黒鷲の旅団
27日目(16)シェルカイア奪還作戦
〜タワーオフェンス〜
「効いた? 効いてるっぽい?」
「反応! スナイパーだって!」
「げー。3人居るんだ」
どうやら共有出来ているかな。
他にも居るかも知れないが。
まず3人は確実だろう。
シェルカイアの南方、ヴァドより。
部隊を再展開した俺達。
街の外壁、尖塔を狙った。
魔法付与した矢弾に電磁加速魔法。
こちらに面した塔4つに対し。
班を分けて斉射している。
そこで与ダメージログ表示。
解析魔法を掛けた結果。
職業スナイパーらしいのが3人。
この情報を通信魔法。
子供達にも共有している。
「公女殿下!
狙撃手の阻害に成功している!
大した煙だ。
あれならロクに見えんだろう」
俺達より東側。
ヴァルター隊長が通信。
リュドミラ公女に状況を説明している。
煙。魔法付与からの黒煙、砂塵魔法。
向こうも障壁魔法は使っていたが。
止まるのは矢弾だけだ。
着弾と同時に魔法が発動。
尖塔周辺の視界を濃密に覆っている。
ヤケクソの目眩撃ちは警戒するとして。
目で見て狙える状況ではあるまい。
『承知しました。シャルロッテ!』
『各隊前進! 滞りなく!』
『ユスティーナは!』
『既に動いています!』
通信魔法、示し合わせた公女達。
西のファガラシュ側。
ユスティーナ軍が東進。
南東からシャルロッテの軍が押して出る。
その当たる敵軍へ、リュドミラ達。
横腹を突く形で突撃を仕掛ける。
リュドミラ軍。
先発隊は銀狐隊の大人チーム。
加えて、こちらの骸骨騎士団。
骸骨騎士団の運用だが。
国軍のアーメット兜を借りた。
バイザーを降ろせば顔が隠れる。
中身が骨とも思わんだろう。
銀狐隊と骸骨騎士団が騎馬。
騎馬で突撃して一当て。
一当てで良い。一撃離脱。
入れ替わりに黒獅子隊が行く。
リュドミラ公女の本隊はその後から。
騎士ジャンナが歩兵中隊を率いる。
もう一手。騎士マクシーネの別動隊。
輜重隊なども連れて行く。
シャルロッテ軍の後ろへ。
これは補給と交代要員を担う。
各部隊の前進は順調。
遠目の敵軍には乱れも見える。
今の内に俺達も移動するぞ。
留まっていると反撃もあり得る。
盾役の花人隊を敵側に。
茨の盾は大盾、タワーシールド状。
クラスチェンジで腕力も増したかな。
続いて探知補助役の魔女達。魔物隊。
その守りの内側を子供達が行く。
銀狐隊の子供チーム、エリック達もこちら。
目下、移動先は東だ。
マクシーネ隊の後ろへ。
「おっちゃん、マズイかも!
もっかい!」
ティルアが振り返って言う。
尖塔の周り、煙が少し弱まって来ている。
敵側、風魔法か何かで煙を散らしている。
と、周囲に何か、ぼす、ぼす、ぼす。
地面に落ちたのは反撃の弾丸か。
放物線軌道で飛んで来る。
視界確保はまだ不十分。
よく狙えていない様子。
しかしまあ、不十分な内に、だ。
回復を待つより妨害の上乗せをしよう。
狙撃、付与魔法での妨害をもう一度。
同時、空調魔法。
阻害を留められないか試してみる。
今度は水蒸気魔法を中心に。
幻覚や遮光魔法を混ぜてみても良い。
ただ、毒は止めよう。
向こうが街だ。
外して市民に飛んで行くとヤバい。
他に思いついた物があれば。
良いデバフがあれば試しても良い。
視界の阻害に限定しない。
狙撃どころじゃなくなれば良いんだ。
各隊、副長は付与魔法を任意。
俺もついでだ。新魔法を加える。
音響、強化、爆薬、拡声、撹拌魔法から。
派生、新魔法。轟音魔法ロアー。
水蒸気、濃縮、断熱、重力、空調魔法。
濃霧魔法ミスト。
こっちは多分既出かな。
黒煙、神経、濃縮、精製魔法から。
催涙魔法ラクリメート。
再び塔の周り、視界が塞がって。
移動。移動しますよー。
速やかに位置を変えよう。
狙ってもない様な弾も飛んで来る。
当たって怪我しない様に。
知らずの被弾は無いか。
一発無効の魔法が切れてないか?
もし切れている者が居たら再点火を。
各隊、異常は無いか。
ティモとヒューゴの顔面だけか?
先の脱走者2人。
俺より先に鉄拳制裁を受けていた。
顔面に青アザ。
やったのはロジェとヴラスタ。
言葉でも手酷く怒られたらしい。
しょげている。
アメとムチ。ムチばかりでも悪い。
後で何か考えてやらないと。
まあ、先の話も生き残らせてからだ。
子供達を誘導。より安全な方へ。
敵の追撃は……おっと。
またドローンが飛んで来た。
撃ち落とす。何機あるやら。
暫くは逃げ回らないと。
探知情報。
近接、前衛側は今の所、順調か。
各拠点を落として要衝に肉薄する友軍。
塔が、狙撃手が落ちればな。
少し気が楽になるんだが。