黒鷲の旅団
26日目(4)誰の夜も明け今日へ踏み出して

「よしっ、行って来まーす」
「もへふぇふぉまふもふもふ」

 ユッタ気を付けてな。
 イェンナは食べてから追い掛けなさい。

 状況確認と本日の方針。

 まず状況だが。
 ブラショヴ側で目立った戦闘は無さそう。

 アーデルハイトとリュドミラで会談する。
 主に捕虜の引き渡し。
 あと、今後の方針の確認だな。
 少なくとも、まず話し合い。
 話が纏まるまでは大丈夫だろう。

 その間、うちの子供達は修練を継続。
 第1銃士・弓兵・弩兵隊は魔女のお勉強。

 トゥルチャにスペースを借りた。
 レイヴン婆さんが名乗り出ている。
 薬草学を中心にやると言っている。
 食べ終わった子から順次支度。

 次いで、第2銃士・弓兵・弩兵隊だが。
 1つ困ったのが、ニノンどうしよう。

 ニノン4歳。小さい子。
 扱える武器が小型のボウガンぐらい。
 弓はちょっと引けない。
 ショートボウでも厳しい。
 置いて行ったりはしないけど。
 武器種が違うと連携が難しいか。

「あっ、はい。わたし弓でも良いよ」
「ニノンちゃん私が見たいー」

 名乗り出たのは2人。

 移籍は第2弓兵隊からキーア。
 第2弩兵隊の空きは経理担当だが。
 同郷のティリーが弓兵隊経理。
 ジェマの商売発言も後押しした。
 興味が湧いた様だ。
 教え合ってくれるなら、お願いしよう。

 他方、ニノンを見たいリリヤで。
 フェドラに懐いている同士だ。
 思う所があっただろうか。
 ニノンはリリヤの尻尾、平気かな?
 スキュラ尻尾。犬頭付き。
 少し戸惑っていたが、すぐ慣れた様だ。

 キーア、第2弩兵隊衛生担当から。
 第2弓兵隊経理へ移籍。

 ニノンは第2弩兵隊。
 衛生担当に落ち着いた。

 第2銃士・弓兵・弩兵隊。
 巡回がてらレベル上げ。

 補助役。銃士隊はレベル高めのジルケ達。
 念の為にアンヌも同行。
 弩兵隊にはトゥーリカと花人第1小隊。
 弓兵隊にはサンドラと。
 花人第2小隊も補佐に就ける。

 マイナさんは昨晩の子を。
 引き取った子をウェルベックの所へ。
 右足を欠損した少女。名前はイゾルダ。

 移動はリザードマン、レナードの馬車。
 侍女はアニスさんが付き添い。
 前職からベラさんの仲間の人。
 終わったら屋敷へ。
 昼食時には合流しよう。

 ジュス姉さんは東区の酒場へ。
 外縁チームを引率。
 集まった子達を連れてトゥルチャに誘導。

 少し新顔が居るらしい。
 装備の手配も必要か。
 魔女協会から手伝いが来る。
 協力して当たってくれ。

 で、俺だが。用事を幾つか。

 1つは王城で待ち合わせ。
 アルビオンの一党に会う。
 子供捕虜を引き取らなきゃならん。

「よう、庭んトコ置いといたぜ」
「立て替えて貰ったんよー」

 え、あ、ああ、早いな。確認します。

 ブカレスト王城。
 すれ違ったのは2人。
 剣士ゼルフィカールと、誰だっけ。

 前も名乗らなかったが。
 顔は見た、魔術師風の女。
 俺を偽善だと言っていた1人だ。
 態度が軟化したのかな。
 アリアンさん辺りが何か言ったかも。

 代金は立て替えてくれた、と。
 誰だろう。王城の中庭へ見に行く。
 まだ奴隷商人の姿もあり。
 それと金髪美人……カシューさん?

 金を立て替えてくれた。
 これがカシューさんらしい。
 ブラショヴ出張中のイーディスの代理。
 お代官様にお手間をお掛けした様で。
 すいません。助かります。

「まあ、そんな他人行儀。
 もっとお姉さんを頼って良くってよ?」

 そう言われてもー……
 お忍び中ならともかく。
 王城で、公主殿下の縁者。
 多少は気を遣う。

 異世界におけるリアル血縁関係。
 流石に親権などは発生しない様だが。
 それでも前世の縁が云々言われたり。
 多少は関係者として認められるらしい。

 控えている騎士2人とか跪いているし。
 不敬を働いたら、お咎めを受けそうだ。

 所作。礼法スキルなんぞを思い出しつつ。
 手揉みしている奴隷商人さん。
 改めて代金を確認する。

 奴隷として買うのではない。
 身請け・開放が目的だ。
 代金と言うより身代金だろうか。
 支払ったら奴隷紋も外しちゃって。

 えー……健康な子供。
 1人10万。金貨1枚だと。
 欠損あり。1人2万。銀貨20枚で。
 吹っ掛けも疑われるが、仕方なし。
 出せる金だし、それで助かる命だ。
 奴らも儲けがあるから掛ける手間。
 でなければ、殺して捨てられてる命。

 五体無事な子11人。
 でも表情が暗いのは当たり前。
 家族を失ったりしただろう。
 怖い物も多々見て来たに相違なし。

 欠損ありが4人。これまた酷い有様で。
 衣服から何から血だらけのボロボロ。
 流石に出血などは処置済み。
 しかし欠損ありだ。
 ここから出来る限りケアするしかない。

 加えて、付け値の倍を出す約束だった。
 身請け金が236万。
 これをカシューさんに渡す。
 彼女もあまり納得していない様だが。
 ここは仕方なしだよ。

 それで、奴隷商人さんはまだ用事か。
 テルツァーニと名乗る。
 今後ともご贔屓にと。

 奴隷としては必要無いが。
 しかし窓口として必要な奴隷商人。
 裏社会に手や首を突っ込む為の窓口。
 必要最低限の関係は保っておく。

 さて、引き取った子供達。
 カシューさんの指示。
 侍女達がケアに当たる。
 衣類と、食事。
 衛生面も気にされていると思うが。
 風呂は傷に障らない程度に。
 後でまた見に来ます。

 次は街へ。
 お付きの騎士から1人借りる。
 技師ウェルベックを紹介しておきたい。
 他にも済ませなきゃならん用事がある。

 孤児院に顔見せ。
 冒険者ギルドに神聖教会。
 ルアンヌお嬢様の容体はどうなったか。

 あとは……そうだ。
 盗賊ギルドだな。



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