黒鷲の旅団
28日目(2)賑やかに穏やかに

「大変大変! パパさんがー! あっ!?」

 んん? カリマ? ぐぇっ!

 走って来て急停止するカリマ。
 俺の上に飛び乗って来た。
 急にビョンするのヤメテ。

 俺はエントランスのソファに座っていて。
 座ったまま……寝てた、かな。
 何でこんな所に。ああ、そうか。
 昨夜ジュス姉さんを探していた途中。
 一休みと座って、寝てしまったか。

「えへへー。パパさん居たのです」

 カリマは驚いたのだろう。
 起こしに来て、俺が居ない。
 ここ最近、よく起こしに来てくれていた。

「パパさん居たー?」
「あっ、パパさんだ!」
「ぱぱー」

 集まって来るフェドラ、リリヤ、ニノン。
 どふっ。ぐふぉ。
 リリヤとニノンも跳んで来る。
 待て。ちょっと待て。潰れる潰れる。

 3人を呼んだのはカリマだろう。
 手分けして俺を探そうとした?
 仲が良い子に声を掛けたかな。

 カリマが一番懐いているのがフェドラ。
 プラスでリリヤとニノン。
 同じくフェドラに懐いている2人。
 この4人でフェドラ・ファミリーの様相。

「パパさん居たー」
「居たねー。ふふー」

 フェドラ、ニコニコ。
 カリマをハグ。頬擦り。
 ホントに大好き仲良しで微笑ましいが。
 ついでにあと2人も下ろしてクダサイ。

「おー、居たじゃん」
「カリマはお騒がせだねー」
「まあ、居たんだから良いじゃないか」

 後からカリマと同郷のマルカとティルア。
 マルカと仲良くなって来たマリッタ。
 マリッタについて回るアルメルと。
 仲良しの輪は多方向に繋がっている様だ。

 続々と集まって来る子供達。
 カリマは相当、通信をバラ撒いたな。
 大丈夫。居なくなったりしないから。
 真面目なレーネやテルーザに安堵の表情。
 そう心配されると居心地が悪い。

「今日こそはモフモフの刑だよっ!」
「ユッタ、そっち回り込め!」

「にゃはは! 止めるにゃあ!
 くすぐったいの止めるにゃあ〜!」

 外で駆け回っているユッタ達はどうした。
 サンドラちゃんが説明をくれた。
 最初、ユッタとイェンナが何か言い合って?
 痴話ゲンカだとジェマが茶化したのか。

 そうだ、ユッタ。
 特訓のメニューを考えなきゃ。

 指南書の類を探しに行きたい。
 飛び道具の、銃士や弓兵のギルドがある。
 剣士のギルドに類する物もあるだろう。

 となると、今日は買い物中心にしようか。
 装備も万全にしておきたいし。
 公主は新女王と会見。魔王軍も他方面行き。
 戦況が大きく動く事は無いだろう。

 ああ、でも、新人は。
 また支援を求めて誰か来ていないか。
 身請けが必要な戦争捕虜は。
 城、酒場の前も気になる。
 魔女協会にも顔を出さないと。
 ハミルトン爺さんの店にも寄って……

「ゴハンできたよー」
「ごっはん、ごはんー」
「もふぁふー、もふぁふー」

 マリナにアイリス、ツェンタ。
 ツェンタは何か口に入れているな?
 唐揚げ? いや、見せなくて良いから。

 よし、じゃあ、まずはゴハンにしよう。
 ユッタ達も行くよー?
 はーいと返事が飛んで来る。2つ。
 ジェマはまだ笑い転げている。
 まあ、楽しそうで良いんだけどな。

 探知、外に居るのは。通信魔法で呼ぶ。
 鶏舎の方から掛けて来るのはラケル。
 リータとシュトルメータも一緒。
 泥んこだ。手と顔を洗っておいで。

 外部はどうしただろう。通信。

 トゥルチャはレイニ隊。
 それとケンタウロス少年チーム。
 コドレア駐屯地はロジェやヴラスタ達。
 メシの支度は。大丈夫そうかな。
 返答。今すぐ食費が必要な子は居ない様子。

 しかし農村側、よく食う客が来ているとか。
 誰だろう。ハンナちゃんとか?

 城、登城の受け入れ。
 これは公主も朝食が済んでから。
 こちらは急いで出向く必要は無さそう。

 魔女はフレス派、シャンタルたん。
 既に酒場の前を見てくれていた。
 やはり孤児が居ると。
 立て替えるので食事の手配をお願いします。

 何人ぐらい? 11人か。結構な引率。
 シャンタルたんにも手間賃を払います。
 お小遣いゲットだぜと喜ばれた。

「おっはよーう♪」
「はよはよーう♪」

 トゥーリカを伴ってアンヌ。
 アンヌちゃんは今日も元気だね。

「うう……眠れなかったよう……」

 ジュス姉さんは元気無いね……
 まあ、自業自得だろうけど。
 今日はゆっくりだ。後でまた寝なさい。

 さ、まずは朝食。ごはん、ごはん。
 今日も一日頑張りましょう。

 歩み出しは穏やかに。
 一日、こう穏やかだと良いんだか。



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