黒鷲の旅団
26日目(13)わーわー、ぎゃいんぎゃいん
「解析! 次!」
「水と雷!」
「銃士隊、右前やるよ!」
「もう狙ってるよぉー!」
騎馬で移動しつつ、迎撃。
魔物を片付けて行く子供達。
並み居るオーガ、トロール。
もはや脅威にならない。
遠目のサイクロプスなど良い的だ。
少し道を外れる。
ルーシャがガルーダを落とした。
あれは回収して晩飯に充てよう。
「それーそれそれ〜♪」
フェドラが少し大回りをした。
かと思ったら。
彼女を追う様に魔物が集まって来た。
何だ? 魅了魔法?
進路上に獲物を誘ったのか。
倒して拾い易い様に。
「ぎゃー! フェド姉、無茶すんな!」
「きゅ、弓兵隊、ちょっと出ます!」
突出したフェドラを追う魔物達。
左翼からそれを追走するマルカ。
マリナや弓兵隊。
振り返れば反対側。
レーネが何か手振りで合図。
応じたのは3人。
ユッタ、ルーシャ、ペトリナ。
弓兵隊が前に出る。
それに合わせ銃士隊が左翼へ。
弩兵隊は右をキープ。
指揮はペトリナに引き継いだ。
フェドラを援護したいのだろう。
レーネが前へ突進して行く。
こういう挙動、どこで覚えたんだかな。
大魔女フリアリーゼの軍学指導か?
下手すりゃ俺の方がぼーっとしとる。
頑張ってフォローしないとだ。
俺からはバフを。
強化、防御、加速、鎮静、活力魔法。
索敵。探知魔法を2つ同時展開。
近距離を把握、維持。
維持しながら遠方も捜索しに掛かる。
フェドラを追う後方。
前方からも群れ。群れが来るけど。
銃士隊の狙撃が倒して行く。
駆ける騎馬。
前から転がって来る魔物の死体。
転移魔法付与の矢弾で除く。
除かないと衝突する。
気付いた弓弩隊員が手伝ってくれる。
魔物は撃たれた奴が多数だが。
一部、焼けた斬殺死体?
フェドラも溶断魔法などで戦っている。
レーネはもう少しか。
まだ追い付いていない。
通信。フェドラ。
そのまま大丈夫か?
『あっ、あ。わ。わ。わあー。わー』
返事をする余裕は無いか。
忙しそうにわーわーと。
魔物、思った以上に集まってしまった。
それでも捌いている。
敵反応はどんどん減っていて。
しかし1体、大物か。
攻めあぐねているらしい相手も居る。
黒い犬っぽい大型の魔獣。
バンダースナッチ? 少し違うか。
解析。名称はバーゲストだと。
フェドラの迎撃に耐える。
しつこく並走して見える。
レベル73の、どうやら反射魔法持ち。
魔法を防ぎ、高レベル故の高防御か。
魔法寄りのフェドラとは相性が悪い。
俺も援護に……が、必要無かった。
銃士隊、ユッタの指示で一旦銃撃止め。
一息置いて、せーので斉射。
狙撃銃の強撃が6つ。
一点集中して障壁を突破。尻に。
流石に効いたのだろう。
ギャインと鳴いて魔犬が跳ねる。
跳ねた所に、レーネが突っ込んだ。
サーベルが尻尾を切断する。
邪魔な尻尾が無くなる。
銃士隊の追撃。尻。
無防備な尻だ。執拗に尻狙い。
角度的に仕方ないんだが、気の毒な。
堪らずバーゲスト、振り返って障壁魔法。
これが徒になったな。
フェドラの魔法を受ける。
溶断魔法がバーゲストの首を落とした。
多方向からの連携攻撃。
格上の相手だったが、数の力は偉大だ。
追って来る魔物もまだ居る。
しかし鉱山町も近い。
レーネを先頭、陣形は鶴翼から偃月陣に。
俺は隊の後方で砂塵魔法。
追っ手を足止めする。
探知……敵影は追って来ないな?
「フェドラさんっ!」
鉱山町手前。馬を降りて。
眉を吊り上げたレーネ。
フェドラに迫る。
が、怒るより先にハグ。
「もう、心配掛けて!
無茶し過ぎですよ!」
「ご、ごめんねー。
行けると思ったんだよー」
フェドラの言い分。
食料を集めようと気負っていた様子。
村に残して来た新人達が気になる。
肉を食べさせてあげたい。
痩せた子が多く……
それは俺も気になっていたが。
他方、レーネは昔を思い出したのか。
吸血鬼ハンターに追われた。
仲間達と散り散りになった。
その時の誰かの姿が重なった。
魔物に追われるフェドラ。
俺からも少しフェドラに。
新人達を気遣う優しさは良いとして。
急な強敵もあり得る。
連携を密に。焦らず慎重に。
まあ、本人も失敗したのは自覚している。
あまりしつこく言うまい。
さて、鉱山町に入るが。
各自、警戒態勢を維持。
住人が幾らか入っている様だが、
その探知反応が微妙だ。
黄色、オレンジ……
警戒から、やや敵対的。
何しろ鉱山町だ。
農村より食糧事情が悪い。
街道の魔物も多い。
物流も滞っていただろう。
住人が飢えている。
食料狙いで襲って来なければ良いが。
駐屯している役人や魔女達はどこだろう。
詳しく探知、解析していると。
知っている名前が1つ。
……え、お前ちゃんが居るの?
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