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黒鷲の旅団
24日目(15)城門前口論
「殿下! ヴィンフリード王弟殿下!
遠路遥々訪れた臣下を門の前で足止めとは。
無体な仕打ちではありませぬか!
どうか門をお開き下さい!」
「やあ、誰かと思えばウルバン男爵。
王弟とは些か気が早い気もするけれど。
随分と大勢で、一体どういった用向きかな。
さては君が反逆者。
狙いは僕の首という事かい?」
ヴィンフリード達と城壁を上って。
姿を見るや、声を荒げたウルバン男爵。
対し、余裕のヴィンフリードだが。
言っている事は彼の方が剣呑だな。
ウルバン配下の兵士達、ざわざわ。
皆が志を同じく、ではなさそうだ。
言われるままついて来た傭兵。
半農兵士なども居るだろう。
シュテルン公王家に盾突いた。
とあらば、死罪もあり得る。
自分だけじゃない。
一族郎党なんて事もあり得る。
覚悟も無いまま反逆を問われる。
心中穏やかではあるまい。
「は、反逆とはまた、ご冗談を。
これは新女王の意に沿う行動です」
ウルバン男爵。
ブラショヴは通過点程度に見ていた様だ。
イーディス軍、ロンバルディア公国。
あちらへの先制攻撃が主目的。
その為の駐屯地として。
ここブラショヴの統治権を委譲せよと。
公子は屋敷に引っ込んでいろ。
あるいは他の街に移れと言う。
「ロンバルディアを攻める口実は?」
「かの女狐めは魔王と通じております。
新女王陛下は魔王討伐を表明なされた。
奴らの力を削いでおく。
これは必ずや陛下の為に」
「じゃなくて、攻め込む口実は?
それ、僕にここを明け渡させる口実だよね?
休戦条約を破ってまで攻め込む口実は?
間違いなくアーデルハイトの指示かい?」
「口実は……ですから。
奴らは魔王と組んでおりまして」
「確かにロンバルディア。
魔王軍とも休戦している。
けれども、魔王と組んだ根拠は?
不利を悟ってやむなく。
民を慮ってという事は無いのか。
そもそも、こちらこそ。
魔王と組んで攻めていたんじゃないか」
「情勢が、方針が変わったのです!」
「ならば手を組む道もあるハズだろう。
まずは使者を立てる。
真意を測るのが良い。
事実、聡明な新女王。
未だ宣戦を布告していない」
「奴らの肩を持つと仰るのですかな?
殿下の方こそ反逆の疑いが」
「どこをどう聞けばそうなるんだ。
あちらがどうこうではないよ。
僕らが不義理を働くのかどうかという話さ。
相手が悪人なら自分も約束を違えるのか」
「大事の前の小事です!
魔王軍は悪逆非道!
出遅れては大変な被害を被りますぞ!」
「先走っても大変な事になる。
本当に敵なのか。
余計な藪を突こうとしていないか。
勝算はあるのかい。戦費は。食料は。
焼け出される民はどう受け入れる」
「戦とは、支度もままならぬまま始まる物。
何を悠長な事を仰られます」
「だからって、不備のまま戦を始めるのか。
支度出来ない事と。
出来る支度をしないのは違う。
功を焦って責めを負う事になるよ?」
と、公子と男爵のやり取りを聞かされ。
ここまで探知情報。
全体的に、やや黄色、緑。
ウルバン軍の兵士全体。
こちらに中立ないし同調している。
公子に同意というか。
男爵への不信感が高まっている。
派兵の正当性に疑問。
根回しの不足。
まずまずボロを引き出した。
言い合いは優勢。
一押しすれば投降や離反を誘えそうだ。
他方、男爵にしてみれば。
当てが外れただろうか。
軟弱そうな公子だけの今。
武力で脅せば落とせると。
いっそ、黙って攻め込むべきだったかな。
「あーもー、さっさとやっちまおうぜ」
「聞かなきゃ力づくって言ってたじゃん」
挟まって来たのは若い男女。
まあ、神人、異世界人だろうな。
戦いに来たハズだ。
待ち切れない、といった顔。
もう剣とか抜いてるし。
「何だ、やっぱり反逆だったんじゃないか」
「え、ええい、余計な事を!
殿下は魔王の手先に魅入られてしまった様だ!
進め! 武力を以て制圧せよ!
王弟殿下は捕縛せよ!
殺してはならんぞ!」
男爵、苦し紛れの攻撃命令。
城壁上からも、戸惑う兵士達の顔が見えた。
「聞け! 国家防衛を預かる兵達よ!
これより反逆者ウルバン男爵を討つ!
民の為、志あらば我に下れ!
賛同出来ぬ者はこの場を去れ!
退かぬとあらば討ち取ってくれよう!」
返すヴィンフリード。
敵方にも投降や戦線離脱を促して。
聞いたであろう男爵側。
戦列末端にバラける気配。
脱走かな。敵が減るのは願ったりだ。
「ふう、なかなか緊張したよ。
じゃあ、はい、これ」
敵軍を迎え撃つべく階段を下りながら。
ヴィンフリードが俺にマントを差し出す。
……ん? いや、待て。
これで俺に何をしろって?
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