黒鷲の旅団
26日目(15)待ってそれ何拾って来たの
「先生、出番ですにゃ!」
「いぇーい、任せれー!」
ジェマとリリヤが駆けて行く。
2人の両手、リリヤの犬尻尾の口。
それぞれバケツが下がっている。
魚獲り狙いだな。
「あっ、あ、あのねっ」
「良いよー。
行って来て良いんだよー」
「わんこー! うみー!
きゃははは!」
振り返り、フェドラに確認して。
キャッキャ言って後を追うニノン。
リリヤにも大分懐いたかな。
港町に到着。合流した子供達と浜辺へ。
レイニさん引率で農村の子供達も同行。
少ししてロジェ達、外縁チームも到着。
外縁隊にも水着姿の子が居る。
仕立て屋に寄って来ただろうか。
獲物の素材の売上金。
これを解体委託の給金に充てた。
まずまず行き渡っただろう。
服を選ぶ余裕も出た様だ。
俺は領主代行の輸送隊を連れて行く。
町の様子だとかもついでに見て来よう。
ついて来たい人はー……って、難しいか。
フェドラは町も気になる様だが。
小さい子達がフェドラママと遊びたい。
なかなか放して貰えない。
初めての知らない町だろう。
ロジェやヴラスタでもソワソワしている。
海も町も、だな。
後でみんな、町も通る様にしよう。
お買い物タイムがあっても良い。
お買い物と別に、ついて来たい人は。
レーネ、フィリッパ、マリッタと。
バート、アンゼさんも?
それ以外の子は海へ。
浜辺から食糧集め。魚介類。
水練とか、少し遊んでいても良い。
波は穏やかだが、深い所へ行かない様に。
海洋の魔王ウルリカとは休戦状態だ。
軍隊規模の魔物は、そう出ないと思うが。
水中の相手は探知距離を制限される。
探知の回数を増やしてカバーする事。
「エメちゃーん! お手本しないとー!」
「えっへへ、ごめんごめーん!」
マリナのお叱り。
向こうで手を振っているエメリナ。
新人達に説明している間だったが。
もう海に入っちゃってた?
ハーフマーメイド。
海が大好きエメリナさん。
居ても立っても居られなくなったかな。
みんなはすぐドボンしちゃダメだぞ。
準備運動してからだ。
ドボンしてお魚さんになれるエメさん。
彼女は特別です。
「なにこれ」
「おブラですにゃ?」
不意に浜辺のリリヤとジェマ。
何か拾った? 布状の?
チューブトップの、ブラというか水着の上?
通信。エメリナ。まさかお前の、
『うわ、やばっ!』
当たりかい。転移魔法で回収しなさい。
魚体化すると泳ぐのが速い。水圧が凄い。
肩に掛かる奴の方が良いんじゃなかろうか。
腕を回し易そうだった?
それも分かるけど。
そして振り返れば。男子。
ジュリオ、ティモ、ヒューゴとか。
数人倒れているのは何だ。
見に行こうとしたから?
神経魔法を食らわした?
トゥーリカ中心に容赦の無い指導。
「しびびっ、しび、しびびびび……」
「ががががガチでパラライズ……」
「へ、へへ。
俺はちょっと見えたもんね。ぐえっ!」
要らん事を言って、ヒューゴ。
カーチャに蹴られている。
この展開は読めたと思うがなあ。
怖い物知らずめ。
欲望は制御しなさい。
相手が美女でも金でも食料でも。
目先に釣られて危険を避け損うのは困る。
冒険者になったら早晩、大怪我するぞ。
エメリナが奔放がち。
これも対策しなきゃならんかな。
幸い、羞恥心はあるのだ。
言って聞かせれば良いか?
カーチャ、キックは程々に。
懲罰は労役にしときなさい。
改めて。各小隊、隊長・副長。
引率役をお願いします。
ユッタ、マリナ、ペトリナと。
フィリッパも軽く敬礼。
フェドラちゃんはそれどころじゃない?
小さい子達に手を引かれて忙しそう。
イェンナはフリーダ、ルジェナと。
3人で打ち合わせ中か。
率先して警備計画。
一見すると真面目だが。
実は半々だ。
お前ちゃん泳ぐの苦手だろう。
声を掛けると目が泳いだ。
後で見てやろう。
下手なりにでも泳げた方が良い。
さて、レーネ達と港町へ入る。
魔王ウルリカと休戦状態。
物流、海運は止まっていない。
露店には魚介類の他、交易品も並ぶ。
買い物も楽しめるだろう。
港には商船が幾つか。漁船。
あとは国軍所属だろうか。軍船。
……軍船、が、何だかボロボロだな。
何かと交戦したのだろうか。
「あら、お前」
軍船を見上げていると、ひょこり。
顔を出したのが魔人ジェニフェレーヌ。
淫虐の魔人。サディスト。
かつ、レベル1354の怪物。
手下が奴隷爆弾を使う。
生きたまま人を吊るすだとか。
警戒する要素が尽きないが。
探知情報は緑。
今、一応だが友軍だと。
見上げているとジェニフェレーヌ。
何かを投げ落として来る。
受け止める間も無く港に落ちた2つの塊。
1つは貴族か豪商か、肥えて着飾った男。
気を失っているが、まだ息があるな。
それと、小麦袋。が、麦角たっぷりで。
……軍船。から、麦角入り小麦の袋?
と、豪商らしい男が出て来て?
治癒。治癒魔法。男を治して叩き起こす。
ちょっと話をお聞かせ願いましょうか。
前へ
/黒鷲の旅団トップへ
/次へ
|