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黒鷲の旅団
25日目(20)ブラショヴ防衛戦2日目
〜多段包囲攻撃〜
「照準よろし!
カウント! ユッタさん!」
「3、2、行くよ、今っ!」
どどどん、がしゅしゅしゅ。
ばららららら。
レーネからユッタの合図。
子供達の斉射で矢弾が飛ぶ。
『番え、絞れ、止め! 放てーっ!』
ブラショヴ側、本陣。
こちらはリュドミラの号令で一斉射。
対バルトシーク子爵軍、戦闘開始。
方針は包囲攻撃だが。
これを時間差でやる事になった。
本陣側から宣戦布告。
のち、北西、俺達の側から斉射。
次いで本陣からも斉射。
北東から騎馬部隊が突撃を開始。
本陣が城壁を開門、打って出る。
更に北西の傭兵部隊が進軍を開始する。
この時間差。
相手がこちらを認識をする為の間だ。
一斉に攻めて来ました。
これでは混乱が一度で終わる。
しかし各個撃破されても面白くない。
物理的に包囲は包囲として。
より精神面を揺さぶって行く。
「敵がこっち向いたよ!」
「よし、出るぞ!
黒獅子隊、進めーっ!」
こちらに気付いて向きを変えた中隊2つ。
出て来たんだが戸惑っている。
他方向の攻撃を認識したんだろう。
という所を目掛けて、黒獅子隊が前進。
味方騎兵隊が逆から来る。
同士討ちには注意。
従軍魔女ヘルガ経由。
探知魔法の情報を共有する。
よしんば乱戦でも近付けば分かるか。
黒獅子隊の接敵前に第2射用意。
と、リリヤがもう騎乗しちゃってた。
はい抱っこー。一旦降ろします。
次を覚えてたのは偉いぞー。
でも、もう1回撃ってからだな。
兵数はほぼ互角。戦略的に優位。
前衛が衝突すれば手一杯。
敵が包囲の外を見る余裕は無い。
この隙に、俺達は敵の後方に回る。
待ち伏せだ。バルトシーク子爵。
逃げて来る様なら捕縛したい。
うまい具合に少数で来てくれると良が。
「ぐるっと囲んで撃っちゃうってのは?」
マルカの提案だが、今回は見送りだな。
敵の逃げ場が無くなった場合。
逃げても無駄ならと覚悟を決める。
敵方の奮闘を煽る事になる。
完勝に至るが、味方の損耗も増すだろう。
西、シビウを預かる公女ユスティーナ。
先に捕らえたドルボフラフ伯爵の主。
その真意は未だ測りかねている。
話し合いに応じるのか。
それとも更なる敵になるか。
後の展開が分からん。
戦力は温存したい。
「でも、それで逃げられちゃったら?」
ヘレヴィの問い。
その時はまあ、その時だ。
バルトシークを捕らえるのがベストだが。
失敗したら次の手を考える。
常に何でも狙った通りに行く物ではない。
知恵者が居て道を変えるかも知れない。
強力な供回りに阻まれるかも知れない。
あるいは類稀な名馬にブッチギられるとか。
失敗したらしたで、それでも戦闘は続く。
作戦が1つダメだとして。
もう全部駄目だとは行かん。
命のある限り、未来を放棄してはならない。
代案を探す。保険を掛けておく。
常に2手3手と考えて行くんだ。
と、授業半分、散策何割かで。
射撃よし。移動を開始しよう。
空間魔法で地形確認。
目標地点を指示する。速やかに移動だ。
ほら、みんな、急げ急げー。
速やかに移動。
主戦場を意識しない様に。
黒獅子隊が敵兵にトドメを刺している。
あの辺は、子供達の援護射撃。
付与魔法で昏倒させた辺りだ。
阻害効果もいずれ解ける。
また向かって来ては危険だ。
全部を縛って置いておく余裕もない。
彼らの対応は現実的だ。
間違いではない。
ないが、しかし。
この状況を作ったのが後ろめたくもある。
なるべく殺さん為の戦闘不能狙いだが。
正面最前列ではどうにもならないか。
抵抗する余地を残したら生き残ったか。
それもどうだかな。
まあ、討ち漏らしがこちらに来ても迷惑だ。
最優先は子供達の安全。だとして。
子供達の心情を全部汲んでやれているか。
どうも怪しい所である。
「あ、あっ、居たよ」
マリナが声を上げる。
前方に、バルトシーク子爵?
じゃなかった。
先に見つけていた、敵方の子供か。
逃げて行く馬上に子供と、貴族。
さっき見た父親じゃないな。
こちらに気付いて止まり掛ける。
念話魔法。さっさと行け。
狙いはお前達じゃない。
馬上の騎士はペコリと一礼。
北、フェルディワラの街へと急いで行く。
子供を逃がしたのは良し、として。
然る後、援軍でも連れて来ると面倒だな。
先に本隊側が片付けば良いが。
挟み撃ちは御免だ。
総員、魔法罠をバラ撒きながら後退。
街道から外れた所に身を隠そう。
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