黒鷲の旅団
27日目(17)シェルカイア奪還作戦
〜主戦場の外から〜

「ほいほーい。おっ先ぃ〜♪」

 えーと、誰だった。あの、僧兵。
 確かアリスマリスさんだったか。
 シスター服にガントレット付けた女僧兵。
 変形するメイス、フレイル使いだった。

 そのアリスさん……
 アリスさんが、ぶろろろろろ。
 バイクに乗って後方から現れた。
 手を振りながら街道を北上して行く。

 通信。通信魔法。
 向こうは持ってるかな?
 返事が来た。
 奇跡にも似た様なのがあるとか。
 使い手が少ないとも付け加えられたが。

 バイクはどうしたか。
 貰ったらしい。
 今、仕事は。
 シャルロッテ軍の助っ人か。

 シェルカイア奪還作戦は継続中。
 俺達で狙撃手の目を阻んだ。
 前衛組が前進。
 シェルカイア外壁まで。
 門前までは辿り着いた様子。
 しかし、門を守る手練れが居る。
 彼らの進行を阻んでいる。

 門を開け待ち構える重装騎士。
 分厚い魔法鎧。
 斬撃・射撃・魔法が通用しない。

 黒獅子隊も攻めあぐねた。
 打撃使いが欲しい。
 シャルロッテ軍に応援を要請。

 で、アリスさんなのか。

『おりゃあああああ!
 爆砕! 二の槌要らず!』

 通信越しでよく分からんが。
 何だ。必殺技? アリスさん。
 何か叫びながら突っ込んで行った。
 ドゴオオオオン。
 轟音と共に土煙が上がる。

 状況……分からん。
 遠見魔法でも土煙しか見えない。

 探知情報。敵の反応は健在の様相で。
 外したか倒し切れなかった?
 ただ、相手を出来ているのだろう。
 滞っていた友軍が前に進み始めている。

 攻城戦。
 門番撃破の成否は重要じゃない。
 誘導でも足止めでも門番を封殺して。
 後は敵の頭を押さえてしまえば良い。

 敵狙撃手の方は……ほぼ沈黙。

 1人は近接に切り替えた。
 塔を降りて西側。
 ユスティーナ軍と戦っている。

 2人は帰還スクロールで逃走、のログあり。
 ただ、他の街から戻って来るかも知れん。
 最早、大局に影響は無いと思うが。
 それでも、嫌がらせとか。無いとは限らん。
 こいつらは引き続き警戒が必要だろう。

 子供達は味方後方、林の陰で待機。
 方陣を組んで周辺警戒を続ける。
 取り越し苦労なら良いが、どうかな。

「んっ! 居る!」

 不意にジュス姉さんが駆け出した。

 草原で何かに躍り掛かって。
 途端、探知反応。敵反応が20余名。

 敵兵。正規部隊ではなさそう。傭兵か。
 解析情報。見た名前がある。
 仕返しに来たスナイパーとその一味だろう。

 姉さんがスナイパーを負傷・転倒させて。
 他の連中は逃げようとしている。
 阻害魔法付与。斉射。逃がすな。

 大半は一斉射で倒れた。
 逃げ散ったのを狙撃する。
 1人、2人……3人。
 動く奴が居なくなった。まず、よし。

 シャルロッテ軍に通信。
 捕縛したいので少し応援を寄越して貰う。

 ジュス姉さんは戻ってください。
 捕縛は俺が……

「あたしが行くわよ。おーい、お姉〜」
『頭に当たった奴。でしょう?』

 アンヌから口頭と念話が同時に来た。
 拳銃を振って見せながら言う。
 ああ、すまん。頼めるか。

 運悪くか、頭に当たった奴が居る。
 ゴム弾じゃなかっただろう。即死だ。
 俺が止めを刺した事にしようと思った。
 抵抗したからとでも言って死体を撃つ。

 しかし、どうやら読心魔法を受けたな。
 アンヌが代わりにやると言っている。

 気が咎める所が無いでもない。
 俺の思惑でアンヌの手を汚すのか。
 幾ら魔人だ長命種だといってもな……
 何か報いてやれると良いんだが。

 ジュス姉さんも。
 よく接近に気付いてくれた。

 そうだ。隠密対策が不十分だったかな。
 スキルポイントを50振る。
 看破魔法のレベルを上げてやり直す。
 探知、空間……から、看破魔法。
 もう1人のスナイパーはどこ行った。

 ……うっ!?

「やば!」

 林の中に人影。急に人影が現れた。
 透明魔法。看破魔法で効果が解けたのか。
 俺が反射的に銃を向けると逃げて行く。

 探知反応は緑。友好的。

 隠れて居た。
 やましい所もありそうだが。
 それでも探知魔法は友好的だという。
 ただの見物人だったのだろうか。

 一応、子供達にも確認。
 あれが敵に見えた者は居ないな?
 誰に敵対的でもない。
 なら、放置で良いだろう。
 撃ってまで止めて対立する事も無い。

 あと1人。
 逃げてるスナイパーの行方が気になるが。
 シェルカイアはもう奪還出来そうかな。
 警戒を続けつつ、戦況を見守ろう。



前へ黒鷲の旅団トップへ次へ