黒鷲の旅団
30日目(24)クライム勇者の終末
『これからガキ共アレしちゃってぇ。
昼間のおっさん泣かせたいと思いまーす』
『ぎゃははは!』
『ひでー』『ウケる―』
これは……アレだな。
ジェーと仲間達の記録か。
現実サイド。企業間抗争の世界だが。
予定されていた作戦が停滞中。
時間を待つ間、俺は動画を見ていた。
動画。視覚情報の録画データ。
撮りながら流したリアルタイム配信。
放送終了した物を追っかけで見ている。
配信者名は……デッドM。
多分ジェーやディガー達の一員。
誰かがデッドMだったかな。
タイトルはNPCハントが何とか。
コドレアの駐屯地を襲った件。
もっとも、タイトル通りとは行かん。
子供達は避難させた後だった。
しかし連中、普段からこうなのか?
視聴と並行して検索する。
デッドM。犯罪系ゲームプレイヤー。
残酷な動画で視聴数を稼いでいるとか。
評判はまあ、悪い。
やがて誰も出て来ないだ何だと騒ぐ。
本格的に建物を破壊し始めて。
『馬が来んぞ』『軍隊だ』
『は? 返り討ちに』
『マズいぞ、首吊りが来てる!』
『やばい、狩られる!』
『逃げろ! 逃げろ逃げろ逃げろ!』
首吊り。誰の事だ。
逃げ惑うジェー達。
配信者の背後で悲鳴。
振り返る目は誰かの腕を見た。
斬られ宙を舞う腕、次いで頭。
飛んで来たのはゾーンの生首。
生首を顔面に投げつけられ。
怯んだ配信者は地に押さえつけられる。
『よぉーい、あんたがカメラ君?』
女の声。顔は見えんが。
この声はイーディスか。
『あ、あっ、ひいいいい!』
『聞・い・て・ん・だ・ろっ♪』
『おぶっぐぶっんぶ!』
頭を掴まれて地面に連打。
配信者の視界が涙で濁る。
『げほっ……くそ、くそっ!』
早回しで視界にウインドウ表示。
早くて読めない。スロー再生。
緊急離脱が何とかと読めた。
警告文。所持品の一部をドロップ云々。
読み飛ばし同然に連打。選択。
途端に視界が別の場所に転移して。
……どこに移った。山の中か。
見回して、深紅の鎧が視界に入る。
アシュリィ。両手剣使いの傭兵。
剣の柄で殴り、配信者の意識を奪う。
暗転……のまま、数分か?
俺は手っ取り早く早送りした。
次に意識が戻ったのは捕縛後。
地に伏せさせられてイーディスの前。
『ん、起きた? 残念でした。
放棄離脱の有効範囲は1km。
戦場の1km外で網張ってんの。
統治勢の間じゃ常識よ』
言いながら、あれはジェーだな。
ぐるぐる巻きの男を蹴るイーディス。
足元には他に2人。配信者を入れて4人か。
残り2人は追跡中だろうか。
『んで、やっぱりあんたがカメラ君ね?
はあい、残酷動画愛好の皆さぁん。
こいつら後で処刑してやるわー。
処刑方法はリク受け付けるから。
ぶっ飛んだ処刑方法よっろしくぅ』
『ま、待て! 女王ぐぶっ!』
『カメラが喋るなー?
女王ちゃんには許可貰ったわよ。
アシュりん、あとお願いね』
『殺さず逃がさず』
アシュリィの返事。
イーディスはウインクで肯定。
先に引き上げる様子。
残ったアシュリィは……暴行か。
配信者を転がして蹴りを入れた。
『殺さんよ。殺さんが。
お前、なんとかMだな?
うちの少年兵を2人殺した。
殺さんよ。殺さんとも。
たっぷり礼をしてやらねば』
配信者を引き摺るアシュリィ。
不意に視界が暗転して。
ああ、頭でも打ったのかな。
そのまま配信は終了している。
まあ……状況について同情しないが。
捕まってない2人が気になる。
逆恨みを受けねば良いが。
俺にせよイーディスにせよ。
と、作戦開始の合図が来た。
意識を本業に戻そう。
本業。先日捕まえた悪魔召喚男。
こいつの通信履歴を収集した。
通信先の座標を探って回る。
今度は何か収穫があれば良いが。
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