黒鷲の旅団
21日目(4)フェドラちゃんは災害級?
「こ、こらー、待ちなさーい!」
「ぎゃー、怒った!」
「ぎゃはははは! 逃っげろぉー!」
追い掛けているのはレーネ。
逃げ回るのはティルアとツェンタ。
まったく、仲が良いのか悪いのか。
戻って来た子供達、集合。本日の予定を話し合った。
足りない物を補おう、という話を持ち掛けて。
俺も色々考えたが、まずは子供達の意見を聞きたい。
そこで、何が足りないと思うか聞いてみたんだが。
ティルア、爆弾発言。
レー姉ちゃんにはオッパイが足りない。
思わず相槌を打ったツェンタ諸共、追い回される事態に。
あ、捕まった。レーネが2人を捕らえた。
しかし乱暴にはせず、くすぐり攻撃か。
脇腹をコショコショされて、身をよじっている。
まあ、総合的に言って仲は良いんだろう。
おーい、そろそろ戻っておいで。
真面目な話をするぞー。
「えっと、シゲキを与えると良いんだっけ?」
「赤ちゃんが出来ると大きくなるんだよー」
マリナ、フェドラ。その話を真面目にするんかい。
「フェド姉、赤ちゃん居ないだろ?」
「居ないよー」
「じゃあ関係無くね?」
「あれー? ホントだー」
マルカの分析。首を傾げるフェドラ。
マルカもなかなか理論立てて考える様になったものだが。
この件は色んな要因があるから、断じるのは気が早いかな。
個性とか、ホルモンバランスの変化だとか……
赤ちゃんが、の件は、確か概ね本当だと思ったが。
「え、じゃあ、つまり、まだ大きくなるって」
「超ヤベェにゃ。災害級だにゃ」
フレヤとジェマ。災害って。
それは知ってる言葉で一番大袈裟なのを選んでるのか?
「そこへ行くと、レー姉さんは超平和にゃ」
「ちょっと、ジェマさーん?」
「災害は無いよねー。コショコショの刑だぁ―」
「にゃっ!? 冗談にゃて! にゃっ、にゃーっ!」
ジェマを追い回すレーネとフェドラ。
またじゃれ合いが始まってしまった。
本気で怒ってないっぽい辺り、ホント仲良いな。
「おっちゃんは大きいのと小さいの、どっち好きー?」
カーチャの問い。俺か。
俺は、えー、胸の大小は重視しません。
優しいお姉さん、お母さんになってくれたらと思うよ。
……みんな黙っちゃった。
黙ったけれども、視線は全部集まって来ていて。
何だこれ。こっちが不安になるんだけれども。
えー、あー、何だ。話題を変えよう。
他に何か、必要だと思う物は。
「た、足りてる。だいじょぶ」
「大丈夫だよ。困ってないよ」
サンドラ、ペトリナ。ちょっと遠慮してないか?
まあ、何とかやって来れては居る。
頑張りを認められたい、という一面もあるとは思うが。
じゃあ、もっとあれば良いのに、と思う物。
「あのね、えーと……あいじょー?」
カリマ……ごめんなー。構われ足りないか。
よしよしよしよし。なでなでなでなで。
人数は増えたが、1人1人疎かにしたくないな。
カリマを構っていると、フェドラやアンヌが後ろに並ぶ。
お姉さん役が先に並ぶのは、気遣いだな。
遠慮がちな子も並びやすい様に。
モジモジしているペトリナやフィリッパ。
躊躇って、俺と目が合って……良いよ。順番な。
頷くと嬉しそうに寄って来る。
なでなでしながら、他に何かあれば言ってみて。
銃士チームからは、みんなに新型の銃が欲しい。
そうだな。後で見に行こうか。
内政の経費は公主が出すと言っていた。
昨日立て替えた分を請求して、購入資金にしよう。
マルカから、剣はどうなったか。
ジュス姉さんに発注した、騎兵剣レイテルパラッシュ。
ユッタが言うには、数本なら出来上がったとか。
こちらも後で寄ってみよう。
俺も傷んだ剣とか修理に出したい。
剣を持たせるに当たっては、稽古も必要か。
マルカやレーネは心得があるにしても。
それ以外では近接戦の経験が皆無の子も多い。
ヘルヴィやヘレヴィでも長剣類は経験不足。
いざという時に使えないでは困る。
どこで教わって……俺からが良いというマルカ。
そうか。しかし、俺の剣はまともな流派じゃないからなあ。
俺の出自は高度電脳社会。
基本的な動作や経験はデータ化されている。
それらを機械を介して脳にインストールする。
特に俺の場合、使いそうな技だけ切り貼りしている感。
流派としてキチンと体系化されていない。
まあ、それでも、基礎動作なんかは教えられると思うが。
俺は俺で、一度学び直した方が良いかも知れない。
……なでなでは、みんな行き渡った?
それでは、本日の予定。
まず俺がひとっ走り、公主から立て替え金を回収する。
その後また買い出しに回ろう。
冒険や開拓地の見回りは午後からかな。
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