黒鷲の旅団
29日目(5)救援再び

「ヤベェ!」「いっぱい居る!」
「オーガにトロール!」
「行かないと!?」

 焦るな。まずはここから撃つ。
 俺が言うなり、ずどどん。
 ユッタとルーシャが撃った。

 プロイエシュティ近くの開拓村。
 前に立ち寄った所だ。
 またも魔物に襲われていた。

 武装したゴブリンにトロール。
 剣を持ったオーガ。
 闇の気配による強化で、野良でこれか?
 あるいは元魔王軍の末端だろうか。
 統制から外れて野生化したかな。

 包囲しに掛かりたい。
 が、村の外部にもモンスターがチラホラ。
 下手に包囲陣を展開すると外から挟まれる。
 そのまま街道沿いに布陣する。

 銃士隊はそのまま。攻撃続行。
 花人隊は下馬。茨の防壁で陣地構築。
 弩兵隊・弓兵隊は魔法付与して待て。

 サンドラちゃん、人形兵……
 は、もう出してるか。

 人形兵。見た目は人形素体の様相。
 大きさは術者と同じぐらい。
 武器は盾とパイク。防壁の隙間を埋める。

 銃声に、魔物がこちらに集まり始める。
 弓弩隊、斉射よっ……斉射! 順次撃て!

 敵の動きが速い。士気が高い。
 すぐに距離を詰めて来た。

 数も多い。集まって来て分かった。
 密集していて探知情報が重なっていた。
 トロールばかり100弱だと。

「ちょっと暴れて来る!」

 アンヌがフリスティナに手渡し。
 愛銃バレットM98Bを渡した。

 すまん。アンヌは右翼から頼む。
 第1銃士隊で援護。アンヌに当てるなよ?

 俺はブローニングM2を取り出す。
 掃射。1時から9時半方向に薙ぎ払う。
 アンヌは2時半の方向から跳び込んで行く。

 新人達は撃てているのか。
 緊張した面持ちのイゾルダ、ロザーリエ。
 フリスティナは意気揚々か?
 この際、多少なりとも当てていれば良い。

 敵、第2波。盾持ちトロールの戦列。
 飛び道具に対して地味に学習してやがる。
 魔法付与の矢弾に無傷でも済むまいが。
 あれらを壁にオーガも動いている。
 距離を詰められたくない。

「足止めを!
 水魔法付与! 感電狙え!」

 レーネの号令。一手だが、どうか。
 トロールは鈍そうで皮も厚い。
 しかし、水を撒くのはアリだ。

 俺は突撃銃。シグSG550。
 付与は地裂魔法。

 水魔法が落ちた泥濘の底を更に崩す。
 足を取られてトロールの進軍が止まる。

 狙い撃て……撃ってるのは良いが。
 誰かが撃ってトロールの首が跳んだ。
 切断? 何の付与魔法なんだかな。
 脳内ログも情報が交錯している。

「ひだりー!」「ああーう!」

 花人、左翼は第2隊、ベゴニエッタ達。
 左から迫っているのはゴブリン騎兵隊。
 トロール勢とは別の集団だろう。
 大した数じゃない。任せられるか。

 再び意識は正面へ。
 突っ込んで来ようとしているオーガを射殺。
 デカい剣を持った奴が怖い。優先して撃破。
 再度探知。大物は大体沈んだか。
 深みで溺れているトロールは。
 なかなか死なない? 付与を回そう。

『終わりよ! ボスを捕虜に取ったわ!』

 アンヌから通信が来て。捕虜?
 一段落だろうが気を抜くな。
 降伏を知らずに前衛が突っ込んで来てる。

 神経、精神、束縛魔法付与。
 可能な範囲で生け捕りにする。
 フリスティナ、一旦ストップだ。
 淡々とヘッドショットしなくて良い。

「でも、殺さないと?」

 こいつらが凶悪なのは分かるとして。
 効率よく退けなければならん。
 得られる情報は得ておきたい。

 公主様直下の開拓村だろう。
 魔物除けの措置が無いなんて事があるか?
 野良の魔物程度が近付けるとは思えん。
 にも拘らず、こいつらの襲撃だ。

 魔物除けに不備があるのか。
 こいつらは何か強化された個体か。
 闇の気配やらが濃過ぎるとでも?
 この村はどういった窮地に立たされている。
 とにかく、少し調査が必要だ。

 探知再び。周辺の敵性反応は収まったか?
 警戒の黄色表示、捕虜トロールだけだ。

 こちらに負傷者は居ないな?
 捕虜は村の外に集めよう。
 花人隊と骸骨騎士団で見張りを。

 子供達は村に入って情報収集。
 あと、怪我人が居たら助けに掛かろう。



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