黒鷲の旅団
30日目(13)手を出したのが運の尽きだ未遂

「ちょ、ちょちょちょ、待っ、待てよ!
 俺まだ何もしてねーだろうがよ!」

 ようやく少し焦り出したな。

 付き纏い勇者を捕獲した後。
 俺達はコドレアの集落へ。
 コイツをどうしてやろうかという所だ。
 椅子に座らせ縛り付け、相対している。

 捕縛した勇者。
 名前はジェイ……ジェー、か。

 アルファベットでない1文字。
 何の文字か分かってて付けたかも怪しい。
 それぐらい学が無さそうな顔をしている。
 所作を見るにも学生だろうかなあ。
 この手のゲーム、未成年は禁止だと思うが。
 偽れば幾らも偽れるものではある。

 何もしてないなどと宣うが。
 付き纏っていただろう。
 ストーキング。子供達を脅かした。
 まだ軽犯罪相当でも危害は危害。
 俺達はお前に生活を侵害されている。

 こちらも平和主義者ではない。
 逆恨みを嫌って交戦を避けているだけ。
 黙ってても手を出して来るなら話は別だ。
 叱って帰しても反省するまい。
 心を折っておくのも吝かではない。

 で、まず、去勢します。
 そう伝えたらこの慌て様だ。

 部位欠損については知っている様子。
 欠損のまま放置して時間が経つ。
 すると回復や死亡復活で再生しなくなる。

 どこでも切り落として長時間放置する。
 神人でも継続的に部位欠損させられる。

 村へ使いに出した子供達が戻って来る。
 マルカが斧、ヘルヴィがハサミを持参。
 あと、ツェンタの手にノコギリ。

 ユッタのそれは何だっけ。
 熱した金属を挟む奴。ヤットコとかいう。
 切るんじゃなくてそっち潰す気なのね。
 マリナのは金ヤスリ。何でまた。
 切ったりは可哀想だと思った?
 これで削り切るのも相当残酷な様な。

 ジェーに1つ慈悲だ。選ばせてやろう。
 選んだ得物で処理してやる。
 俺はノコギリとか面白いと思うけどなあ。
 選ばないなら俺が選んじゃうよー。
 クリムさん足を固定してやって

「うわあああヤメロヤメロやだやだやだ!」
「暴れんなってー。ちゃんと痛くすっから」

 ジェーは段々パニクって来た。
 クリムさんは段々楽しくなって来たかね。
 慌てなくても『まず』去勢だ。
 それで終わりだなんて言っていない。

 顔は皮を剥いで二目と見れなくして。
 手足も2〜3本は頂きたい所だ。

 子供達に手を出そうとした。
 一生消えない傷を負わせようとしたんだ。
 それも1人2人じゃないだろう。
 お前にも一生消えない傷を残してやる。
 1つ2つじゃ足りないだろう?

 心身薄弱になって来たジェーに追撃。
 昏倒、精神、幻覚、恐慌、夢操……
 ん、何か派生した。悪夢魔法。
 気を失わせて悪夢を見せる。

 まあ……ひとまずこんな所か。

 一応は未遂だからな。
 クリムさんは残念がるけれども。
 こちらも未遂で終わらせておこう。
 女王側から迎えを寄越して貰う。
 引き渡して、注意喚起して。

 目覚めた時の為に一筆添えとくか。
 二度と俺達に関わるな、とか。
 次来たらホントにやるからな、かな。

 安全の為、装備は剥がしておきたい。
 急に自害して復活、戻って来ても怖いし。
 装備を剥がして、女王の所に送って。
 最低限、お叱り無しで回収出来なくする。

 どう剥がそう。見えるのはそのまま取るが。
 ストレージの中をどうしようか。

 防御・防盾を反転して、転移・減退。
 派生、武装解除魔法ディスアーマメント。
 強制的に装備を剥がす魔法が出来た。
 試す。ストレージ内にも効く。
 ランダムかつ1個ずつだけだが。

 スキルポイントを振ってレベル上げてみる。
 部位を指定可能になった。
 相変わらず1個ずつだけれども。

 ジェーの装備を剥がしパンイチにして。
 浮遊魔法で村の中央に移動、安置する。
 首から看板を下げておく。
『こいつは女子供を狙う変態です』
 あとは女王側に通信を入れて……

 急がなくて良いか。
 村に兵士や冒険者、行商が来ている様だ。
 村の復興支援に来たかな。
 もう少し晒して連中にも見せよう。
 当面この地域に来たくなくしておく。

 それより、うちのメンバーのケアだ。
 子供達は割とケラケラ笑っているが。
 不安を言えていない子は居ないか。
 アンヌの疲労も色濃いし。
 ジュス姉さんも心配。馬車に籠り切り。

 一旦休憩。駐屯地へ。
 おやつタイムにしよう。



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