黒鷲の旅団
25日目(5)てちてち、なでなで、
そしてガヤガヤと
「パパさーん? パパー?
パーパ、起きてー」
てち、てち、てち、てち。
頬を控えめに叩いて来る小さい手。
これはカリマだな。
眠くて目が開かない。
手招き、抱き寄せて頭を撫でる。
はいはい、よしよし、可愛い可愛い。
撫でこ撫でこ、撫で撫で撫で撫で……
「ずるいー、カリマもー」
ん? あれ?
カリマじゃない?
目を開ける。
腕の中に居たのは大人の女性。
赤面して硬直したマイナさん。
あああ、すいません。慌てて離す。
触れてしまって大丈夫だったか。
「だ、だっ……大丈夫、でした……」
笑顔だが涙目。
震える肩。か細い返事。
とても大丈夫に見えない。
診断スキルが彼女の動悸と緊張を告げる。
「あっ、ホント大丈夫。大丈夫ですからっ。
ごはんの支度してきますね。ではではー」
そそくさと逃げられてしまった。
心配だが、下手に触れても怖いしな……
少し様子を見るしか無いだろうか。
「……カリマはー?」
マイナさんの姿が見えなくなって。
途端に振り返るカリマ。
ああ、うん、よしよし。
お前ちゃんは抜け目が無いね。
お陰で幾らか気が紛れるよ。
一頻りカリマを撫でつけて。
先へ促してベッドを出る。
脳内ウインドウ表示。表示の端。
時刻。9時少し前。
どうやら寝過ごしてしまった様だ。
就寝前、精神と夢操、演算、音響。
起床魔法を派生しておいた。
要は目覚まし時計みたいな魔法。
しかしタイマー機能はともかくとして。
アラーム性能が弱かった?
寝不足を叩き起こす効力が無かった。
熟練レベルやらを上げないとダメかな。
各方面に通信。
すまん、出遅れ……おや?
ポータルから魔女協会へ。
子供達は朝食を済ませた様だ。
敷地内、魔法の練習場の一角に集合。
ハミルトン爺さん達が指導。
武器の手入れを教えてくれていた。
うちの子供達を中心に。
指導を受けに来ている子達も。
出撃準備中といった様相。
新人はまず、昨日の4……5人か。
難民孤児フレデリックとマトゥーシュ。
家出人フランカ。
貴族のルパートと姉のエセル。
昨日は出遅れた子。
昼食から顔を見せたメンバー。
それと、普段は収穫手伝い。
ケンタウロス少年少女達。
弓も覚えたい、家計を助けたい。
あわよくば肉も食いたいと。
男子はガキ大将気質のハヴェル。
カシュパルとヨナーシュ。
女子はアポレナ、カトカ。
普段見ない小さい子スヴェトラナ。
連れて行くのは良いが。
小さい子はみんなで守ってやる様に。
ストリートチルドレンが追加で2名。
男子。ヴィダルとテレンシオ。
ロジェやヴラスタ達と面識がある様だ。
特にヴラスタが慕われている。
一緒に組む方が動きやすいだろう。
と、新しい仲間の一方。
居ない顔ぶれもある。
中層階級はリッツァとシャノンが不在。
道具屋さんに行ったよと、シプラ。
何か手伝いの仕事を貰えたのだろう。
こちらへの参加は強制じゃない。
行き先が分かっているなら良いだろう。
一方で、ストリートチルドレン。
欠員が4名。
ジュリオ、ヨティス、ティモ、ヒューゴ。
心当たりは。イヴォナ曰く。
冒険者がどうとか言っていた?
探したんだけどね、とヴラスタ。
まあ……参加は強制じゃない。
ない、んだけどな。心配は心配だ。
冒険に行ったのだろうか。
認定証、免許皆伝を待ち切れなくて。
ああ、それでも。
通信魔法は持っているハズだ。
もしもの時は頼ってくれる事を期待しよう。
救難時に備え、魔女協会に依頼。
フレス派に何人か待機していて貰う。
新規にハヴェル隊、フレデリック隊を結成。
素人なのは分かっている。
先輩チームを補佐に付けよう。
あとは欠員の補填だな。
ヴィダル、テレンシオ、キース隊へ。
ヴラスタ姉さんの脇を固めてくれ。
イヴォナはフレデリック隊の後ろへ。
年少チームに次いで小さい子だが。
先輩だ。通信魔法もある。
連絡役の練習をして貰おう。
今日はブラショヴに向かう。
このメンバーで戦争には行かない。
精々が露払いだ。
本隊の作戦が始まる前。
周辺の魔物を掃除したい。
それと、えー……装備か。
見るからに不安。
ヴィダル、テレンシオ。
フレデリックとマトゥーシュも。
足の指が食み出た靴。
これで山道や藪の中を歩かせられん。
金は立て替える。
ブーツを買っておいで。
アンヌ、4人の付き添い任せた。
それから、各自武器は決めたかな。
まだの子が居る。
ジュス姉さん見てやってくれ。
ハミルトン爺さんの店へ。
武器代は後で請求して下さい。
俺の方からはこんな所で。
皆から何か話は……
「はい!」
「あ、はい!」
「俺も!」
「あたしもー」
いっぱい手が上がってしまった。
みんな聞くけれども、少し時間をくれ。
今すぐでないとマズイって子は、居……
居るのか。ロジェ、マリナ、ルパート。
ヴラスタも手を上げ掛けた様だが。
ロジェを見て辞めた?
先に魔法特許の申請と確認をして来る。
ロジェ達は一緒に来てくれ。
歩きながら話そう。
それ以外の子は昼食時にでも時間を作る。
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