黒鷲の旅団
30日目(10)憂さ晴らバラバラ

「「ツイン・サーモバリック!」」

 フェドラとレーネ、燃料気化爆発魔法。
 2人が並列発動して4発飛んだ。
 ゴブリン達がバラバラになって宙を舞う。
 吹き荒れる熱波、暴風。
 防いで散らすのは花人達の障壁魔法。

 先刻、勇者に絡まれたカーチャとノイエ。
 守り切るもボロクソに言われた俺。
 この話を共有した子供達は散々に憤慨した。
 怒りの矛先が周囲の魔物に向けられている。

 熟練者から選抜して先行。突貫気味。
 女王達の隊列を引き離していく。
 前へ前へ。射撃と魔法の雨を降らせる。
 並み居る魔物が死体となって後方へ転がる。

「ハイドロスライサー!」
「エリアルディバイド!」

 テルーザの水魔法とティルアの風魔法。
 キマイラが生きたまま賽の目切りに。
 お前ちゃんらも魔法を伸ばしてるな。
 フェドラとレーネは一時後退。
 魔力薬を飲んで再チャージ。

「丸焼きだぜ!」
「援護するよっ!」

 マリナが燃料魔法クリエイトフュエル。
 マルカが火炎ブレスで着火。

「お次はソルベに!」
「なら水からだっ!」

 マリッタが水蒸気魔法スチームブラスト。
 ヴィルヴァが氷結ブレスでトドメ。
 凍った所を残りの弓弩隊が粉砕して行く。

 ヴィルヴァもなかなか頼りになる。
 第2小隊精鋭に肩を並べている感。

 同じ新人。ニアとベルタは。
 イゾルダ、ロザーリエ、大丈夫か。
 フリスティナも表情は硬いまま。
 射撃より騎馬が不慣れ。早駆けは大変。
 しかし頑張ってついて来ている。
 脱落しない様に俺やサンドラで見守る。

「斉射、いや、速度落とせ! 隊列!」
「集合集合! フェドラちゃん戻ってー!」

 レーネとペトリナで合わせてくれた。
 突出しがちな弓弩隊エースを戻す。
 銃士隊は。とっくに戻ってるか。
 新人も鍛えたい。斉射用意。
 目標は。前方にゴーレム。

 ……ゴーレム? 岩と鉄のが計16体。

 ロックはともかくアイアンゴーレム。
 総鋼鉄製で野良モンスターでは無いだろう。
 探知情報は敵対の赤。誰の仕込みだ。
 やはり女王襲撃を企てる奴が居るのか?

 隊列を魚鱗陣に。魔法付与用意。
 付与属性は子供達の発想に任せる。
 俺は強化バフを担当する。
 新人達から先に撃たせたい。
 与ダメージ率で経験値を配分される。

「何つける?」「ゴーレムだもん。爆薬?」
「雷はー?」「それより分解とか」

 自由に意見を交わしている。
 相殺しない様に頼むよ?

 大人しい子でも奮起する中。
 対照的に動きが控えめなのは魔人さん達。
 配置は輜重隊の馬車の中。

 アンヌが探知・解析魔法を複数並列展開。
 しつこく勇者達を分析している。
 どうやら対勇者態勢らしい。

 ジュス姉さんは単にビビってる感。
 それはそれで心配だが。
 クリムさんが息巻いてる。護衛は任せる。

 さて準備よし。
 子供達、息を合わせて斉射。
 ロックないしアイアンゴーレムが崩落。
 新人達のレベルは上がったかな?

 ブラショヴまで数kmに迫る。
 そろそろ離脱しよう。
 残る女王との相談事は通信で安全圏から。
 下品な勇者達と晩餐を共にする気は無い。

 残敵は。ゴーレムが崩れ落ちた先。
 まだゴブリン戦士の伏兵が居る。
 あれの掃除はお任せ出来ますか。

「応! 総員、進めーっ!」
「活躍、ご覧に入れましょう!」
「続けぇい!」「やー! やーやー!」

 騎馬突撃で武装ゴブリンの排除。
 担当は黒獅子隊。銀狐隊大人チーム。
 うちから骸骨騎士団と花人隊。
 隊列左翼から右前へと薙ぎ払いに掛かる。
 意気揚々だな。ケガするなよー?

 うちと銀狐隊の子供チームは離脱。
 サナトスとお嬢様方もこちらに続く。
 西方向、コドレアに寄せて合流しよう。
 サナトス、イェルマインとは相談もある。

 相談……勇者達も気になるが。
 国内、大ガーランド派も叩きたい。
 誰か使えるネタとか持ってないかな。

「おじさま!」
「集合したよ!」

 レーネとユッタ。
 不調者は居ないな? 居るか。
 新人達に鎮静・活力魔法を掛ける。
 負傷していないのは何より。

 まず女王達を見送りたい。
 各隊、整列。

 炎、爆薬、閃光、錬成……で良いか。
 派生。花火魔法ファイアワークス。
 魔法付与で祝砲だ。
 各自、上に向かって撃て。



前へ黒鷲の旅団トップへ次へ