黒鷲の旅団
24日目(9)悪の一党

「いよう、黒鷲ちゃん!
 元気してたかなあぁ〜?」

 ああ……はい、お久しぶりです?

 王城にて公主との会談に向かう途中。
 出くわしたのは自由騎士アルビオン。
 仲間のフルンツベルクと、他数名。
 享楽主義的な神人の傭兵達だった。

 以前に見たのは戦場だっただろうか。
 少年兵に給金を払い渋って殺し掛けていた。
 気も合わない一方で、実力は向こうが上。
 なるべく穏便に済ませたい。

 今日の用向きは、公主に、か。
 シュテルン継承戦争への参加ではなく?

 こちらから離脱。
 魔王ペーター軍へ参画。
 バティスタン側との戦線に赴くという。
 理由は、略奪を楽しめないから、と。

 なるほど、継承戦争。
 市民の人気取りもある。
 勝ち取った領地は元々自国。
 戦利品ではなく保護対象だ。
 配下が略奪など働いては、事後に差し障る。

「そゆことぉ〜。どーよ。
 俺様ちゃん、気回し出来る奴っしょ?」

 そう……そうだな。
 折り合いをつけているか。

 そんなワケで公主に出国の許可を取り付けて。
 しかし、すぐ動くでもない様子。
 まだ何かやり残した事があるのか?

「ああー、手下の兵隊集めないと。
 ……なんだけんども。
 フルンツとキルドラムのバカがな。
 そいつら。フルンツは知ってたっけ。
 ドジ踏んで、装備無くすわレベル下がるわ。
 ちょっち金に困っちまってさあ。
 ああー、そうだそうだ。黒鷲ちゃーん」

 怒涛の様に喋るアルビオン。
 後ろから引っ張り出して来たのは、女。
 身なりの悪い、死んだ目をした女が2人。

「あっ、お、お、俺の……っ!」

 声を上げた大男。
 しかしアルビオンに睨まれて委縮する。
 こいつがドジ踏んだ2人目か。
 神人。登録名キルドラム。

「こいつら買わねえ?
 美人。調教済み。
 レベルは50と51。
 アホ共がヤり過ぎてガバガバかもだけど。
 盾にしてヨシ、魔法の実験台もヨシ。
 可愛そうな女とか言った方が燃えちゃう?」

 えー、あー、うーん……
 お幾らで。1人500万。
 2人セットで800万ぐらいになりませんか。

「んんー……950。ダメ?
 じゃあ900だ。900万。
 オッケー売った。イェー。
 やっぱ黒鷲ちゃんは話せるぅー」

 雑な値段交渉の末。
 2人を900万で身請けした。
 元の主人達は不満そうだが。

「あああ、俺の女ぁー……」

「ばかやろ。
 元は両方とも俺んだろうが」

「泣くな泣くな。
 魔王様にサキュバスちゃん貰うんだろ?」

 キルドラムとフルンツを宥める剣士。
 サキュバスが何だって?
 配下の希望者には淫魔を従者に付ける?
 ペーターも悪い方法で手下を集め始めている。

「まっ、今日は助かったぜぇ。
 黒鷲ちゃんもな。
 何か欲しい物があったら言ってなー?」

 ああ、はい。今は特に。
 しかし略奪好みの荒くれ傭兵団。
 頼む様な事は……

 いや……ある。あった。

 今でなく出兵後。
 略奪や何かで捕虜を取った場合だ。
 子供は出来るだけ殺さずに。
 俺の所へ寄越して欲しい。

 奴隷商の相場の倍値を出して引き取る。
 無傷、いや、軽傷程度でも。
 手間賃を上乗せしたって良い。

「捕虜って、少年兵とか?
 雑魚に用は無いんだが」

「私も同じくだ。
 とある剣士を斬れれば良い」

「フン……シャパリューを殺るのは俺だ」

 剣士らしき男。
 ゼルフィカール。

 声は女と思しき鎧甲冑。
 アリアンリーズ。

 無理に捕まえて欲しい訳ではなくて。
 興味が無ければスルーしてくれて良い。

「それって男の子でも買ってくれるワケ?
 妄想が捗るわ……ふふ、へへへへ」

 女魔術師だか錬金術師。
 トリニトニトルス。
 この人は何だろう。
 ある種の腐臭がする。

 他に数人、偽善だとか。
 胡散臭いという声もあったが。
 アルビオン、決めるのは俺様だと。
 意見を纏めてくれた。

「ふふん、ま、良いんでない?
 あんたは人気取りが出来る。
 俺達は金が入る。フェアな取引だ。
 黒鷲ちゃんは良いねえ。話が通じて。
 そんじゃ、ごきげんよう。
 またよろしくぅー」

 上機嫌で引き揚げていくアルビオン。

 悪の一党、か。
 しかし、享楽主義者だ。
 秩序正しく悪を成すのではない。
 折り合いの付け様はあるだろう。

「殺して……」

 残されたのは奴隷女2人。
 俺にその要求は聞けないな。

 忘却魔法を。いや。
 相談してからの方が良いか。

 通信と帰還スクロール。
 一旦、魔女協会で診て貰おう。



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