黒鷲の旅団
2日目(7)大魔女フレスヴェーナの一派
「1人で無茶すんなって言っただろー?」
「うにゃあーん うにゃああーん!!」
「だから泣くなって。まだ生きてるよ」
「丈夫な神人さんで良かったねぇ」
気が付くと、どこかのベッドの上。
周囲に複数の女性の声。
泣いているのはサンドラか。
子供達は、サンドラは無事だったろうか。
えー……サンドラ。
サンドラちゃん。おーい。
呼ぶと気が付いた。
涙と鼻水だらけの顔で駆け寄って来た。
泣くな泣くな。うりうりうり。
頭を撫でてやると、滂沱。
安心したのかな。
泣くのが止まらなくなってしまった。
それから、サンドラの周り。
見渡す限りの魔女。
お仲間なのは見れば分かるが。
魔女協会所属の魔女達。
大魔女フレスヴェーナの一派だという。
大魔女フレスヴェーナと名乗る妙齢の女性。
遠見の魔法で一部始終見ていたらしく。
末の弟子を保護した礼やら。
助けに来るのが遅れた謝罪やら。
そうだ、サンドラの試験は……
材料は集められたのか?
サンドラちゃんは首を横に振る。
今回は昇進を見送りたい。
もっと上達したい。
まだちゃんとした魔女だと言えない。
魔法は使える様になった。
上手く使える様に頑張る。
次こそちゃんと助けるから、か……
えっ使える?と声が上がり。
魔女達が何人か解析魔法。
俺も見たいな。サンドラちゃん。
サイクロにトドメを刺した。
レベル6に上昇。
魔力値が11、とうとう2桁に突入か。
レベル1つ毎に魔力2。
あまり良い伸びでも無さそうだが。
それでも、育ってんじゃん!と先輩方。
大魔女様など感涙。
不出来な子がようやく、と。
また一緒に、修業にでも行こうな。
繰り返し頷くサンドラちゃん。
「本当に、お世話をして頂いて。
私としても、何かお礼がしたいのですが」
大魔女様、完全に保護者の顔。
お姉さんというか、お母さんというか。
他の子達は……と、部屋の隅で泣いていた。
「うえええん! 良かったようううう!」
「うう、ごめんよ!
あたし見に行こうなんて言ったから!」
「生きてた!
ああ、生きてたああ〜!」
「私のせいだ、私のせいだぁ……!」
俺の心配を……
どうやら怪我は無さそうかな。
何人か迎えが来ている。
「お前に何かあったら!
わしは、わしは……!」
ユッタに怒るやら泣くやら。
ユッタの祖父ハミルトン。
「借金なんかいいんだよ!
お前を売ったりするもんかい!」
マリナを抱きしめている母親。
娼婦のベラさん。
借金もあるが、愛情もある女性らしい。
利息って? 明日までに残り50万。
ベラさんの稼ぎの貯金。
ユッタ達もお金を集めて。
しかしあと10万。
俺が……と、流石に貰えないと言われた。
それなら大魔女様、お願いが。
サイクロの牙や何か素材。
買い取り額を集めて10万にならないか。
涙液や骨、爪なども合わせればと。
どうにかこれの了承を得る。
サイクロプス素材の売り上げ。
これを子供らの取り分とする。
誘い出した手柄、正当な分け前だ。
俺は賞金首の、賞金の方を貰うから。
礼代わりに、ハミルトンは武器の修繕を。
痛んだ武器を預かってくれる。
ベラさんも、いつでもサービスすると。
……はい、覚えておきます。
……イマハイイデス。
正直、反応に困るんだけれども。
少し休んで、痺れも治まって来た。
そのまま泊って行けと言われるが。
ここは丁重に断ろう。
魔女協会、女所帯。
男を入れては不安もあるだろう。
若い魔女達がソワソワ。
他派閥と思しき先輩魔女さん達が訝しげ。
風紀を乱しても悪い。
魔女協会に帰る事にしたサンドラ。
付き添いの大魔女様。
一緒に荷物を取りに酒場へ。
「しゅ、しゅごい強いの!
銃で、ぱぱぱーって。
魔法も、ちゅ、ちゅどーん!」
口下手なりにサンドラちゃん。
大魔女様に俺の腕前をアピール。
まだまだ修行中だよ。
ちゅどーんって何だ。
帰り道の途中、何やら明るい区画が……
サンドラ曰く、ブラックマーケット。
怪しげな露店の並ぶ市場。
ここで手に入らない物は無いとも言われる。
勿論、金やリスクを必要とするのだが。
サンドラが少し見てみたいと言う。
大魔女様も案内してくれると。
それなら少し寄ってみよう。
前へ
/黒鷲の旅団トップへ
/次へ
|