黒鷲の旅団
30日目(2)反骨と弔意

「俺、貴族とか、その……ごめん」

 表情を曇らせるグレアム。
 いや、良いんだ。拘ってない。
 案の1つに過ぎないんだ。
 別の作戦を考えれば済む話だから。

 夜が明けて、早朝。教会の講堂へ。
 グレアム少年と面談した。

 まずは養子の件を提案する。
 有力貴族と縁組して弟の仇討ちを有効化。
 これに彼は乗り気でない。
 なるほど弟を殺したのも貴族だ。
 仲間になりたくないのも分かる。

 まずは当事者の心情を優先しよう。
 別のアプローチを考える。
 必ず仇は討つから。

「違うんだ。そうじゃなくて、もっと。
 ちゃんと悲しむとかって」

 仕返しより何より弔いか。
 グレアム、粗暴な印象もあったのだが。
 それ以上に弟思いな少年だった様だ。

 うん、まあ、そうだな……
 まずはサミュエルをキチンと弔おう。

 と、話していて。
 教会の奥からアルディス大司教。

「お待たせしております。
 何分、異例の事ですので」

 相談に乗って貰ったのは葬儀の件。
 サミュエルの葬儀を大袈裟に行う。
 被害者が唯の浮浪児でないとの印象操作。
 ダニエル側にプレッシャーを掛ける。

 ここに異例と。反対意見がある?
 やはり異端審問官殿か。

「いえ、ベルトラムはむしろ賛同的で。
 むしろ貴族寄りの派閥が揺れています」

 審問官の爺さんの賛同って何だ。
 たまには礼拝ぐらい来いって事かな。
 基本こっちが不信心なモンだから。

 他方、貴族寄り。権威主義。
 単に好き嫌いもあるのだろう、が……
 あるいは大ガーランドと繋がりが?
 反対者の名簿なんぞも見てみたい所だが。

 こちらも貴族から圧力を掛けて貰う。
 公主とかバルビエ伯爵夫人とか。
 孤児院増設賛同者の協力を募る。
 規模を抑えても葬儀自体は行いたい。

 大司教は頷いて、昼までには支度と。
 では、昼過ぎにまた。

 あと、グレアムに話の続きだが。
 今後はどうするか。

 冒険者、は、あまりお勧めしないが。
 教会の庇護を求めるか。
 農村の仕事を手伝ってくれても良い。
 まあ、すぐには決められないかな。

 グレアムを連れて東区の酒場へ。
 食欲が無いというが、何か食べなさい。
 代金は俺が支払っておく。

 俺はそのまま酒場を出て。
 次は魔女協会だが、途中で子供達に通信。

 朝食はもう済ませたかな。
 今から呼ぶ者は順に仕立て屋へ。
 採寸して貰ってください。

 第2弩兵隊はフリーダ達6人。
 第2弓兵隊はルジェナ達6人。
 第3花人隊のガーベルヒルト達6人。

 外縁チーム、ロジェ、バート、ヴラスタ。
 キース、ジュリオ、ルパート。
 グンター、リュシアン、メリカ。

 あと、ジョゼフィン、テッド。
 フレデリック、マトゥーシュ。
 フランカ、イヴォナ。6人

『採寸?』『え、服なら』
『あ、ああー……!』

 バートとか勘の良い子は気付いた様子。
 主にレベル上位者から選抜した。
 正従者隊の衣装を手配する。

 子供達は後で叙勲します。騎士爵位。
 花人の叙勲はまだ許可が下りんけど。
 引き続き進言してみる。
 正規部隊として今後もお願いします。

 あと……カトレアーニャとアーネ。
 株分け前に衣装作ったから半分こしてた。
 これを機に不足分を手配してしまおう。

 採寸、一度に押し掛けてはお邪魔になる。
 小隊1つずつ移動、戻ったら交代して。
 第1弓弩隊とジュスは移動ルート警護。
 第1第2銃士隊はアンヌと索敵。
 不審者を近寄らせない様に。
 他の者は残って畑、収穫の補助かな。

 その間に俺は魔女協会と王城に顔を出す。
 捕虜の引き取りと葬儀の相談だ。

 昼過ぎからはサミュエルの葬儀。
 参列してくれる子は居るかな?
 教会苦手なら自由時間でも良いけど。

『サミュエルって?』
『知らない』
『俺知ってる』
『じゃあ行かないと』
『あーじゃあ、あたしも』

 ロジェが知っててユッタ即決。
 そこからぞろぞろ行く気配。
 友達の友達は友達か。
 まあ、うん、賑やかな方が良い。

 さて、行って来ようという所。
 トゥリンから通信。ゴハン?
 ああ、俺の朝食がまだだった。

 転移魔法でパンだけ貰……
 ん? 今日はパンが無い?



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