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黒鷲の旅団
24日目(10)足場が固まらない
「ああ、だから。
1回来たけど帰ったワケね」
王城に再登城して公主に謁見。
探知か遠見だろうか。
公主は俺の行動を辿っていた様だ。
先に接触した、素行の悪い傭兵集団。
公主にとっても頭痛の種であるらしい。
何だかんだ離れてくれた。
良かったのか悪かったのか。
国内で暴れない。
その分、気を遣う所は少ないかも知れんが。
魔王との休戦が切れたなら。
一緒になって襲って来そうだ。
連中の話で1つ思い出したが。
シャパリューという剣士について。
何か心当たりは?
「ああー……
悪い子じゃないんだけど。
善悪で言えば善。
ただ、清濁を併せ飲めない」
……清濁?
「例えば、あんただったら。
子供を助ける為に悪党とも取引するけど。
あの子は悪党との取引を受け入れられない。
人質を殺されたって、まず悪党を殺す。
で、後になって力不足を泣くとか。
何か、そういう子よ」
行動指針の最優先事項。
それが悪を亡ぼす、なのか。
自分にそういう制限を課している。
戦女神の評価。
『不惑』のシャパリューだったか。
足を止めなく。
しかし傷ついていないワケではなさそうだ。
確認だがイーディス軍。
ロンバルディア公国の方針。
ヴィンフリード支援、で良いのか。
「顔はまあまあ好みだったわ」
そこで決めちゃって良いのかよ。
「ああ、ごめん。
あんたのも割と好きよ?」
そんな話は聞いてない……
が、ともかく。
前公王の第1公子ヴィンフリード。
彼を正当な王位継承者として。
イーディスら、ロンバルディア公国軍。
それを支援する。
アーデルハイトの王位簒奪に異議。
それ自体は良い口実だ。
魔王の盟友として対立しては反発が出る。
同時に、連中を抑えたい。
自国の勇者を引き抜かれる。
魔王と休戦している内。
優位に立っておきたい意図はある。
本格的な派兵は明日。
こちらも通信放送演説を行う。
見解を述べる。
話を詰めた上で派兵しないと。
侵略と取られかねない。
が、それは国軍の話だ。
俺達は傭兵団。
リュドミラに雇われる形にする。
一足先に入国して近隣の魔物から掃除。
足場固めに努めよう。
懸念事項として。
トゥルチャ領主補佐をどうするかだが。
すぐ代理を立てられそうにもない、か。
現状、魔王軍とは休戦。
戦線としては停滞している。
ルーチンワークは代行キュリアでもこなせる。
妥協案だが、日に数度の定時連絡を入れよう。
それと有事の際には駆け戻るという事で。
「じゃ、あたし達も明日行くからね。
リュドミラと仲良く、は大丈夫だと思うけど。
仲良くし過ぎて、帰って来れなくなるなよ?
何かデキちゃったりとか? んふふふ」
悪戯っぽく笑うイーディス公主。
一体、何を想像しているんだか。
城を出て魔女協会に寄る。
先に預けた元奴隷。
フィリュギーナとアルヴィタ。
容体についてレイヴン婆さんから聞いた。
軽度の身体損傷。
これは魔法で緩和したが。
残ったのは重めの精神疾患。
事あるごとに、死にたい殺してと言う。
少し目を離すと自傷に走る。
出自は戦乙女。
神に使わされた神人の従者。
多分フルンツのオーダーNPCか何か。
元は俺のと言っていた。
選ばれし栄誉とは裏腹に。
扱いはおよそ奴隷相当。
慰み物、悪事の片棒。
終いには物として売られて、だ。
誇り高い戦乙女。
耐えがたい物もあっただろう。
それから、忘却魔法の件。
治療には使い難い様だ。
狙った記憶だけを消す事は出来ない。
いつ頃からいつ頃まで、といった範囲指定。
あまり記憶を消すと人格まで損ねてしまう。
喪失ではなく、忘れる。
思い出してしまう事もあるとか。
過去を忘れてやり直し、とは行かないか。
当面は、監視付きで療養しかないだろう。
治療費。それと世話役兼監視役。
門弟を2名借りたい。
婆さんの人選。
若手のマーシーとマレーン。
自傷防止の必須条件。
鎮静と束縛魔法の使い手。
お喋りで患者の気も紛れるだろうと。
お気遣いに感謝。
ご請求は治療費と雇用費込みで30万。
患者と世話役はポータルから自宅へ。
俺は子供達と合流しよう。
支度が整い次第、現地へ向かいたい。
通信魔法を……
『うーん、駄目だ。
こっちじゃないのかも』
『でも、きっとあの馬車です!』
『あの後どっちに……
あっ、パパさん?』
『こっちの憲兵も見てないってー。
ん、おっちゃん?』
『空間魔法でルートの割り出しを……
え、あ、おじさま?』
混線? 何やらバタバタしている。
大丈夫か。何かあった?
『大変なんだよ。
マリナちゃんのお母さんが』
『母ちゃんじゃなくて家だってば』
『とにかく一度合流を』
ベラさん、の家?
が、何だって?
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