黒鷲の旅団 >23日目(20)くるくるにまにま、日は傾いて


黒鷲の旅団
23日目(20)くるくるにまにま、日は傾いて

「お帰りなさいませー、なんってね」
「ませませ、ませませ〜♪」

 メイド服で出て来たのはティルアとノイエ?
 その服はベラさんに借りたのか。
 くるくると横に回って、スカートの裾を摘まんでお辞儀。
 これは淑女勉強の成果を見せたいのだろうか。

「お、あ、あの……おっ、お帰り……」

 続いて出て来たマルカもメイド服だが、顔が真っ赤。
 スカートのヒラヒラが落ち着かない。照れ臭い。
 それも1つの女の子らしさなのかもしれない。
 男だとか女だとかを意識しているワケだ。
 何か強制する事でもないが、マルカも乙女だなあ。

 それはともかく……集合。
 子供達の報告も聞くとして。
 まずは状況説明だ。戦況が悪化している。

 シュテルン公王が死んで、公国は分裂必至。
 魔王バティスタン軍とは休戦したが、関係は悪化した。
 いつまた戦端が開かれてもおかしくない。
 イーディス公主がどう出るかは、まだ相談中だが。
 戦争は激化していくだろうと思われる。

「ゲキカって、どうなるんだっけ?」
「えー。兵隊さんが増える、とか」

 ユッタ、そうだ。国内外から兵隊が集められるだろう。
 ガラの悪いゴロツキなんかも入ってくるかもしれない。
 戦争捕虜を狙って、奴隷商人なんかも出て来るだろう。

 暗い時間に出歩くのは控えよう。
 出歩く時は必ず複数人で。行き先を告げてから。
 探知魔法を徹底して、周囲に敵意が無いかチェック。
 何かあったら子供達だけで動かない。必ず通信を。

「また過保護なってる」
「ふふー」「へっへへ」

 にまにまして聞いている子が多い様だ。
 誘拐とか笑い事じゃないからな。
 みんな気を付けておくれな。

「あっ、やべえ。マリナとレー姉ちゃん」
「あ、そうだよ。キーア達と馬を見に行ったんだ」

 声を上げたのはイェンナとツェンタ。
 マリナ達が外出しているらしい。
 新人キーア、ティリー、リューリの軍馬を手配中。

 まあ、広く徴兵するにはまだ間があるだろうし。
 先輩2人ついているなら大丈夫とは思うが……
 そうだな。様子を見に行ってやった方が喜ぶだろうか。
 まだ日も高く急ぐ必要は無いが、連絡だけ入れておこう。

 続いて、授業の成果。先に魔女授業から聞こう。

 正魔女1級授業がユッタ達9人。
 ユッタとイェンナ、マリナ、フェドラ、トゥーリカ。
 レーネ、ペトリナ、カリマ、ティルア。

 正魔女試験がマルカ達18人。脱落者無し。
 マルカ、カーチャ、ノイエ、ツェンタ、アイリス。
 テルーザ、エメリナ、フレヤ、ジェマ、ルーシャ。
 それとアンゼさん達、花人から8人。

 5級。ジルケとルピリエッテ達で4人。
 4級。マイナさんやフィリッパ達と、魔物隊女子。13人。
 3級。コロボックル2人とフリーダ達で8人。
 2級。トゥリンとヒュリヤ。2人。
 初級。キーア、ティリー、リューリ。3人。

 授業料は276万。毎度ありー、とシャンタルたん。

 あとサンドラちゃん、無事に人形使い免許を取得。
 人形使い。ドールマスター。
 パペットソルジャーなんかを呼び出して使役出来る。

 壁役を随時補充出来る、というのは良いかも知れない。
 壊れても人形。あとで直してやるからね、で済む。
 各隊1人ずつでも使い手が居ると、大分違うだろう。

 そっちにすれば良かった?と、カーチャ。
 正魔女試験。最初の免許はみんな魔法治療師か。
 免許には実績も要るんだよ、とヘリヤ先生。
 まあ、治癒も大事だしな。今後の課題という事で。

 淑女教育はベラさん先生。
 みんな大人しく聞いてくれただろうか。
 ベラさん、大人の方が大人しくなかったよと笑う。

 大人は新人メイドのアニス、ビビアーナ、フラビア。
 ベラさんの元からの仕事仲間。
 下位貴族みたいな振る舞いに照れがある様だ。

 それと吸血鬼女子、ペトラやツィーリア達。
 クラウディオさんの勧めで、屋内で講義を受けてくれた。
 知識云々に加えて、友好・協調を示したかったのだろう。

 それから……ヴァーニとハリシャ。
 ヒンディー語圏から来た元奴隷の2人。

 旦那さんさえ良ければ、と切り出すベラさん。
 クラウディオさんも顔を出して、説明してくれた。
 ヴァーニとハリシャ、ベラさんの下で働く意思がある様だ。

 分かった。2人を見習いメイドとして雇おう。
 お客さんのままでも居心地が悪いだろうし。
 すぐ故郷に帰してやれる様な情勢でもない。
 分かり易く給金も出す。

 授業はそれとして。あとはどうする?とアイリス。
 冒険に出るには、俺が疲れちゃっててな……
 マイナさんとお菓子作りは?
 食べたい、とツェンタ。これからか。
 説明より先に要望が出ちゃったよ。

 俺もバトルより生産的な事がしたい。
 夕食前に、何か摘まむ物を作っても良いだろう。
 まずはレーネ達を呼んで来ようか。

 子供達には料理の支度を任せる。
 俺はポータルから街に出て、

「居た、おっさん!」
「頼むよ! 助けておくれ!」

 出た途端に声を掛けられた。
 ロジェやヴラスタ達か。
 穏やかじゃない様子だが、何があった。

 ……バートの所のチビ達が?



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