を探そう。

 俺も初期リストから採取スキルを取る。
 一緒になって薬草を探す。
 鑑定スキルが品種を。
 目利きスキルが状態の良さを示す。
 集まった所でサンドラちゃんへ。
 持参した鍋で掻き混ぜ……

 失敗。ボフンと黒い煙が上がった。

「う、うっ……うにゃあああん!」

 あー、泣くな泣くな。
 上手く行くまで練習しよう。
 もっと状態の良い物を探してみよう。

 奥地へ。今度こそ意気揚々なサンドラ。
 が、しかし硬直した。

 前方。森の木々よりデカい一つ目巨人。
 あれがウワサの賞金首か。
 俺としても、どう攻めた物か悩む相手だが。

 巨人の足元。
 追われている子供が4人。
 あれはユッタ達か?
 見てみなければと言ったからか。
 自分達で見に来てしまった。

 駆け出そうとする俺だが。
 ガクンと引っ張られる。
 サンドラが上着の裾を掴んでいる。

「やだ……やだやだ! 行っちゃ、やだ!」

 サンドラ、落ち着いて。
 俺が囮になる。お前は子供達を……

 イヤイヤと首を横に振りサンドラ。
 ごめんな。お前も大事なんだが。
 子供達も放っておけない。

 狙撃。頭に命中。怒って振り返る。
 あえて目を潰さない。
 変に暴れられると子供が危ない。
 連射しつつ、サンドラと離れる様に走る。

 俺が引き付ける!
 奴の視界から出ろ! 横へ、背後へ!

「お兄さん!? ごめんなさい!」
「むむむむ無理すんなよー!?」

 引き離した上で、閃光魔法。
 毒と神経麻痺を追加。
 片足を狙って連撃。
 厚い皮の弾力がウザいな。
 凍結魔法。凍ったら砕けないか。

 閃光が切れた。
 至近、目玉に二丁拳銃。
 サイクロプス、仰向けに転倒。
 早く死ねよと二刀流。
 刃を目玉に叩き付ける。

 この目玉はどういう構造だ。
 瞬く間に刀の刃がボロボロになって来た。
 レイピア……徹らん。折れる。

 鈍重に、しかし動き出すサイクロプス。
 まだ動くのか。痛覚が鈍いのか?

 殴りつけられる。咄嗟に両手剣でガード。
 ああ、くそ、曲がっちまった。
 骨が軋むのには治癒魔法だが。
 折れた剣を直す暇はない。次の武器を。

 と、不覚にも足を掴まれた。
 噛み殺す気か? 持ち上げられる。
 られながら目玉にフラメアを投げて刺す。

 雷魔法を……と、掴まれたまま暴れられ。
 魔法を放とうにも集中できない。

 そんな折、視界の端。
 意を決したサンドラが走って来る。
 今だ、撃て! 俺ごと撃て!

「うにゃああ! お兄しゃんを離せ!
 離せええええーっ!!」

 サンドラの雷魔法。
 これがサイクロの目玉の槍を直撃。
 サイクロプスは倒れるのだが。
 俺も感電。意識が……



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