黒鷲の旅団
30日目(11)遺恨同盟
「は〜ん、ここで繋がって来るってか」
「そいつは一泡吹かせてやりたいですな」
どうやら、それぞれ遺恨があったかね。
一旦、公主達と別れ、草原へ。
コドレア南東に集合した。
まずサナトス、イェルマインらに相談。
大ガーランド派の貴族を弱らせたい。
これについて使えそうな情報を得る。
まずはサナトスから。
チーム名って何だっけ。翼蛇団?
メンバー、没落貴族のアクアさん。
実家の没落に大ガーランド関与の疑い。
父が以前、大ガーランドに頭を下げていた。
何か不興を買ったのかも知れないという。
手下に囲まれ委縮していたとか。
その後日、急に借金の話が浮上して?
何か不当な措置なら糾弾する甲斐がある。
加えて、脱走花嫁ステラさん。
嫌な婚約相手が大ガーランド派……多分。
多分て。まあ、覚えておくけれども。
それと、イェルマインから。銀狐隊。
領主を手伝う中で得た有力情報だ。
トゥルチャの南、コンスタンツァ。
摘発候補になっている貴族が複数。
容疑は汚染小麦流入と奴隷売買への関与。
証拠を固める途中で捜査を止められた。
大ガーランド派からの圧力だという。
貴族側の立場で調査を継続出来ない。
代官少女キュリアが悔しがっている。
キャスティーナの娘さん。
イェルマインは力になってやりたい。
……というか、テオ坊?
テオドール君がキュリア嬢に懸想してる?
「実は、そうなんでさ。なー、坊?」
「ち、ちがっ……わ、ないけど」
認めた。強いなー。
銀狐隊は同僚少年らがひゅーひゅー言う。
あんまり茶化さんでやりなさい。
まあ、とにかくだ。
大ガーランド派に嫌がらせしたい。
この辺は俺達3チーム共通の目標となる。
コンスタンツァの悪徳貴族。
こいつは貴族以外から調査を進める。
盗賊ギルドに協力を仰ぎたい。
「取引相手が盗賊ギルドって場合は。
口を割りやすかね?」
イェルマインの懸念。
そこら辺は報酬次第じゃないか?
何も客を直接売れってんじゃない。
取引の日時と場所を聞く。駆けつける。
来ると分かれば逃げ道も用意出来る。
俺達は逃げる備えが無い相手貴族を確保。
一緒に捕まる間抜けも居れば捕まえるが。
盗賊ギルドもバカではあるまい。
切り捨てて良い末端を使って来るかもな。
仮に犯罪組織を壊滅させたとして。
需要があるなら同じ事をやる奴が出る。
奴隷制忌避の動きも既に無くは無いが。
浸透するまで現場はモグラ叩きだ。
初手で根絶などと欲は掻くまい。
大ガーランド派から逮捕者を出す。
法的な範囲で追い詰める。
これを表の作業とする。
裏の作業、裏工作。諜報。潜入調査。
襲撃……は、現実的でないか。
ネックとなるのは追跡魔法の存在だ。
武器や魔法、薬の使用を検知される。
検知された所に解析魔法を掛けられる。
魔法なら使用者が割れる。即バレ。
道具も作り手が割れ、誰に売ったなどと。
結果、誰にも知られずとは難しい。
それでも刃物なら。
あるいは銃、矢弾なら。
解析でも知れるのは作り手まで。
量産品を買って来て使えば良い。
ただし使える距離に行くまでが問題。
隠密、透明、消音魔法も、魔法だ。
これが追跡魔法を食らうから使えない。
同じ道具でも毒なんかは論外だな。
自分で作れば一気に知れるし。
依頼しても誰に売ったか調査が入る。
爆薬、火炎瓶……量産されてるかなあ。
作り手が少ないと販売記録から辿られ易い。
やるなら刃物か銃で。リアルステルス。
これ、探知魔法も行き交う中を行くのか。
本当に必要ならやるが、やりたくは無い。
せめてサイレンサーが欲しい。
光学迷彩とまで言わないから。
「サイレンサーなら銃士協会で見たぜ。
ああ、買いに行くと買ったって知れるか。
俺が錬成で作っちまおうか?」
「誰か使いで行きゃあどうすかね」
サナトスにイェルマイン。
何でやる方向で話進めてんの。
「んー、でも、今じゃね?
イーディスが首都を離れてる」
「今ならアラームが行かないんすよ。
やるなら今じゃないですかね」
えっ……あっ!?
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