黒鷲の旅団
30日目(16)パパ代理と転機の子供達

「失敗を知ってる。負けた事がある。
 これが強みになるから。
 ああ、親父さん」

 変身魔法で俺に化けたロジェ。
 話し相手はヴィダルとテレンシオ。

 コドレアで子供達と合流。
 ロジェの影武者役の任を解く。
 変わりは無いか。
 何の話をしていたかな。

 ロジェは俺の代わりを買ってくれて。
 そこへヴィダル達が質問を持って来た。
 理由を知りたい。
 ジュリオ達が先に騎士になった理由。
 自分達だって力は負けてない、か。

 ロジェなりの答え。
 ジュリオ達は失敗を経験しているから。

 そうだな。大事な事だ。
 失敗した事が無いと、いざという時に脆い。

「でも、失敗なんて前からやってたし。
 今は武器も貰ったんだ。
 前よりもっと出来るって」

「それだよ。出来る事が増えた。
 何でも出来る気になっただろ?
 そうじゃない、って実感する。
 何が出来て何が出来ないのか。
 俺もそうだよ。調子乗っててさ。
 もっと用心すりゃ良かったって」

 テレンシオの反論を躱すロジェ。
 俺の代役としてはまずまずかな。

「腕前はお兄さんのが上だよ」

 ユッタ評。射撃を見ていた。
 街道の掃除もしてくれていたか。
 腕前はまあ、今後の課題。

「お御ケツに違和感がゲフンゴフン」

 レーネ評。オミケツって何!?
 ケツ。尻。体型が微妙に違うと。
 どこ見てんだはともかくとして。
 変身魔法の再現度が不完全?
 俺の熟練度の問題かもしれない。

 真似事っても限界はある。
 影武者作戦を多用はするまい。

「あ、おっちゃんだ」
「パパだ!」「おかえりー」

 他の子達も集まって来て。
 一旦、状況を確認しよう。

「えっとね、レベル?」
「勇者!」「村のやつ」
「じ、ジンジ?」「なー?」

 子供達も言いたい事が諸々ある様だが。
 ジンジ……ん? 人事だって?

 聞けば入団希望者が複数。
 移籍希望者が数名。
 スカウトが2件。スカウト?
 更に脱退希望者も複数居るという。

 増えるのも気になるが、脱退。
 ヴィダル達……ではなく?
 ティモ、ヒューゴ、ヨティス。
 俺1人では勇者を撃退できなかった。
 頼りないとか思われてしまったかな。

「ち、違うよ」
「それもあるけど」
「あ、おい!」

 ヒューゴを小突くティモ。
 良いんだ。事実だから。
 それ『も』というのは、他に。

 冒険者への道を諦めてない。
 冒険者として経験を積みたい、か。
 俺はダンジョン対応を教えてないが。
 ガイゼル達が面倒を見てくれるという。
 もう話は付けてあったのか。

 あと、置いて行かれた感?
 仲良し4人組でジュリオだけ騎士に。
 抜擢は単にレベル伸びてたからだが。
 負けてる、自分も何かしなきゃ。
 そんな風に思った部分もある様だ。

 しかし、冒険者なあ……

 ティモ達も同じ失敗経験者だ。
 引き際は分かっているな?
 無理しないなら無理に引き止めない。
 困ったら頼って来て良いからな。

 他には、バート隊のチビッ子達。
 ブラムとジョスランは街で働きたい。
 エスターは魔女協会に入りたい様子。

 急な独り立ち。思う所があったか。
 バートの負担を心配した?
 怖いと思ったのもあるだろうか。
 気を遣う良い子達。
 詳しい所は明言してくれない。

 ただ、エスター。
 本気で魔女になりたい様で。
 目標がシャンタルたん?
 良いのか。まあ、良いけど。

 スカウトはバート隊後衛、銃士シプラ。
 トゥルチャのチームから誘われてる。
 ジルケの姉アウドラの銃士隊。
 先越されたぁーとはフリスティナ。
 そっちはそっちで増員するから。

 それと中層階級出身のキース。
 黒獅子隊からスカウトが来た。
 経理担当のアドニスから。
 読み書きが出来るのが決め手に。
 キース自身もやってみたいと。

 騎士爵。ああ、返さなくて良い。
 出向という形で話してみる。

 それぞれ、気を付けてな。
 困ったらいつでも通信を下さい。
 何か助言とか出来るかも知れない。
 合わなきゃ戻って来ても良い。

 と、気が早いか。ブラム達、不安な顔。
 すぐ出てけとかじゃないから。
 寝泊りも引き続き駐屯地を使って良い。
 職場には明日また送って行こう。



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