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黒鷲の旅団
22日目(17)見上げられて
「ダメかな。難しい?」
うーん……善処はするが。
ちょっと即答しかねるな。
イェルマイン隊、合流。
早々にエリック少年から相談を受けた。
相談。北区や南区の孤児達。
彼らも仲間に入れられないか。
フィンやテッド、グンター達か。
彼らもまた生活に困っている。
戦況は、首都近辺では停滞中。
戦働きもお勧め出来る物ではないが。
今、それすら無い。
冒険者の仕事がしたい。
冒険者になるには大人の助けが要る。
まず、冒険者ギルドの規約。
子供が子供だけで冒険者登録は出来ない。
貧しさ故に子供が危険なフィールドへ出る。
それ自体は、確かに自殺行為だ。
体格は子供な上に、貧しくて装備も貧弱。
そして周りには野盗やモンスター。
遅かれ早かれ命を落とすだろう。
ギルドはそれを防ぎたい……
と、お題目を掲げている。
しかし、子供だから貧窮者に仕事を与えない。
それはそれで死なせる可能性が出て来る。
単純に飢えて死ぬかも知れない。
黙って自分達だけで行ってしまうかも。
素材はギルドが買い取らなくても良い。
冒険者に直接売るだけだ。
割安になっても何でも。
今日、今、食う金が要る。
あるいは地下に潜る。
非合法の仕事に手を染める。
真っ当な仕事を貰えない。
そのせいで危険な事をする。
盗賊ギルドの下っ端をしていたイェンナ。
戦場跡で死体剥ぎをしていたユッタ達。
俺達にとっても他人事ではない話だ。
それに、冒険者でないのなら。
ギルドの記録にも残らない。
囮にされて死んだ所で、誰にも分らない。
下層区の孤児達など戸籍もアヤフヤだ。
貧しい子供が悪い大人に唆される。
稼がせてやるとか騙される。
囮にされたり、弾避けにされたり。
あるいは前を歩かされて。
代わりに罠を踏まされたりして。
だから、冒険者登録しなくたって。
結局冒険して死ぬじゃないか。
という想定自体。
冒険者ギルドも考えなかったワケじゃない。
その折衷案の1つとして、だ。
信用に足る大人の同伴が確認出来る場合のみ。
各支部の判断により。
子供でも無等級の認定証が発行される、と。
信用に足る大人……で、俺か。
面倒を見てやる。
それ自体は吝かではないが。
既に大勢引き連れている状態だ。
俺の処理能力を超えてしまう可能性がある。
もしかしたら取り零すのではないか。
子供達の、何より、その命を。
貧しくて学が無い。
だからって、みんな兵隊にならなくても。
他の仕事を見繕ってやる方が良いのでは。
しかし、エリックの話によると。
グンター達も冒険者になりたいと言っている。
何故ならエリック達が名を上げているから。
孤児でも大成出来る……
出来そうな気配を見せている。
それは後に続く者達に希望を与えたが。
同時に、無鉄砲な勇気に火をつけてしまった。
そこに責任を感じているのか。
エリック、他人に相談したのは偉かったな。
熱に浮かされる方も経験していたんだったか。
イェンナの仕送りに張り合って。
夜中に死体剥ぎに行って、遭難して。
「あ、あ、いや、あの時は……」
照れるエリック。
恥ずかしがらなくて良い。
失敗の数だけマトモな大人になれる物だ。
乗り越えたお前達は有望な方だろう。
それはそれとして。
フィン達をどうするか。
食うに困っているのではあろう。
他の仕事を斡旋したい所が。
負けられないなどと思っている場合。
下手に断るのも不安だ。
自分達だけで冒険に出て行ってしまう。
冒険自体、やろうと思えば出来るのだ。
ギルドの登録が無かろうと。
そして命を落としてしまう……
それは、嫌だなあ。
イェルマインおじさんには相談したのか?
したけど難色を示されたという。
まずは俺に相談してみろと言われた様だ。
おーい、イェロマインおじさんよ。
振り返ると、手振りでスンマセンのポーズ。
「いや、ホント面目無いでんですが
通る度、街の子達が見上げて来るんすよ。
これ全部ついて来ちまったら怖いなって。
勿論、エリック坊やの友達だ。
あっしも何とかしたい。
でも、任せろーなんて。
言い切るのも怖くなっちまいまして」
うん、まあ……言いたい事は分かる。
増え続けているのは確かに懸念事項だ。
戦乱は続いている。
貧窮者は今後も出て来るだろう。
どこかで線を引かなければならない……
ならないが。
バッサリ切り捨てるのも胸が痛む。
「あ、あの、私達も教えるよ?」
「私達だって覚えて来ました。
手が掛からなくなって来たつもりです」
ユッタとレーネ。
協力してくれる様子。
他の子達も相談を始めている。
レーネは男子を敬遠していたと思ったが。
一緒に住むのでなければ大丈夫?
大丈夫というか、気を使っていないか。
「ホント大丈夫ですから。
私より、おじさまが心配で。
どうか思う様になさってください」
やっぱり気を使われている様な。
いや、気を使わせてしまっている、か。
このまま増え続けては厳しい、が。
今はまだ、手の届く範囲、か。
先に育った子供達が助けてくれる。
まだ。もう少しなら。
……フィン達には声を掛けてみよう。
その先はまた考えなきゃならんけれども。
あとはキャスティーナさんとか。
他の大人も巻き込めれば良いが。
夕食には戻るらしいと聞いている。
今はまた戦闘中かな……
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