黒鷲の旅団
22日目(1)モニモニとグネグネ
「おや、旦那。お早いですなあ」
早朝、馬商人ゴドフレードの所へ。
昨日手配した軍馬を受け取りに出向いた。
支払いは済ませてあるので、受け取りだけ。
朝早いのは、単に夢見が悪くて起きてしまった。
しかし、早過ぎだったかな。
馬が少し足りない。これから十数頭届くのだと。
今居るのを眺めながら、少し待たせて貰おう。
「えくちっ! ううー、ちょと寒い」
「パパさんダンネツして、ダンネツ」
はいはい。断熱・温熱魔法。
もうちょっと日が昇ると良いんだがな。
同行者はカーチャ、ノイエ、フェドラ。
元教会孤児達は朝が早い。
寒かったら屋敷に戻るか? 揃って首を横に振る。
子供達の表情を見るに、俺の方が心配されている感。
俺が凹んでいるのを聞いたか察したか。
そんな心配しなくても、フラッとどっか行ったりしないから。
「あっ、昨日の」
「フェリ君だー。えへへへー」
「あっ、う……あ、ああーもー」
飼い葉の桶を持ったフェリクス。
フェドラと目が合って、何か反応している。
……フェドラちゃん、昨日何かした?
「されただけだよー」
んん? ……そうか。よし。フェリクス君。
詳しく話を聞かせて貰おう嫌とは言わせないよフフフフ。
「怖ッ! 違う、俺じゃなくて!
もう1人のちっこいのが、あの、あのそれを」
「アンヌちゃんがね、私のおっぱいをモニモニして来て。
それをフェリ君がじーって見てて。
そのフェリ君を見たレーネちゃんが、ジトーって」
「ああっ、それだよ、もー!
お嬢さんに嫌われた!
絶対スケベな奴だって思われた、あああー!」
フェリクス、頭を抱えてグネグネ。
アンヌはペトちゃんの意を汲んだのだろうかな。
大事なレーネちゃんに近付く男にハニートラップを。
友情というより、アンヌの悪戯好きが発端かも知れない。
「だだだってこんな、デカ、きょっ……ご立派な物!
誰だって見ちゃうだろ、そんなの!」
言葉選びが苦しいフェリクス。ご立派って。
もう、それ、何と呼んでもドツボな気がする。
「わかるぅー」
「うんうん、分かる分かる」
俺よりもカーチャやノイエが同意してしまった。
そりゃ、女性視点でも思わず見ちゃうかもしれないが。
それでも、あんまりジロジロ見たらダメだろうよ。
「パパさんは幾ら見ても良いんだよー? チラッチラッ」
フェドラちゃんは胸元を開かない。
叱られてもデレデレっと笑うフェドラ。
異性として意識されるのが嬉しいのだろうか。
普段からお姉さんぶったりしている。
早く大人の女になりたいお年頃か。
まあ、うん、意識しちゃうけど。ダメだよー?
と、強く叱れない俺も、無意識に幻惑されているだろうか。
無邪気可愛い笑顔を向けられると、つい甘くしてしまう。
それでいて体型は妖艶めいて来ているから、何かと悩ましい。
いっぱい食べた分が胸や尻に集中するのは種族特性か?
だからって食を減らせとは言い難いけれども。
それで、えー、レーネとフェリクスだが。
ひとまずは距離を保って貰うしかないかなあ。
ペトちゃんに目を付けられない程度に。
どの位が適正なのかは、よく分からんけれども。
節度ある健全な交流をする分には、俺からとやかく言うまい。
うちの子達に友達が、気にかけてくれる人が増える。
それ自体は喜ばしい事のハズだ。
ペトちゃんには、そう噛みつかん様に言っておくから。
今後も、程々にでも気にかけてやってくれ。
色恋めいた話は、フェリクスがもっと一人前の男になって。
ああ、でも、功を焦って戦働きとかは止めとけよ?
俺も成り上がりだから強くは言えないが。
それで、フェリクスが大成したとして。
それでも、最後に決めるのはレーネ自身だろう。
そこら辺は覚悟しておいて貰う。
「あんたは……旦那さんは、俺を、馬鹿にしないんだな。
平民でも対等に、公平に扱ってくれて」
フェリクス君。対等はともかく、公平は自信が無いぞ。
他人と、うちの子達なら、うちの子達を贔屓してしまう。
王侯貴族さえよりも、うちの可愛い子供達で。
その次が、うちの子の友達になるだろう。
知らない王様よりは、お前さんを優先するかも知れない。
「……分かった。俺も貴族は嫌いだけど。
旦那の為の仕事は手を抜かない事にしとく」
ありがとう。そうしてくれ。
と、追加の馬が到着した様子。
受け取りを済ませて帰ろう。
「大きいのが好きなフェリ君、またねー」
「じゃーな、大きいのが好きなフェリクス〜」
「だっ、ば、そりゃ、好きだけど、そんな大声で言うな!」
フェドラとカーチャ、あんまりからかうんじゃありません。
子供達を促しつつ帰途に就く。
思うに、公平なのはフェリクスの方だな。
亜人種とか半魔人とか気にしていない風。
普段から馬とか、人間以外も友達なんだろうかな。
スケベはともかく悪い奴ではないと思う。
さて、腹が減った。早く帰ろう。
マイナさん達が朝食の支度をしてくれているだろう。
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