|
黒鷲の旅団
25日目(23)手掛かりを求めて
『システム、オールグリーン。
アトリシグニス各機。
パッケージよろし。
隔壁閉鎖。注水開始します。
オペレータ1、2、3、4。
準備オッケー?』
始まったかな。現実側。
艦内に義妹フィロメーラの通信。
テキパキとした確認と指示出し。
本社で待っていても良いだろうに。
ついて来ている。
本作戦、あいつも思う所があるという事か。
『オペレータ1、サナトス。OKだ。
相棒、起きてるか?』
起きてるよ。
オペレータ2、ハインリヒ。問題無し。
3番はグラディスだが。
4番、モニターチェック。
座席に誰もいない。担当は誰だった。
サナトスが4番手の捜索をする。
その間、俺はコーヒーを1口。
今度の機体は無人機だ。外部で誘導する。
機種はUTOL、潜載機アトリシグニス。
由来はアカトビウオだったか?
UTOL。
Underwatar takeoff and landing だと。
パッケージ状態。
潜水艦から水中射出、垂直発艦する。
このパッケージはブースター付きだ。
飛行可能な速度になってからパージする。
ほぼ自動制御・発艦の方は難しくない。
むしろ難しいのは着艦だな。
流石に着艦時は浮上。
水中ではなく艦上となるが。
潜水艦の上は狭く短い。
天候によっては揺れる。
降りるには相応の技術。
あるいはAIの補助が要る。
何だったら外部の適当な空港に降ろす。
昔のビデオゲームだかにもあったか?
近い物は存在したらしい。
潜水艦に戦闘機を搭載というコンセプト。
それでも発艦から浮上後だろう。
水中からの発射はしなかったと思う。
運動性と安定性確保。
それと収納の都合、機種はデルタ。
全長は前後に7m程度。人は乗らない。
カナード翼・主翼、共に可変翼の構成。
可動範囲は上下に120度。頭がおかしい。
上手くやると後ろに向かって飛べる。
小型で武装も少ない。
空対空戦闘には向かない。
20mm機銃と対戦車ロケット弾が数発。
しかし、何より戦闘機だ。
速度はヘリでは追い付けない。
今時は光学迷彩もあるしな。
対地戦闘、航空支援。
まあまあ戦果を上げている。
ネタ兵器の枠を出ない気もするが。
今回の作戦は、軍事同盟企業の攻撃支援。
コングロマリット、複合企業体。
などと言えば聞こえは良いものの。
ここらの連中は大半が軍事企業。
他の産業は副業みたいな物だ。
各社、利権と引き換え。
政府から統治を委任されてもいる。
市民の生活も疎かには出来ないが。
イングランドを挟んだ2大政府。
大陸側と、グリーンランド側。
地下に広がる統合国家。
名ばかりの緩衝地帯。
ここは今や兵器の実験場だ。
軍事企業の抗争が繰り返されている。
時に市民を巻き込んだり。
巻き込まない様に気を付けたりしながら。
と、そんな時世に置いては。
ゲーム会社でさえ。
親会社の親会社が軍事企業だったりする。
件のゲーム運営チーム、その親会社。
ブレイスフォード社。
脳科学に力を入れている軍事企業。
これが資金投資だと。
バーチャルゲームの運営を囲って。
普通に考えて、軍事転用が目的だろう。
そこに異世界云々がどう絡むか。
ここまでは分からん。
運営側が暴走しているかもだが。
このゲーム会社。
強制捜査をするには権限が足りない。
最低限、立地の警察権を抑えたい。
しかして俺達には今、口実が無い。
連中を表立って攻撃する口実が。
なので、同盟企業の攻撃を支援。
彼らが地域を接収する。
その協力を得た上で調査に行く。
『あああ、すんません!
お便所っした!』
4番オペレータの席。
戻って来るバリウス。
相変わらず暢気な奴だ。
『こほん。えー、準備良いのよね。
はい、射出!』
『ああっ、ちょっちょっちょ!
うおっとお!』
まだ席に着かん内に、各機射出。
慌てるバリー。落ち着け。
高度が安定するまでは自動制御だ。
高度2千……3千……外装パージ。
編隊はダイヤモンド隊形が4つ。4つだ。
自動制御で1人4機ずつコントロールする。
『しっかし、対地兵装だけで大丈夫かね』
『あ、俺っち2番機が空対空っす』
サナトスのボヤキにバリー。
ロケットを空対空ミサイルに換装していた?
それはそれで無駄にならなきゃ良いが。
『いざとなったら翼で斬れば良いのでは』
グラディス、無茶言うな。
SFアニメはその辺、嘘っぱちだぞ。
反動、反作用って奴を忘れちゃならん。
当てた途端に跳ね返って回転するわ。
切り離して当てるとかならまだしも。
対地航空支援だよ。支援。
空対空戦闘は同盟企業の空軍に任せとけ。
俺達は低空侵入で戦地に向かう。
『ほいほーい。
お父様の指示に従いまーす』
誰がお父様だ。
俺にそんなデカい娘は居ません。
子守は休業。
今は目の前の仕事に掛かる。
ゲーム会社がリアル異世界だの。
あるいは魔物召喚だのと。
世界の境界を越えようとかいう奴ら。
何か尻尾を掴めると良いんだが。
前へ
/黒鷲の旅団トップへ
/次へ
|