黒鷲の旅団
26日目(8)銃を手に、予感は脳裏に

「これヤバいだろ!」
「どっ、どうすんだい親父さん!」

 バートやヴラスタ達。
 まだ大丈夫だが、ちと重いか。
 経験者でも浮足立っている。
 後退。総員後退しろ。俺の後ろへ。

 街道周辺に陣取る魔物の群れと接触。
 先鋒はキマイラ7、オーガ4。
 トロールも多数。数十。

 初心者を守りつつでトロール数十は多い。
 まずは数を減らさないと。
 新人に倒させてやる余裕が無い。

 強化魔法点火。
 爆薬魔法付与の2丁撃ち。
 右手に突撃銃、シグ SG550。
 左手には自動小銃。
 ラインラントアームズAR57。
 久々の全力攻撃と行こう。
 前から順に沈めに掛かる。

 爆薬。爆破……敵の死体が邪魔。
 不意に飛び越えて来られると狙い難い。
 迅速に捌かないと次が迫って来る。
 重力、衝撃波魔法付与。
 死体もろとも跳ね飛ばす。
 距離と時間を稼ぐ。

 銃身がオーバーヒート気味。武器交換。
 右に散弾銃はセミオート。
 フランキ・スパス15。
 左には軽機関銃。
 CISウルティマックス100。

『おじさん!』
『すぐ援護するわ!』

 こちらに気付いたか。
 散開していたジルケ達も集まって来る。
 ヘレヴィも念話。
 銃声がやかましいからか。

 花人隊が盾役。次いで各兵種第2小隊。
 徐々に鶴翼陣形を形成。敵を包囲。
 頼れる仲間の後ろ。そう怖くない。
 後輩チームも攻撃に加わって貰う。

 目に見える範囲を撃滅して。
 まだ遠目には近寄って来ているが、一息。

 各隊に通信。被害状況。
 損害、脱落者、逸れた者は居ないな?
 隊長、衛生担当から、点呼。生存確認。
 全員無事。負傷者無し。
 上手く立ち回れた様だ。

 ジルケ達が散開していた先は草原。
 街道に敵が多いのは認識していた。
 距離を置いていた様だ。
 堅実な姿勢が良い。何か気付いた事は?

「あいつら、おかしいんだよ」

「意図的っていう奴だわ。
 そうでしょう?」

 次の敵を足止めしつつ。
 フリーダとヘルヴィ。
 そうだな。敵配置。
 何か作為めいた物を感じる。

 キレイに街道に沿って配置。
 村へ向かって長蛇陣。
 いや、細かいファランクスが多数か?
 しかし、少なくとも。
 知能の低い魔獣系モンスター。
 自然に採れる挙動ではない。

 探知。探知範囲。
 目立った敵反応は無いな。

 誘導している奴が居るとしたら。
 範囲外、遠方なのか。
 隠密系スキルを使っているか。
 もう少し掃除したら前進してみよう。
 敵の出て来る方へと辿る。
 何か分かるか……

 ……うっ?

 地中から這い出して来る魔物。
 オーガやキマイラ。
 何だ。召喚魔法。違う。
 闇の気配やらによる追加配置か?

 各隊、陣形を維持。応戦。
 魔法付与、斉射。
 掃討自体は難しくない。
 しかし一掃して、また湧いて出る。
 湧いて出るのが街道上ばかり。
 何なんだ、この配置。
 闇の気配が濃いめみたいな再配置は。

 闇の気配の元は何だったかな。
 戦争。人死に。犯罪。悪意……悪意?

 この辺で主立った戦闘は無かったはずだ。
 そんな悪意どっぷりの何かが通った?

 先の人身売買事件の周囲。
 確かに影響はあっただろう。
 最近魔物が増えたね、程度でもあったが。

 そんな数日でこうも変わる物か。
 頻度、量……量か。何か大量の。
 そんな大量に通って怪しまれない物。
 何かあるだろうか。

 ……あるなあ。
 あまり考えたくはないが。

 後で村人達にも話を聞きたい。
 ここは一旦、村に引き返すとしようか。

 引き際かとロジェ。
 まだ行けるとキース。
 ここは引きだ。
 余力のある内に引き上げる。

 再配置も4度目5度目。
 数も次第に少なくなって来て。
 しかしポツポツと湧いて出るトロール。
 あまり外に出でても怖い。
 いつの間にか後ろを取られそう。
 進み、動き続けられるなら別だが。
 まだ不慣れ、小さい子も居る。

 採取なども体験させたかったが。
 弾薬も心身も消耗してしまった。
 仕切直しが必要だろう。

 幸いにして、子供達。
 レベルは少し上がった。

 魔法マネーカードも配ってある。
 幾らか入金があるだろう。

 多少の撃ち漏らしにしても。
 村の魔物除けだって効いている。
 ここで、途中で引き揚げたとして。
 そうそう追っては来られまい。

 全てが思い通りではないが。
 今は安全を優先する。
 街道の掃除は午後。
 ユッタ達と出直しても良い。

 が、まあ、昼飯には少し早いか。
 子供達。まだ元気な子。
 冒険者の練習もかねて情報収集だ。
 村人からの聞き取りを手伝って貰おう。



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