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黒鷲の旅団
24日目(7)台本と主張
『シュテルンフェルト公国第1公女。
アーデルハイトです。
大陸に住まう皆様、どうかご拝聴下さい。
我が公国は今、大きく揺れています。
全ては民の安寧の為。
各国皆様のご支援が必要なのです』
シュテルン第1公女アーデルハイト。
通信魔法を介した彼女の演説。
それはそんな言葉から始まった。
通信魔法。
なかなかに大々的な物を使って来た。
映像付き。映画館めいた大画面。
大音響は拡声魔法の併用だろうか。
各魔法系ギルド上空。
同時に複数が維持されている。
それもこの街だけではあるまい。
シュテルンの宮廷魔導士達は優秀か。
人海戦術だとして。
それなりの数と質を揃えている。
大がかりな魔法の併用。物珍しさ。
普段はやんちゃな魔女達だが。
お行儀よく並んで座って見ている。
ちょっと可愛い。
さて、演説の内容だが。
まずは先王の死去に当たって。
解決するべきは後継問題だ。
男系長子継承制を通してきた公国。
そこで女性君主が立つ。
相応の正当性が要る。
アーデルハイトの主張。
彼女は少し間をおいて。
何か手元に目をやった。
メモか台本の様な物を見たと思われる。
第1公子ヴィンフリード。
虚弱にして覇気に欠ける。
第2公子ディートリッヒ。
魔族の女にうつつを抜かす。
第3公子マクシミリアン。
武勲はあれど王の器でなし。
第4公子エドヴァルトなどは謀反人。
出奔する始末。
と、欠点を上げ連ねて。
言い換えれば、こき下ろして。
こう男達は頼りない。
だから優秀な第1公女が王権を継ぐ。
概ね、そんな内容だったと思う。
競争相手を非難。
当然、反発を招くだろう。
いっそ掛かって来い、ぐらいの心境か。
覚悟の方は決まっていると見える。
ただ、その言い回し。
果たして上手いやり方かどうか。
少なくとも画面の右端。
公女から見て左後方か。
第3公子マクシミリアンは面白くなさそう。
マクシミリアン公子。
アーデルハイトと母親も同じだ。
エドヴァルトから聞いた話だが。
姉を継承位に推す為。
彼も武勲を立てるなど支えて来た。
その姉さんから脳筋呼ばわりだ。
面白くはあるまい。
アーデルハイトも気付いたのか。
少し振り返って、何か言った様だ。
マクシミリアンが返事。聞き取れないが。
不満げでも頷いていた。
和解は成立しているのだろう。
だろうが……まだ調子が悪い?
台本に視線を戻す第1公女。
何か言い淀んでいる。
『男性優位の時代は終わりを告げるでしょう。
私は時代の先駆者として。
男達の抑圧から……
いや、違う。違います。これは』
『女王陛下、続けて続けて!
男女平等、女性の社会進出の第一歩!
バカな男達をやっつけて!
頂点に立ちましょう!』
煽っているのは誰だ?
マクシミリアンと反対側。
マントに文官らしい上着。
しかし下は短パンの若い女。
何やら鼻息荒く、といった勢いだが。
こいつが台本を捻じ込んだのだろうか。
よく分からん着こなし。
この世界の人間らしくない。
神人、かな。
恐らくマクシミリアンとは仲が悪い。
あるいは男性優位の中世封建社会に不満。
中世世界で女性解放運動をやりたいか。
現実世界も古代、中世と。
男中心の時代が続いた。
今この世界の文化は、その中世相当で。
あの女文官は……何だ。
現代の感性を持ち込んだ?
現代知識で文明チートしようとして。
しかし、空振っている。
タイミングが良くない。
男女平等を掲げるのが悪いとは言わん。
男嫌いも個人の趣味なら勝手にすればいい。
ただ、新女王が立つ場。
異世界人の思い付きを披露する場ではない。
対立を目前にした演説だろう。
自軍内部で男と女の分裂を招くのか。
ちょっとは空気を読め、異世界人。
結束が、皆様のご支援が要るんだろう。
言い包めてもおだててでも。
少しでも味方が欲しい、という状況。
そこでバカな男達、などと。
男全般にケンカを売ってどうする。
人類の半分は女で。
しかしもう半分は男なんだ。
自軍の男達の反感まで買ってしまう。
これは失策だ。
新女王も分かっているのだろう。
意図せぬ台本。
軌道修正を求められる。
『だ、男性を、臣下の皆様を。
軽んじるつもりはありません。
ただ、あの……聞いてください!
聞いて!』
求められる……けれども。
上手く行っていないな。
会場のざわつきが止まらない。
一応敵方だが可哀想になって来た。
しかし手を貸してやる。
方法なんて……ああ、あった。
顔を知っていれば通信出来るんだったか。
通信魔法。
宛て、新女王アーデルハイト。
具申申し上げる。
お聞き頂けるなら右手を胸に。
女王は言う通りに動いた。
まずは、はい深呼吸。
男系国家で女王を名乗る。
多少の反発は覚悟の上だったハズ。
沈静化は諦めて、話題を変えては如何か。
他に何か主張でもあれば。
興味を引けたら場が収まるかも知れない。
『興味……わ、私は!
私は魔王に負けない国を作りたい!
男だ女だではなく、全人類の悲願として!
私は魔王を倒します!』
ちょっと想像以上の主張が出て来たぞ?
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