黒鷲の旅団 >24日目(2)チビとスキルとボンキュッキュ


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24日目(2)チビとスキルとボンキュッキュ

「ぼん、きゅっ、ぼん、きゅっ♪
 ぼん、きゅっ、ぼーん♪」

 別動隊、各隊を視察。まず第2弩兵隊に合流したのだが。
 先頭を駆けて来たリリヤちゃん、その掛け声は何だ。
 ボン・キュッ・ボンな体型になりたい?
 誰に聞いたんだかな、そんな言葉。

 今のままでも可愛いよ〜。よしよしよしよし。
 呼び止めて両頬を撫で回すと、デレデレっと笑う。
 2本のわんこ尻尾も摺り寄って来た。
 はいはい、よしよし。また頑張ってな。
 リリヤは少し手を振ると、また行軍に戻って行く。

「ぼん、きゅっ、ぼん、きゅっ♪
 ぼん、きゅっ、きゅ〜ぅ♪」

 ボン・キュッ・キュじゃバランス悪くないか。
 意味はよく分かっていないらしい。

 しかし、リリヤも体力がついて来た様だ。
 最初の頃はすぐバテてしまっていたが。
 軽快なステップで隊の先頭を行く。
 スキップ混じりで余裕がある。

 解析。レベルや成長適性は他の子と大差無いのだが。
 リリヤには持久力スキルが芽生えているらしい。

 神人のみならず、NPC、唯人にもスキルは存在する。
 身体を動かしていると対応するスキルが発生し、育って行く。
 その分野がちょっと得意な人、になるワケだ。

 筋力、持久力、頑健、敏捷、疾走、瞬発、直感……等々。
 身体系、徒歩の方がスキルが育つ物は多い。
 生残性に直結する物も少なくない。

 一方で、騎乗系スキルは馬に乗らないと育たない。
 バランスを取ってやる必要がある。

 現状は、全員下馬。徒歩で林の中を行軍している。
 午後はまた騎馬で移動して貰おう。

 リリヤを追う様に、ダーシャとトゥリンが行って。
 第2弩兵隊、最後尾は隊長フリーダ。
 遅れがちな新人キーアとティリーに付き添っていた。

 大丈夫か。何か困ってない?
 部隊内に活力魔法の使い手が少ないのが課題か。
 第2隊も参謀や衛生担当を決めた方が良いかな。

 次、第2弓兵隊はルジェナ、マリッタ達。
 新人はワーバイソンのリューリが体力派。
 行軍はあまり苦労していない感。

 ただ、薄暗い林の中が不安だとルジェナ。
 ルジェナ曰く、ダークエルフと言っても肌が浅黒いだけ。
 白を神聖視する奴らに追い立てられたに過ぎない様だ。
 暗がりに暮らす事は多いが、多少慣れているだけ。
 特別好きでも得意でもないらしい。

 それと水竜人アルメルから要望。もっと技術を磨きたい。
 まだ第1弓兵隊みたいな継矢を披露出来ないのが悩みか。
 指導やお手本、合同練習の機会でも設けてみよう。

 次は、と……探知。一番近いのはバートとチビ達か。

 チビ達。ストリートチルドレン年少者。
 男の子が2人。ブラム、ジョスラン。
 女の子は3人。エスター、ニノン、ベアトリクス。
 新生バート隊はバート兄ちゃんとチビッ子達。

 解析結果、年齢が4〜7歳。本当に小さい子ばかりだった。
 心配なのでユッタ達、第1銃士隊をフォローに付けている。

「ちゃんと言う事を聞いて、頑張ってついて来るのです」

 小さいカリマ、より小さい子を相手にお姉さんぶる。
 そうだな、外向きにはしっかりした所も見せてやってくれ。
 俺にはまだまだ甘えてくれて良いけれども。

 バート隊のチビ達は全員ボウガン装備。
 軍用ではない小型ボウガン。
 殺傷力があるだけマシ、という程度。
 ハミルトンが小銃も多少作ってくれていたのだが。
 子供達の方が小さ過ぎて扱えなかった。

 小型ボウガンで狩猟は出来ても、ゴブリン相手は厳しい。
 バート兄ちゃんのクロスボウが頼りとなる。

 それでも今は護衛が、ユッタ達が居る。
 魔法付与を貰ってダメージを与えている様だ。
 何とかレベル2には……もうなった?

 早いなー。先輩チームが手加減上手だったか。
 トドメを刺させて貰っているな。
 にひっと笑うユッタ達。頼りにしてるよ。

 魔力さえ伸びれば、魔法への道が繋がって来る。
 代替手段でも、組み合わせても良い。
 とにかく自分達で身を守れる様に。
 自分達で食って行ける様にしてやらないと。

「どうして面倒見てくれるの?」
「信じて良いのかな……」

 ジョスランとエスター。心配そう。
 バートが謝るが、いいんだ。
 何歩か引いたぐらいで良い。
 自分で見て、自分で考えるのは大事な事だ。

 大人がみんな悪党だとは思いたくないが。
 大人がみんな親切だとも限らない。
 悪気は無くても間違える事だってあるしな……

 間違える事、失敗する事は、ある。
 俺もヨルク達の事は忘れまい。

 さて、次はどの隊を、と思った所で、通信。
 エメリナか。どうした……キースがやらかした?



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