黒鷲の旅団
30日目(4)愛情と葛藤と?
「あ! 仲間だ!」
こちらに気付いて駆けて来るリリヤ。
「あ、あっ! 仲間!」
駆けて行くのは新人ニア。
自宅に戻って新人と子供達で合流して。
リリヤとニアは出会うなり意気投合した。
抱き合う。転げ回る。けらけら笑う。
リリヤの腰には長いシルエットが2本。
ハーフスキュラの尻尾は犬頭。
ニアの頭にも細いシルエットが3本。
こちらはハーフゴルゴーンらしい。
頭に3本だけヘビが生えている。
見るからに魔物の血を引く少女達。
語るまでも無く苦労が分かる。
異種族で親しくなるのも尊い事として。
同類に出会えるのもまた嬉しい。
ニアの境遇も相当酷かったらしく。
ヘビは元々8本生えていた。
切られたり、むしられたりで残り3本。
失ったヘビの根元が壊死しかかっていた。
切除と縫合で処置済み。
あと、左目が潰されていて。
左手の指が3本、右手の指も2本無い。
この有様でよく生きていてくれた物だ。
古い傷で形成外科魔法が効かない。
目の方は義眼を魔女協会で購入。
これは元々の売り物ではない。
大魔女フリアさんの私物、研究資料だ。
金貨20枚。これでも負けてくれた感。
魔導義眼。魔法仕掛け。視力がある。
元と色が違うのでオッドアイになった。
義肢、義指の手配はウェルベックから。
出来合いで合う物があって良かった。
少し慣らせば物も握れる様になるだろう。
この子は何とか生きて行ける。
本当に、やっと、何とかだが。
これまでの分、幸せになって欲しい。
「ヘビだ」「かっけー」
「可愛いんだよう」
ティルア、カーチャ、マリナ。
ニアの頭のヘビに興味津々の様子。
打ち解けるのは大丈夫そうかな。
……でもない。
フリスティナが複雑そうな顔。
半魔は怖い? ではなく、ヘビか。
元々ヘビが苦手らしい。
第3銃士隊に組み込むのは難しい?
聞いていて、今度はニアが不安げ。
大丈夫だから。追い出したりしない。
しかし、落し処を探さないと。
第3弓弩隊の編成も考えるべきだろうか。
「ご、ごめんなさい……」
「ぶ、ぶたなきゃ、平気だよ?」
謝るフリスティナに、ニア。
フリスティナは涙が出てしまう。
見るからに可哀想なニア。
ぶつなんて考えもしなかった様だ。
受け入れられない自分が悔しい。
落ち着いて。苦手は誰にでもある。
「あ、あのー……」
もう一人の新人ヴィルヴァ。
こちらは竜人族。
雪竜、スノードラゴンの血統らしい。
印象は、おっとり儚げな美少女。
全体的に白っぽく。色素薄い感じ。
しかし貴族らの庇護は強く拒否。
自己主張しないでもない、のか?
「ホワイトドラゴンさん?」
「雪だってよ。スノードラゴン」
「ほおおー」「雪の竜さんー」
関心顔で見上げるニノンとカリマ。
ヴィルヴァは少し困った様に微笑んで。
しかし、口数が少ないタイプか。
もう少し理解しておきたい。
読心魔法。少し表層心理をチラ見する。
『わああ可愛い。何この可愛いの。
ハグしたいぎゅーってしたい。
ちょっとだけあああダメよダメダメ。
壊れちゃったらどうしましょう。
見てるだけええ見てるだけなの。
ずっと見てられるわウフフウフフ』
……色素は薄いが中身は濃いな?
えー、もう少し増員するとして。
臨時のトゥーリカ小隊を作る。
新人をマイナさん、トゥーリカで補佐。
新人2人の武器は弓かクロスボウ。
合いそうなのを選んで貰う。
「待っ、わ、私の所! 受け入れたい!」
フリスティナ、挙手だが。
うん、まあ、段々に慣らそう。
フリスティナもまだ達人ではない。
苦手を抱えたまま戦場に出すまい。
不意に触れてのパニックも怖い物だ。
不安要素は少ない方が良い。
別動隊でも友達にはなれるから。
まずはそこから始めてみて。
「あの……私、剣の方が?」
「あー、分かる」
「最初は弓からやるんだ」
ヴィルヴァにマルカとマリッタ。
儚げヴィルヴァも腕自慢だった?
まずレベル上げてね。飛び道具。
鍛冶屋で武器を選んで貰う。
が、その前に叙勲と昼食か。
騎士叙勲を行います。
該当する子は並んでください。
それ以外、終わった子は昼食準備へ。
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